ウェルシュ・タペストリーの故郷を訪ねて|Wales Now Vol.36

発行日:2018. 3. 5

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“ウェールズ人はタペストリーをベッドや壁にかけて、家を快適にして暮らしてきました”


Trefriw(トレヴリュウ) Woollen Mills 4代目ディレクター、モーガン・ウィリアムズ(Morgan Williams)さん。写真は日本への家族旅行にて。

美しきスノードニア国立公園の裾野のコンウィ・バリーで、ウェールズ伝統のウール製品を編む「Trefriw(トレヴリュウ) Woollen Mills」。4代目ディレクターのモーガン・ウィリアムズ(Morgan Williams)さんに、工房150年の歴史や工房見学の見どころを伺います。

ー 自己紹介をお願いします。
私は1947年、ここ北ウェールズのコンウィ・バリーで生まれました。父がウェールズ人、母がイングランド人です。妹と一緒に、この「Trefriw(トレヴリュウ) Woollen Mills」を経営しています。結婚しておりまして、大学生の娘がおります。

私の趣味は北ウェールズの美しいカントリーサイドを散歩することです。コンウィは山、川、湖、滝があり、散歩を楽しむのにもってこいの地域です。海外旅行も趣味で、時間を見つけては世界の様々なところへ行きます。

ー「Trefriw(トレヴリュウ) Woollen Mills」について教えてください。
ウェールズ伝統のウール製品を生産する「Trefriw(トレヴリュウ) Woollen Mills」は、私の曾祖父が1859年に始めました。私は4代目で、このファミリー・ビジネスを継続していることを誇りに思っています。

私たちの工房は、Trefriw(トレヴリュウ)村の中心部にあります。工房には古いウォーター・ライトが設置されており、近辺の川から流れ落ちる滝から水力を得ています。その滝の一つは「フェアリー・フォール(妖精の滝)」と呼ばれています。なぜそう呼ばれてきたのかはわからず、私の家族と知人はまだそこで妖精を見たことはありません、まだね(笑)。

1700年代までは水力のみで動いていましたが、1947年にハイドロ・エレクトリック・タービンに交換されました。今でも、工房の全ての電力をタービンからまかなっており、機織り機、工房の電気、ショップやカフェの暖房の全てに供給されています。

ー 「Trefriw(トレヴリュウ) Woollen Mills」の製品について教えてください。
我々は伝統的なウェルシュ・ウールのタペストリーの生産者です。それは残念なことに、現在では珍しい存在となりました。ウェールズには工房があまり多く残っていないのです。

そのため私たちは、ウェールズの伝統的な機織り機を見ていただけるように、工房にセルフ・ツアー式のミュジーアムを併設しています。ハイドロ・エレクトリック・タービンの電力で動く機織り機を、実際に見ていただけます。

ミュージアムにはショップも併設しており、私たちのファブリックで作られたベッド掛け、クッションカバー、ラグ、バッグなどが購入できます。ローカルビジネスであることを大切にしているので、私たちの製品は私たちのショップかオンラインでしか販売しておりません。

ショップの隣には、ティールームもご用意しています。小さな場所ですが、ウェルシュ・ケーキやバラブリスのようなウェールズの美味しいお菓子を提供しています。

ー 日本では英国製の織物というとタータン・チェックのイメージが強いように思います。
タータン・チェックは主にスコットランドの文化ですね。ウェールズは別の文化を持っておりまして、タペストリーをベッドや壁にかけて、家を暖かく快適にして暮らしてきました。旅の移動中に暖房がなかった頃には、ラグに包まって寒さをしのいできました。もっとも、現代では暖めるだけでなく、部屋のインテリアとして、あらゆる用途に使われます。伝統の品なので、ウエディングの引き出物としても大変人気です。

なお、私は若いときにスコットランドのカレッジに2年間通い、テキスタイル・テクノロジーを専攻して、工房をより効率的に運営する方法を学びました。スコットランドの最新技術は、大変役に立ちました。

