日系企業とウェールズが紡いだ友好の歴史|Wales Now Vol.23

発行日:2017. 07. 15

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。

今年5月30日に放送(6月27日再放送)されたNHK BSプレミアム「一本の道 “英国の中の異国”を歩く~イギリス・ウェールズ北部~」取材班の皆さん


パナソニック マニュファクチャリング イギリス社(Panasonic Manufacturing U.K. Ltd.)社長、井上 豊(Yutaka Inoue)さん


“ウェールズ日本人会は、南ウェールズに進出した日系企業12社と、協賛企業2社で構成される団体です”


日本とウェールズの架け橋となる人々をご紹介します。ウェールズと言えば英国でも屈指の日系製造業の集積地として有名ですが、1974年にウェールズへ進出したパナソニック マニュファクチャリング イギリス社(Panasonic Manufacturing U.K. Ltd.)の現社長である、井上さんにお話を伺います。この地で40年以上に渡り操業してきた同社は、ウェールズと強い絆があります。


ー まずは、パナソニック マニュファクチャリング イギリス社のご紹介をお願いします。
1974年の進出から数えて、今年で進出44年目になります。南ウェールズのPentwyn(ペントウィン)に工場があり、現在では500名程の従業員がいます。進出当初はTVの製造からスタートをしましたが、現在は電子レンジの開発製造とビジネス向けのPC事業、サービス・ソリューション事業などを行っています。

ー 井上さんとウェールズとの関係は?
2014年1月末に、ウェールズへ赴任をしました。実は、出向が決まるまで英国=イングランドというイメージで、そこにはウェールズがあり、さらにカーディフがその首都であるという予備知識も皆無でした。そういう意味で“ウェールズ“については知識ゼロからのスタートでした。

ウェールズに位置するパナソニック マニュファクチャリング イギリス社のオフィス(Photo from https://www.pmuk.co.uk/ )

ー ウェールズへは、ご家族と一緒に赴任されたのですか。
はい、家族と一緒にカーディフで暮らしています。カーディフはコンパクトながら大きな公園もあり、とても住みやすい街です。

赴任したとき、一人息子は5歳で、カーディフの現地校の小学校に、1年生(Year 1)から入学しました。彼は最初の一年間、泣きながら学校に通っていました。突然、言葉のわからない世界に放り出されるのですから、子どもなりに苦労しただろうと思います。

月日が経つにつれ、学校生活にも慣れてきたようで、今ではたくさんの友達がいるようです。こちらでは土曜日に日本人補習校にも通っているのですが、俳句の宿題で“にほんのなつ ぜったいだめだ あついから”と詠んだそうです(笑)。ウェールズの夏は暑すぎず過ごしやすいので、すでに身体が慣れたようです。私も、すでに日本の夏は身体に堪えます。

ー 井上さんにとって、ウェールズとはどんなところですか。
海外駐在はウェールズが初めてですが、人や土地、また歴史も非常に魅力にあふれた国です。私は日本からの来客があるときは、必ず事業状況報告の前に、ウェールズの良さの説明から入ります(笑)。

特に、ウェールズの方はとても素直で、人の言うことを最後まで聞いてくれると感じています。画一的な価値観や期待値を基に人と接することが少なく、個々の違いを尊重しあう姿が印象的です。もちろん、価値観の違いはあるにしても、それを一方的に相手に押し付けることはせず、まずは受け止めるのです。

この経験は、今までの自分の仕事の仕方を見直し、反省する良い機会となりました。日本では、母語で話しますし職務経験値もあるので、話を伝えるのは一見して容易です。ただし、振り返ってみると、思いつくままを言っていた“だけ”ではないか、言いたいことだけを言っていた“だけ“ではないかと考えるようになりました。ウェールズに来てからは、今まで以上に相手の話をよく聞くようになりました。

ー 「ウェールズ日本人会」の運営委員長も務めていらっしゃるそうですね。

ウェールズの日本人補習校、創立当時(1981年)の記録写真

はい、「ウェールズ日本人会(英語ではWales Japan Club)」は、南ウェールズに進出した日系企業12社と、協賛企業2社で構成される団体です。設立は1981年で、当初は日本人補習校の設立を目的として設立されました。当時は、日系製造業のウェールズ進出が特に盛んで、日本人駐在員の子弟も増え、子どもたちに対する算数・国語教育の必要性があったからです。

1999年のピーク時には、131名の生徒が在籍していました。現在は、62名の生徒が在籍しています。今では出向者の子弟が約3割、国際結婚夫婦の子弟が7割と、補習校を構成する生徒も変わってきています。なお、現在、英国全体で9校の日本人補修校があります。

ー 今後の夢や目標を教えてください。
弊社はウェールズで事業をしていますが、日本、欧州を含めパナソニックのグループとして、欧州また英語圏のお客様への接点として、提供できる価値がまだまだあると思います。 例えば、弊社内の事業でビルトイン電子レンジの開発製造を行っていますが、”食”は家族のつながりを演出する側面も、先進国では今後ますます強調されていく分野の一つだと思っています。その魅力ある事業分野に関われることに、非常にワクワクします。弊社のポテンシャルを最大限生かせるよう改善を進め、私自身も気を引き締めて経営にあたりたいと思っています。

