ウェールズの研究機関と日本企業のパートナーシップを探して|Wales Now Vol.30

発行日:2017. 11. 06

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


カーディフ・メトロポリタン大学日本担当マーケティングマネージャー、デイヴィッド・エヴァンス(David Evans)さん


“念願のカレーパンは、
感動的に美味しかったです。”


ウェールズの首都カーディフには、質の高い教育機関が揃っています。先月、カーディフ・メトロポリタン大学(Cardiff Metropolitan University)で日本担当マーケティングマネージャーを務める、デイヴィッド・エヴァンス(David Evans)さんが来日。日本語が驚くほど堪能なデイヴィッドさんに、お話を伺いました。


ー 自己紹介をお願いします。
カーディフ市内に親友と住んでいます。趣味は、歌、ギター、スカッシュやクリケット、ジムでのエクササイズ、旅行や外国語の習得、それに料理ですね。日本料理をよく作り、友人にふるまったりもするんですよ。

故郷は西ウェールズのペンブロークシャーです。週末は家族に会いに帰ります。ペンブロークシャーの海岸線は、美しい自然と美しい景観に恵まれているエリアで、家の近くには、世界で最も美しい海岸として何度も賞を受賞している絶景スポットがあり、子どもの頃からよく走りまわって遊んでました。

ー いつ頃からからカーディフ・メトロポリタン大学に勤務されているのですか。
2015年1月からです。初めは中東地域のみ担当していました。その地域の学生たちは、奨学金などを利用して、ヘルス・サイエンスや経営学を勉強することが多かったですね。現在は担当エリアが広がり、日本、韓国、中東、北・東アフリカとトルコをカバーしています。

ー 今回は初めての来日ですか。
いいえ、実は日本との関係はかなり長く、2002年にJETプログラムを通して大分県豊後高田市の英語教師として来日しました。その後2年間、大分県の小学校でも英語を教え、さらにその後立命館アジア太平洋大学に職員として5年間勤務、海外の学生のリクルート業務などを行ったので、トータルで約11年間日本に滞在したことになります。日本語に関しては、夜間学校で1年間勉強しましたが、日常生活の中で自然に身に付きました。

ー 日本に興味を持たれたきっかけは何だったのですか。
2002年のサッカーのW杯のとき、大好きだった選手がテレビ放映で日本の「カレーパン」を頬張っていたのを観たのです。もっとも、英国では「カレー・ドーナツ」と紹介されていたのですが。それがあまりに衝撃的な映像で、「カレー・ドーナツっていったい何だ?」というショックと憧れが湧き上がり、「日本に行って食べてみたい!」と思ったことがきっかけでした。
 
ー カレーパンがきっかけ……? 食べ物の力ってすごいですね。
念願のカレー・ドーナッツ、改めカレーパンは感動的に美味しかったです。さらに、そこからが楽しい思い出です。日本で、セミプロレベルのミュージシャンになったんです。大分県には音楽スタジオがたくさんあり、バンドのメンバーとして10年近く活動しました。当時、島村楽器主催の音楽祭があって、約5,000組のバンドがエントリーしたのですが、僕たちは九州地方のソングライター部門で優勝したんですよ。バンド名は「Nanbanjin(南蛮人)」です (笑) 。(Nanbanjin: https://nanbanjin.bandcamp.com/)。 

デイヴィッドさんが大分県で所属していたバンド、Nanbanjin。

ー 多才でいらっしゃるのですね。今回の日本への出張の目的は?
第一は、食品開発や企業誘致など、企業とのビジネスパートナーシップ活動のサポートです。これまでに、日本企業のカルビー社と食品安全性・法的・ロジスティクスなど総合的システムの構築を、カーディフ・メトロポリタン大学で構築した成功例があります。

さらに、留学生のリクルートと学術機関とのパートナーシップの構築など、大学の広報活動です。今回の滞在で最大のイベントは、ウェールズ政府日本代表事務所主催で駐日英国大使館で開催された「ウェールズ・エデュケーションセミナー」での講演でした。日本の主要教育エージェントや留学支援関連の方々に、大学の紹介ができる良い機会でした。

ー 今のお仕事の中で一番好きなところはどんなところですか。
世界中からやってくる才能ある学生たちと話せることですね。カーディフのキャンパスで、私達と一緒にキャンパスライフを送る中でともに成長し、そして卒業していきますが、社会に出て彼らが活躍するという過程を見守ることができることは、仕事として最高だと思っています。