ー 海外旅行がお好きとのことですが、日本にいらしたことはありますか。
ええ、実は日本は大好きで、5回も行ったことがあるんですよ。日本中を鉄道でくまなく旅行できる「ジャパン・レール・パス」を使って、家族と一緒にそこらじゅうに行きました。最初の来日は1982年で、最近では2015年にも再訪しました。本当に美しい国ですよね。妻は、特に熊本が気に入ったようです。娘は「イチバン(壱番屋)」というカレー屋さんが気に入ったそうで、あちこちで食べました(笑)。

ー 日本の読者にメッセージをお願いします。
妻が調べた日本語でお伝えしたいと思います。ウェールズは「スバラシイ」! ぜひ遊びにいらしてください。

Trefriw(トレヴリュウ) Woollen Mills: https://www.t-w-m.co.uk (英語)


“イギリス人の学生ですら「カルチャーショック」を受けるようです。
だって大学の学生寮から、羊が見えるのですから(笑)”


Aberystwyth大学インターナショナル・イングリッシュ・センター ディレクター、レイチェル・デイビー(Rachael Davey)さん

ウェールズで初めて創立された大学である、Aberystwyth大学。この歴史ある大学の英語教育を統括する、レイチェル・デイビーさんが来日。日本で英語教師の経験もあるという親日家のレイチェルさんに、歴史あるキャンパスタウンAberystwythの魅力について伺いました

ー 初めに自己紹介をお願いします。
中部ウェールズに位置するAberystwyth大学で、インターナショナル・イングリッシュ・センターのディレクターを務めています。当大学の英語コース全ての責任を担っています。

母は南ウェールズ、父は南イングランド出身です。母は子どもの頃にウェールズを離れたそうですが、私の家庭にはいつもウェールズ人のアイデンティティが息づいていました。そして私自身も2000年に中部ウェールズに移住をして、この地に惚れ込むこととなったのです。

ー 英語教育には、いつから携わっていらっしゃるのですか。
1993年からです。実は、初めての英語教師の経験を得た地は、日本でした。埼玉県に住んで、英語を教えたのが始まりでした。帰国後も20年ほど、イギリスの大学で主に留学生向けのアカデミック・コースの英語教育に携わりました。旅が大好きなので、インドやブータンでも英語を教えたんですよ。

ー 世界各国で教えられた後、なぜ現在はウェールズに?
仕事と旅行で世界中に行きましたが、ここAberystwythに来たとき、「さあ、旅をやめましょう」と思いました。小さくも美しくて、多様な文化が息づくこの土地を、大変気に入りました。海岸線があり、山々があり、英国で最も美しい地域の一つだと思います。Aberystwythに来てから、ウェールズを離れてることはありませんでした。これからも、二度と離れることはないと思います。

Old College seen from Penglais Campus - Aberystwyth University ©keith morris

ー 素敵な土地なのですね。Aberystwythの街について教えてください。
Aberystwythはどの英国の大都市からも少し距離があります。街自体の人口は20,000人程度で、この小さな規模が魅力です。誰もがフレンドリーで、お互いのことを知っています。大学の学生たちがよく言葉にする第一印象は、「まるで家族の一員になったよう」です。初めて会う人でも声を掛け合う、そんなあたたかくて親しみある街の雰囲気に、皆が驚きます。

ー Aberystwyth大学は、どんなところですか。
Aberystwyth大学が創立されたのは1872年で、ウェールズで最初に作られた歴史ある大学です。総学生数は9,000人程度で、大部分はイギリス人ですが、国際色も豊かでこれまでに120カ国からの留学生が学んでいます。このウェールズの田舎で、これほどの多文化が保たれていることは、驚くべきことでしょう。

ー Aberystwyth大学は、どんな点でユニークですか?