「ウェールズ日本人会」の運営委員長としては、設立当時からお父さん、お母さんの仕事の都合で、やむを得なく海外へ移住することとなった子どもたちのためにと、諸先輩の方々が考え、ご尽力の末に設立した補習校ですから、その想いと取り組みを今後も存続させていきたいと思います。また補習校や日本人コミュニティがあることで、会社側も安心して出向者を送り出せるでしょう。同じ時期にウェールズで生活をする機会を得て、ある意味偶然に出会った全員で、「ウェールズ日本人会」が持つ大きなテーマに取り組んでいきたいと思います。

パナソニック マニュファクチャリング イギリス社: https://www.pmuk.co.uk/
ウェールズ日本人会: http://www.walesjapanclub.com/

写真提供: 井上 豊さん


NHK BSプレミアム「一本の道」に出演した、
レイチェル・マッククリスタル(Rachel McChrystal)さん


“このウェールズの美しさ、人々、文化を皆さんと分かちあうことに、大きな情熱を抱いています”


今年5月30日に放送(6月27日再放送)されたNHK BSプレミアムの紀行番組「一本の道 “英国の中の異国”を歩く~イギリス・ウェールズ北部~」で、アナウンサーの中川 緑さんと一緒に旅するガイドとして出演された、北ウェールズご出身のレイチェル・マッククリスタル(Rachel McChrystal)さんにお話を伺いました。

レイチェルさんは厳正な選考により、この大役を担う役として大勢の応募者の中から選ばれた女性です。選考条件は、ウェールズ出身者であること、ガイド役としての体力があること、ウェールズ語を話せることに加え、難関は日本語での案内ができる方、ということでした。


北ウェールズのドゥイガバルヒ村(Dwygfylchi)で生まれて

 私はドゥイガバルヒ村(Dwygfylchi)という、人口1500人ほどの小さな村に生まれました。村の名前は、ウェールズ語で「2つの半円の合流」という意味で、近くにある2つの岬のことを指しています。

 ドゥイガバルヒ村の約半分が、スノード二ア国立公園の最北端を形成しています。村の南東部までの絵画のような美しさの小道は、コンウィまで繋がっています。まわりを囲む風景には、ストーン・サークル、モノリス(一枚岩)などが点在しています。ヨーロッパで最大級の鉄器時代の砦などもあります。

ボランティアで小学校の子どもたちに日本語を教えています

 現在は家族とマンチェスターに住んでいて、私の夫スティーブとは、結婚してから7年になります。2人の子どもにも恵まれました。6歳になるミーガンと、19カ月のフィンレイです。

 マンチェスターからドゥイガバルヒ村は、車で片道たった45分と、比較的近いんですよ。私の家族は今でも北ウェールズに住んでいるので、夫や子どもたちと頻繁に訪れています。私たちは、北ウェールズの海岸沿いと丘の上にむかってウォーキングしたり、新鮮でおいしい空気を吸うことが大好きです。

 普段は週に3日は仕事をして、それ以外は家族と過ごす時間を大切にしています。趣味のランニング、水泳、日本やアジアのお料理をすることも大好きです。たまにですが、ボランティアで小学校の子どもたちに日本語を教えたりしています。そう、私は今でも日本語をとても熱心に勉強しているんです。

10代のとき、祖父とコンウィ城を案内
 日本に興味を持ったのは、祖父がきっかけでした。実は祖父は、コンウィでツアーガイドをしていました。祖父は多くのツアーを通して、日本人や他の国々からの観光客の皆さんを、コンウィ城やその周辺を案内し、ウェールズの文化や遺産への知識、情熱を分かち合ってきました。 そして、10代のときに祖父に付き添ったことで、私にも火がついたのです。

 大学生のときには授業をきっかけに、3カ月間、沖縄で日本人の3家族とともに過ごす機会を得ました。卒業後には、「JETプログラム」を通して外国語指導助手(ALT)として、奈良県で英語を教えました。滞在中はボランティアを通して国際交流活動に携わったり、合気道や和歌の勉強もしました。

NHK BSプレミアム「一本の道 」収録にて、アナウンサーの中川 緑さんと。

 ウェールズに帰国してからは、日本から多くのみなさんを迎え入れてきました。私はウェールズが大切にしてきた歴史的な遺跡を誇りに思い、またこのウェールズの美しさ、人々、文化を皆さんと分かちあうことに大きな情熱を抱いています。日本人のみなさんと、さらに広く世界へ、それらのすべてを伝えていきたいという想いを持っているのです。

※後編では、NHK BSプレミアム「一本の道」収録での体験や、北ウェールズの郷土愛について、さらに伺います。

写真提供: レイチェル・マッククリスタルさん

Wrexham Lager(レクサムラガー)が国際コンペティションで銀賞を受賞

北ウェールズの Wrexham(レクサム)で作られている、英国最古の歴史を持つラガービール「Wrexham Lager(レクサムラガー)」。この度、フランス・リヨンで行われた、権威ある国際ビア・コンペティション「Concours International de LYON 2017」で、銀賞を獲得しました。

「Wrexham Lager(レクサムラガー)」は、その起源を1882年にまでさかのぼるラガービール。あの豪華客船「タイタニック号」でも飲まれていた、という記録も残っています。

レクサムラガー社代表 Mark Robertsさんインタビュー(バックナンバー)

編集後記

カーディフでウェールズ人の年配の方々に「日本から来ました」と自己紹介をすると、「日本といえば、パナソニックの!」と微笑まれたことが、何度もあります。その深い眼差しから、日系企業の皆さんとの友好の歴史を感じるのでした。

次号は7月31日に発行予定です。お楽しみに!

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