英国の住宅危機に立ち向かうウェールズと日本|Wales Now Vol.29

発行日:2017. 10. 23

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


POBL(ポブル)社開発部長、エルベッド・ロバーツ(Elfed Roberts)さん

POBL(ポブル)社開発部長、
エルベッド・ロバーツ(Elfed Roberts)さん


“英国民を住宅危機から救うには、
日本の技術力が必要です”


英国では、住宅の価格が高騰して社会問題になっています。2回にわたって、この住宅危機に取り組む英国のソーシャルハウス・プロバイダー2社の方をご紹介します。今回は、この度初来日した、ウェールズ最大のソーシャルハウス・プロバイダーのPOBL社、開発部長のエルベッド・ロバーツ(Elfed Roberts)さんにお話を伺います。


ー 自己紹介をお願いします。
北ウェールズのアングレシ―島出身です。ウェールズ語を母国語としてますが、もちろん英語も話しますよ。16歳と17歳の息子がいます。趣味はラグビー観戦、オペラ、そして映画鑑賞です。特に黒澤明監督や北野武監督の作品が大好きです。日本に来ることは私の長年の夢でしたので、初来日が叶い大変嬉しく思っています。

ー 初来日とのことですが、日本の印象はいかがですか。
日本を見て最初に思ったことは、大都市と野山の素晴らしいコントラストですね。POBL社へ入社する前は建築家として、イングランドとウェールズにおける地方自治体の地域再生プロジェクトに参加していたので、日本の地方再生プロジェクトにはとても興味があります。他に印象的だったのは、日本人の礼儀正しさですね。そして日本食も大好きです。

ー POBL社について教えてください。
「POBL(ポブル)」とはウェールズ語で「People (人)」という意味です。南ウェールズのスワンジーとニューポート地域で、低所得者向け住宅いわゆるソーシャルハウス及びケアホームの建設・所有・運営を、ウェールズ政府からの委託業務として行っています。現在16,500戸のソーシャルハウスを所有・運営、2,500名を雇用しています。社名のPOBLは、常に人々とのつながりを持ちたいとの気持ちを込め社名としたと聞いています。

ー ソーシャルハウスという言葉は日本では聞きなれないのですが、どのようなものなのでしょうか?
そうですね、ソーシャルハウスはもともと、地方自治体が整備し、所得の低い層の方々に対して提供していた住宅を指しますが、現在では民間の企業が地方自治体に代わりその役割を果たしています。ウェールズにはおおよそ90ほどのソーシャルハウス提供業者があります。

というのも、現在、英国は未曽有の住宅危機に直面しているのです。最も深刻な問題は、平均住宅取得価格が若年層の平均年収の8倍程に膨れ上がり、十分な住宅が提供できていないことです。我々POBL社では、「Affordable Housing」をコンセプトに、安価で住みやすい賃貸住宅の安定提供を行っています。

我々の提供する住宅は、エネルギー効率・断熱効率が高いものを使い、月々の光熱費を低減することで、テナントが家賃を支払いやすい状況にすることに力を注いでいます。英国の住宅は断熱効率が低く、暖を取る為に月収の半分以上を光熱費に費やしてしまう「Fuel Poverty (燃料の貧困)」が社会問題となっています。

ー 今回のご来日の目的は?
私はウェールズで多くの新規ソーシャルホームプロジェクトに携わっていますが、英国で今、最も注目されているプロジェクトは、南ウェールズのニース地区で予定されている「Active Home Project」です。これは来年2月から着工、16戸で構成される英国初となるエコ・ソーシャルハウスプロジェクトで、各住戸にはガス供給は無く、BIPV(建物一体型の)太陽光発電システム、蓄電池、壁材に組み込まれた太陽熱吸収・貯蔵装置により、系統との連携は図りつつ、系統からの電力供給量よりも多い電力を売電することを可能としています。我々はこのプロジェクトをスワンジー大学のSPECIFIC研究グループと共同で行っています。(SPECIFICグループ来日時のインタビューはこちらをご覧ください: https://www.wales-japan.com/wales/wales_now/vol20/#interview)