ー カーディフ市内のおすすめスポットを教えていただけますか。
自分の一番のお気に入りは、地ビールのエールビールのかたっぱしから試しながら、最高の音楽を楽しめるスポットを徘徊することかな。ウェールズは19世紀からずっと「歌の国」として知られてきたから、ここはファンタスティックな音楽の宝庫なんですよ。

特に、最高の地ビールとパブ風料理を提供する「チャプター・アート・センター(Chapter Arts Centre)」なら、映画鑑賞やアート・ギャラリーも楽しめるし、コメディのショーまで楽しむことができますよ(チャプター・アート・センター: https://www.chapter.org)

ー 日本の読者にメッセージをお願いします。 
もしウェールズに住むという選択肢がなければ、絶対に日本に住みたいほど日本が好きです。その日本とウェールズの絆を100%強化していきたいです。ぜひウェールズへいらしてください。美しい景観と不思議と面白いサプライズに溢れた国ですからね。

カーディフ・メトロポリタン大学: http://www.cardiffmet.ac.uk/international/


United Welsh(ユナイテッド・ウェルシュ社)グループ・ディレクター、リチャード・マン(Richard Mann)さん


“日本の皆さんの環境問題に真摯に取り組む姿勢に感銘を受けました”


英国の住宅危機に立ち向かうソーシャルハウス・プロバイダーをご紹介します。前回に続き、今回は先日初来日したばかりである、ウェールズのUnited Welsh(ユナイテッド・ウェルシュ社)社でグループ・ディレクターを務める、リチャード・マン(Richard Mann)さんにお話を伺います。


ー まずは、自己紹介をお願いします。
私は息子2人と娘1人の父親で、趣味はサイクリングです。がん患者のためのチャリティーレースで、数千ポンドの募金を集めたことがあります。北ウェールズから南ウェールズまでを縦断する長距離コースでしたが、何とか完走しました。日本に来るのは、今回が初めてです。日本で目にするすべてが綺麗で整然としているところに驚きました。

ー United Welsh社についてご紹介ください。
United Welsh社は、もともとUnited Kingdom Housing Trust (英国住宅信託機関) が行っていたソーシャルハウス運営業務を引き続ぐ形で、1989年にスタートしました。主に南ウェールズで、ソーシャルハウスやケアホームの建設・所有・運営を行っています。現在6,500戸のソーシャルハウスを所有・運営、年間平均300戸の住宅を建築しており、現在200戸が建築中で、さらに拡大をしています。

前回のインタビューで同業のPOBL社のエルベッドさんから英国の深刻な住宅問題についてお話を伺いました。具体的には、どのような課題があるのでしょうか。
英国中央政府は2021年までに新築住戸を100万戸建築する目標を掲げていますが、現在のペースではその半分も満たすことができないと予想されています。ウェールズ政府は2021年までに2万戸の新規住宅の建設を目標と掲げています。  

最大の問題は、英国の住宅建築関係サプライチェーンです。とても効率が悪いのです。英国では建築現場の作業環境が悪くて天候に影響がされやすく、日照時間も短いこともあり、家を建てるのに1年から1年半を要する場合があります。にもかかわらず、この状況は25年間変わっていません。日本で進んでいる、モジュラー工法の建築を早く取り入れ、英国の建築業界の技術スタンダードを底上げする必要があります。

また、2019年に予定されている英国のEU離脱は住宅建築業界にとても大きな影響を及ぼします。なぜなら、現場作業員の多くは現在、東欧からの移住者が多いため、EU離脱後には職人不足に陥ると予想されるからです。昔ながらの、レンガやモルタルでの工法技術が伝承されないという懸念もあります。

ー 今回のご来日の目的は?
ズバリ、パートナー探しです。我々が住宅を供給している相手先は若年層や高齢の方々で、質の良い安心安全な住居を供給するのが大前提です。さらに、供給量だけの問題ではなく、やはり質も重要であると私は考えました。断熱効率が悪い住宅では光熱費がかさみ、毎月の家賃が払えなくなってしまうと、本末転倒だからです。これらの理由から、日本企業とのパートナーシップが必要だと考えました。

ー 日本滞在のご感想を教えてください。
来日中、日系ハウスメーカーの方などとの面談をすることができ、大変有意義な訪問となりました。特に、日本の皆さんが、環境問題に真摯に取り組む姿勢に感銘を受けました。これからも日本の建築技術を学び、英国で住宅を建築してもらえるパートナー企業を探していきたいです。

United Welsh社: http://www.unitedwelsh.com/

編集後記

海外の大学というと留学のイメージが強いと思いますが、企業とのパートナーシップも盛んです。オープン・イノベーションも国際化する時代の学びの秋、ウェールズの大学に益々注目です。

次号は11月27日に発行予定です。お楽しみに!

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