Aberystwyth University Old College & science students

まず、多くの学生は都会からやってくるので、イギリス人の学生ですら「カルチャーショック」を受けるようです。だって大学の学生寮から羊が見えるのですから(笑)。イルカが見える部屋もありますよ。なぜなら、海に囲まれた地なので、キャンパスはビーチまで徒歩15分なのです。学生は海水浴を楽しみ、手漕ぎボートのレースが盛んです。大学にはウェールズ最大級のアートセンターもあります。Aberystwyth大学なら、学生たちは豊かな自然と教育機会の双方を享受できるのです。

ー Aberystwyth大学は、教育の質の高さで有名ですよね。
ええ。2018年のTIMEとSUNDAY TIMESによる高等教育調査「GOOD UNIVERSITY GUIDE 2018」において、「教育の質」部門で英国トップクラスの一つに選ばれました。毎年、「英国で最も安全な大学」にも選ばれています。この点は、治安の良い日本からいらっしゃる皆さんにとっても、大変重要でしょう。

英語教育ということで申しますと、大学で提供される全英語コースが、英国の公的教育機関ブリティッシュ・カウンシル認定です。2017年にはブリティッシュカウンシルが認可した全国の英語コースのなかで、英国トップ3の大学の英語教育機関に選ばれました。また、学生の満足度についても、国の調査で2018年は英国トップ5にランクインした実績があります。

ー 人気の学科や最新のニュースを教えてください。
様々な学科に定評がありますが、中でも国際政治学で大変有名です。なぜなら、国際政治学という学問が世界で初めて生まれた大学だからです。最近では、新設された映像・テレビ学科のコースが話題で、映像制作の大変実践的な学位が取得できます。「ハリー・ポッター」や「ジェームズ・ボンド」のシリーズなどを手がけた、20年以上に及び映像分野で世界をリードしてきた講師陣が教えます。キャンパスのなかにBBCスタジオも併設しています。このウェールズの小さな街に、世界に影響を与える学問が集結しているのですから、本当に驚くべきことです。

Undergraduate students on campus

ー Aberystwyth大学で英語を学ぶメリットとは?
英国トップ3の英語教育施設で学びながら、さらに街中でイギリス人と話す機会が多くあることです。Aberystwythには、大都市では失われつつある伝統的なイギリスの文化が残っており、安全でフレンドリーさがあります。生活費の安さも魅力です。街の人たちは留学生が大好きです。

それから、Aberystwythはバイリンガルな街です。街の誰もが英語を話しますが、同時にウェールズ語も話すのです。大学では全学生向けのウェールズ語の無料レッスンも開催しているので、ウェールズの文化に興味がある方は大歓迎です。

ー 読者にメッセージをお願いします。
自国を出て英語を学ぶことは勇気のいることですが、Aberystwythなら世界は思った以上に優しい場所なんだって思えるはずです。素晴らしい教育と学習環境が待っています。スポーツセンターなどの様々な施設や、大学の隣にあるウェールズ国立図書館は、ショートコースの方でもお使いいただけます。この美しい街なら、夏の2週間から2年間まで、きっと充実した時間が過ごせますよ。

Aberystwyth大学: https://www.aber.ac.uk/(英語)

スペインの大手鉄道車両メーカーCAFが、ニューポートに新工場建設を発表

スペインの大手鉄道車両メーカー「Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles (CAF)」が、南ウェールズ・ニューポートに位置するケルティック・ビジネス・パークに、新工場建設を発表しました。建設地は英国全土100を超える候補地から選ばれ、その投資額は3,000万ポンドに及びます。新工場は床面積15,000平方メートルもの大きさで、技術者やエンジニアなど多数の専門職の雇用が予定されています。

編集後記

ウェールズ人の冒険心と行動力には、目を見張るものがあります。本号には、世界を旅した親日家のウェールズ人お二人が登場。それでも最後に戻りたい場所は、やっぱりウェールズなのだそう。

次号は3月26日に発行予定です。お楽しみに!

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