不思議の国 ウェールズの家庭料理「ウェルシュ・レアビット」の魅力|Wales Now Vol.17

発行日:2017. 04. 14

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不思議の国 ウェールズ
「ウェルシュ・レアビット プロモーションイベント」開催報告

 3月22日、東京都新宿区のクリナップキッチンタウン東京にて、ウェールズの伝統料理をご紹介するイベント「不思議の国 ウェールズ ウェルシュ・レアビット プロモーションイベント」を開催しました。駐日英国大使館および英国政府観光庁との共催で、約60名の英国通の専門家や料理研究家、旅行関係の専門家、メディアの皆さまにお集まりいただきました。

ウェルシュ・レアビット(『英国大使館のキッチン』より) 写真提供:駐日英国大使館

ウェールズの家庭料理「ウェルシュ・レアビット」
(『英国大使館のキッチン』より)
写真提供:駐日英国大使館

 ウェルシュ・レアビットはチーズとビールと調味料を混ぜて作る、ウェールズのシンプルな家庭料理。オープニングでは、英国ウェールズ政府日本代表の中嶋竹春より「旅行ではお城や庭園を巡るのも大事ですが、ぜひウェールズ人が普段食べている、ローカルのものも食べていただきたい」とご挨拶しました。

 続いて、ウェールズの概要とウェルシュ・レアビットについてご紹介。ウェルシュ・レアビットが文献に現れるのは1725年頃で、さらに1500年代からあったとも言われる歴史や、ロンドンの老舗デパート「フォートナム・アンド・メイソン」でも販売されていること、さらには家庭の食卓から5つ星ホテルのレストランのメニューにまで登場することをご説明すると、その奥深さについて、熱心にメモを取る皆さまの姿が見られました。
 
 さらに、英国料理研究家の砂古玉緒先生がご登場。先生が主催する英国ツアーにて、北ウェールズのボドナント・ウェルシュフード・センターの料理教室を訪問し、ウェールズ人のシェフからウェルシュ・レアビットの作り方を教わった体験についてお話しいただきました。

 「緑の牧草地から良質のミルク、そして良質のチーズが作られる、ウェールズならではの料理」と砂古玉緒先生。

「緑の牧草地から良質のミルク、そして良質のチーズが作られる、ウェールズならではの料理」と砂古玉緒先生

 そして本イベントのハイライトは、駐日英国大使館のシェフによる調理のデモンストレーション。エグゼクティブシェフのフレデリック・ウォルター氏、英国大使館シェフの吉田龍貴氏のご挨拶の後、吉田氏にウェルシュ・レアビットの調理を実演していただきました。

ウェルシュ・レアビットの調理法をデモンストレーションする吉田シェフ。

ウェルシュ・レアビットの調理法をデモンストレーションする、駐日英国大使館の吉田シェフ

 吉田氏は年間平均13,000人の来賓に食事を提供する、公邸専属シェフ。英国の伝統料理や地方料理、季節料理に精通し、料理を通して日英の文化交流と発展に貢献しています。最近ではFood is GREATキャンペーンのために人気の料理レシピサイト「クックパッド」に設けた「英国大使館のキッチン」で、レシピを多数公開。ウェルシュ・レアビットのレシピも昨秋に公開されたばかりです。

  今回は、数多くの賞を受賞しているスノードニア・チーズ・カンパニーのチーズを使用。

 今回は、数多くの賞を受賞しているスノードニア・チーズ・カンパニーのチーズを使用

 おいしく仕上げるコツは「チーズを溶かすときに、ゆっくり溶かすこと。分離しないように、弱火で慌てずに」。そして、「パン粉を入れると、チーズソースが流れずに扱いやすくなります」と吉田シェフ。途中で、特別な思い出話も飛び出しました。「前の大使の奥さまに突然、『ウェルシュ・レアビットを作って。15分で』と言われたことがあって。急にご予定が入ったそうで……正直きつかったですが、一番の思い出です。それだけ、すぐできるおいしい料理ということなんです」。

 また、「食パンだけでなくナッツの入ったパンや、ブラウンブレッドもおすすめ」「トマトやバルサミコ酢のサラダなど、酸味のあるものを添えると合います」「今日はトーストにのせますが、このチーズソースはお魚や焼いたチキンやポークにのせて食べてもおいしい」といったアレンジも教えていただきました。

 試食タイムでは、 会場の皆さまから「ビールの酸味が効いていて大変おいしいです。チーズは冷えると硬くなりますが、冷えても食べやすい点が魅力的」(薬膳料理教室サロンドママン主催・谷口ももよ先生)、「フォートナム・アンド・メイソンのカフェの期間限定メニューで食べたことがありますが、今日のものは濃厚な味付けでまた違ったおいしさですね」「珍しいのに食べやすいので、パーティー料理にも使ったら盛り上がりそう」などのご感想をいただきました。

クリナップキッチンタウン東京の池田所長。

クリナップキッチンタウン東京の池田所長

 会場を提供したクリナップ株式会社は、今年で創業68年を迎える、システムキッチンを日本で最初に開発した老舗企業。閉会にあたり、クリナップキッチンタウン東京の池田所長は「今回のような大規模なイベントは、当社にとっても新しいチャレンジでした。ウェルシュ・レアビットがどんな味か想像できませんでしたが、おいしくて驚きました。スタッフたちとともに、緑豊かなウェールズにも実際に足を運んでみたいと話しておりました」とコメントしました。


“ウェールズ人は非常に謙虚。そして、2つの心を持っています"