このプロジェクトを介し、今後ウェールズから同様の開発が英国全体に広がり、英国における住宅の在り方が変わってゆくことを切望しています。英国中央政府は2021年までに100万戸の新規住宅着工を目標としていますが、現在のペースではその実現は難しいでしょう。今後、日本の住宅メーカーの工法を早く取り入れ、工期を短縮、住宅建設の現場に新たなイノベーションを起したいです。

POBL Group社: https://www.poblgroup.co.uk/

次回はUnited Wales社に、英国での住宅開発を通じた日本とウェールズの関係についてお話を伺います。


日本ウェールズ協会(St. David's Society Japan)会長、アースラ・バートレット今出川(Ursula Bartlett-Imadegawa)さん


“私が日本に恋をしたように、
日本にはウェールズに恋をした方たちがいます。”


日本とウェールズの架け橋となる人々をご紹介します。今回は、日本におけるウェールズゆかりの人々の友好団である「日本ウェールズ協会(St. David's Society Japan)」の会長を務める、アースラ・バートレット今出川(Ursula Bartlett-Imadegawa)さんです。前編に続き、日本ウェールズ協会の立ち上げの経緯と、そのご活動について伺います。


イギリスの地図を持ち歩いて、ウェールズを紹介
 日本でできた友人にも、タクシーの運転手さんにも、ウェールズのことを知らないと言われました。アメリカ人だと思われたので「Welsh(ウェールズ人)です」と答えると、決まって沈黙が流れました。そこで、「British です」と答えれば、「ああ、English ね」と言われてしまうのです。私はこの問題をどうにかしようと、イギリスの地図を持ち歩いて、ウェールズを紹介するようになりました。

仲間とともに、日本ウェールズ協会を創立

 次第に、日本に住むウェールズ人と知り合うようになり、私たちは1981年に日本ウェールズ協会(St. David's Society Japan)を立ち上げました。夫も10年間、財務担当として活動を支えてくれました。日本ウェールズ協会は英国大使館に認定・登録されていますが、そうした法務の知識を教えてくれたのも夫でした。

 これまで私たちは両国の友好のためのチャリティコンサートや、会員のための日帰り旅行、ディナー会などを企画・実施をしてきました。また、日本でのウェールズのプレゼンスを高めるために、在日英国大使館に対して、ウェールズ国旗も飾るよう提案などもしました(今では、そうしてくださっています)。テレビやラジオに出演して、ウェールズの紹介をしたこともあります。

日本ウェールズ協会のウェルシュ・フード&ドリンクイベントにて。

来たる2019年は、ウェールズと日本のビッグイヤー
 私はウェールズ人であり、それが私のアイデンティティです。わたしの愛するウェールズのことを、同じく愛している日本に伝えることは、私の使命です。

 私の夢は、ウェールズの存在を、イングランドやスコットランドと並んで、日本の皆さんに知っていただくことです。ラグビーはウェールズの国技ですから、2019年に日本で開催されるラグビーW杯は、そのための大きなチャンスだと思っています。

 私が日本に恋をしたように、既にウェールズに恋をした方たちが日本にもいらっしゃいます。日本ウェールズ協会のメンバーの皆さんです。メンバーの皆さんのウェールズへの心からの理解、活動への熱意と貢献度は素晴らしいものです。

 ウェールズと日本は、メンタリティーが似ているのだと思います。チームワークを大切にする心を持ち、自然を愛し、歌って飲むことを楽しみます。そして、より価値あることのために、共に協力する術を知っています。ウェールズのビジネスチャンス、大自然、食やライフスタイル、観光、そしてスポーツの魅力を、ご自身でも体験してみてください。

日本ウェールズ協会: https://cdsjapan.jimdo.com


\世界最高峰のエベレストはウェールズ人の名前?/

世界最高峰のエベレスト山は、インド測量局で活躍したウェールズ生まれの探険家、地理学者である、サー・ジョージ・エベレスト(Sir George Everest)にちなんで名付けられました。

編集後記

ウェールズと日本はメンタリティーが似ているというお話が出てきましたが、都市が抱える諸問題にも多くの共通点があります。英国の住宅危機の解決は日本の将来にもつながるという気持ちで、協力しあっていきたいですね。

次号は11月6日に発行予定です。お楽しみに!

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