カーディガン町議会議員 島崎 晃(Akira Shimazaki)さん

カーディガン町議会議員 島崎 晃(Akira Shimazaki)さん


日本とウェールズの架け橋となる人々をご紹介します。今回は、ウェールズ西部で国際政治学を学び、日本人初の町議会議員として活躍する、島崎 晃さんにお話を伺います。地元では「Jack Bara Caws(パンとチーズのジャック)」というニックネームで知られています。


ー ウェールズに住み始めたのは、留学がきっかけだったそうですね。
そうです、当時の日本では学生運動が盛んだったので政治に興味があり、国際政治学(International Politics)を学びたくて。この分野なら、ウェールズ大学大学院アベリストウィス校が有名だと聞きました。1967年、1ポンド1000円の時代でしたよ。

アベリストウィスに着いたときは驚きましたね、全く別の世界に来たようで。中世的な雰囲気の町で、地元の人たちは古い英語を話していましたからね。

島崎さんが住む、西ウェールズのカーディガンの街並み

現在、島崎さんが住む、西ウェールズのカーディガンの街並み

ー アベリストウィスからカーディガンには、ご卒業後に移住されたのですか。
ええ、ウェールズ民族党の党大会を見に行ったときに知り合ったウェールズ人から、「カーディガンに来い!」と誘われて。ウェールズ語が話されている場所だと聞いて興味があったので、そこに店を構えることにしました。

店はカフェで、名前は「Bara Caws(バラカウス)」。ウェールズ語で「パンとチーズ」という意味です。ウェールズ語のあいさつで「お元気ですか?」と聞かれたら、「私の人生はパンとチーズ(Bara Caws)です」というフレーズがあって、そこから取りました。つまり、「上々です」という意味ですよ。

西ウェールズのハイライトとも言える、ウェールズの守護聖人を祀る聖デイヴィッド大聖堂。

西ウェールズのハイライトとも言える、ウェールズの守護聖人を祀る聖デイヴィッド大聖堂

ー なぜカフェを開きたかったのですか。
生活費を稼ぐためもあったけど、最初はイタリア料理とワインを出す店がやりたかったんですよ。ピアノを置いて、音楽が流れているような。でも、田舎も田舎だったから、スパゲティを出しても「これなんですか?」と聞かれちゃって。そこで、コーヒーとフィッシュ・アンド・チップスを出す店に変えたんです。

地元のウェールズ語を話す人たちが集まって、ウェールズの民謡なんかを歌っていましたよ。店の名前も良かったんですかね。というのも、それまでカーディガンでは、誰もウェールズ語で看板を出していなかったんです。当時、ウェールズ人同士はウェールズ語で話していても、イングランド人が通ると英語に変えちゃっていましたね。ウェールズ語が卑下された時代があったので、劣等感を持っていたようです。

それが日本人が来て、ウェールズ語を褒めてくれたということで、嬉しかったみたいですね。店は3年で閉めましたが、良い思い出です。今でも「Jack Bara Caws(パンとチーズのジャック)」と呼ばれています。「Jack(ジャック)」は日本語の名前なんて覚えられないから、ってさ(笑)。

選挙立候補のときに配ったチラシ。

選挙立候補のときに配ったチラシ

ー 町議会議員になったのはなぜですか。どんなお仕事ですか。
71歳のとき、出馬しました。日本語教師などをした後、のんびりリタイア生活でも送ろうと思っていたら、「町長になってほしい」と言われて。今までカーディガンの町の皆さんに本当にお世話になったから、恩返しができたらいいなと思って立候補したら、当選しました。町議会議員は、町の予算編成や建造物の認可、道路補修、住人同士のトラブルのことなど、町のために何でもやりますよ。

ー お住まいの西ウェールズの魅力や食文化ついて教えてください。
ペンブローク城など、あまり観光化されていない城が好きですね。食べ物は、海苔を食べる習慣があって、ベーコンと炒めてクルトンをのせて食べると旨いですよ。ブレックファーストによく食べますね。

西ウェールズ名物、海苔を使った朝食。

西ウェールズ名物、海苔を使った朝食

ー 島崎さんにとって、ウェールズの魅力とは?
ウェールズ人は、あまり「I」や「my」という言葉を使わなくて、非常に謙虚です。ウェールズ語の言語から来ているものなのかもしれません。それから、ウェールズ人は2つの心を持っています。イングランド人に対する、本音と建前です。

謙虚で、本音と建前で我慢する。そうしないと、生きていけなかったんじゃないかな。私はウェールズ人の、そういうところが好きですね。日本人なら、誰もが共感できるんじゃないでしょうか。

北九州がラグビーウェールズ代表の事前キャンプ地に決定、深まる両者の絆

ウェールズラグビー協会の北九州視察にて(2016年9月)  2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップ(W杯)に向けて、ラグビーウェールズ代表チームの事前キャンプ地が、北九州市に決定しました。
 北九州市はこれまでの交流を活かして、ウェールズラグビー協会にアプローチ。昨年5月には、ウェールズの同協会を訪問しました。これを受け、9月には協会側が来日し、北九州市のラグビー施設などを視察しました。
 結果、グラウンドの芝の質の高さや北九州市の熱意が伝わり、昨年11月19日、ウェールズラグビー協会と北九州市とによる、「トレーニングキャンプに関する覚書」締結に至りました。
 北九州市は「2019年には、変わらぬ熱意とおもてなしの心でウェールズチームをお迎えしたい」とコメントしています。

編集後記

ウェルシュ・レアビットが好きだと話すと、ウェールズ人に「Just a cheese on toast!(単なるチーズ・トーストだけどね!)」と言われました。でもその笑顔はどこか誇らしそう。理由は食べてみたらわかります。

次号は4月28日に発行予定です。お楽しみに!

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