“コロナ後”見据えて交流再開へ万全の備え|
Wales Now Vol.78

発行日:2020. 07. 02

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“ロイヤル・ハーピストとして日本との交流に貢献”


ウェールズ公チャールズ皇太子により英国王室公認ハープ奏者(ロイヤル・ハーピスト)として任命されたアリス・ヒューズさん。昨年秋には、ラグビーワールドカップ(RWC)の試合が開催された大分市の美術館やコンウィ城と姫路城の姉妹城提携調印式などでもハープを演奏し、ウェールズと日本との交流促進にも貢献しているアリスさんに、ハープとの関わりやハープへの思いなどを語っていただきました。

ー ご自身のプロフィールをお聞かせいただけますでしょうか。
ウェールズ中部に位置するポーイス地方の北部にあるモントゴメリーシャーの出身です。10歳からハープを弾き始めました。ハープはウェールズの国民的な楽器で、多くの人に親しまれていますから、私の場合も、ごく自然にハープを演奏するようになったのです。

ー ハープは、ウェールズで人気の高い楽器なのでしょうか。
そうです。ハープは、ウェールズだけでなく、スコットランドやアイルランドでも愛されていて、ケルト音楽には欠かせない存在です。ウェールズでは弦が3列に張られているトリプルハープの人気が最も高く、1000年以上にもわたって特別な楽器として扱われてきたハープの中で、ウェールズを代表するハープとして現在まで愛されてきているのがトリプルハープです。ウェールズの民族音楽や舞踊など文化的な祭典はもちろん、フォークミュージックのコンサートでも必ず演奏されています。

ー どのようにしてハープ演奏を学ばれたのですか。
最初は、ウェールズのナショナル・ユース・オーケストラで最年少メンバーになったことでも知られる国際的なハープ奏者のユーアン・ジョーンズ氏からご指導をいただき、その後、カーディフにあるウェールズ王立音楽演劇学院に進んで、ハープ学科のカリル・トーマス学科長のもとでレッスンを重ねました。

ー 昨年7月にプリンス・オブ・ウェールズのチャールズ皇太子によって、ロイヤル・ハーピストに任命されたそうですけれども、どのように感じられましたか。
本当に名誉なことで、大変に感激しました。ロイヤル・ハーピストとなり、ハープ演奏家として様々な経験をさせていただけることは、非常に貴重な機会であると考えています。先ほどもお話させていただいたように、ハープはウェールズの国民的な楽器ですし、私自身も受け継がれてきたウェールズの伝統を大切にしたい気持ちは人一倍強いつもりですから、ウェールズ語をはじめ、ウェールズの音楽や文化の伝道師としての役割を果たすと同時に、ウェールズにおけるハープの存在を高めたり、ハープという楽器そのものの未来も切り開いたりすることができればと思っています。

ー ロイヤル・ハーピストとして、どのような活動をされているのでしょうか。
プリンス・オブ・ウェールズであるチャールズ皇太子による公式行事をはじめ、英国王室の様々な催しなどで祝賀演奏などを行うことになります。昨年も、チャールズ皇太子が日本を訪問された際、東京の英国大使館で開かれたチャールズ皇太子主催のパーティーでハープを演奏しました。また、昨年秋に日本で開催されたRWCに出場したウェールズ代表チーム“レッドドラゴンズ”の試合が行われた大分市でハープを演奏したり、コンウィ城と姫路城の姉妹城提携調印式が行われた姫路市でも祝賀演奏も行っていますけれども、そうしたウェールズと世界各国・地域との友好関係促進を支える役割も担うことになります。もちろん、ハープ演奏家として私自身の音楽活動も展開していきますから、日本でコンサートも開けるようになったらと考えています。

ー 新型コロナウィルスの感染拡大により日常生活も大きな制約を受ける状態が続いていますが、ロイヤル・ハーピストとしての演奏活動には、どのような影響が出ていますか。
3月中旬以降の公式行事は軒並み延期・中止になりましたし、通常のコンサートや音楽イベントなども同様の状態です。夏くらいからは、少しずつコンサートやイベントなども開催できるような情況に変わっていくことを期待していますし、そうなれば、感染拡大による影響が出る前の原状に復帰するだけでなく、従来以上に忙しい日々を取り戻すことができるのではないかと思っています。

ー 既に2カ月近くにわたってステイホームを余儀なくされているわけですけれども、原状回復後の活動については、どのように考えていらっしゃいますか。
日本も同じでしょうが、外出を自粛する日々が続いている状況ではありますけれども、「レッドドラゴンズの聖地」と呼ばれているカーディフのミレニアム・スタジアムが、新型コロナウィルスの感染拡大による病床不足という事態を受けて、ウェールズ最大の病院として利用されることになり、“ドラゴンズ・ハートスタジアム”と名付けられた臨時病院の運営開始に当たって、ウェールズの聖歌「カロンラン」を演奏しました。医療従事者の皆さんをはじめ、関係者の賢明な努力や市民の協力などで事態も終息に向かっているようですし、原状を回復できた段階では、私の音楽活動の一部であるチャリティ演奏を再開したり、コロナ後の新しい社会や生活スタイルの構築に資するような活動を行っていきたいと考えています。また、日本の皆さんにもお会い出来る日がくることを心待ちにしていますので、皆さんも御身体にお気をつけて、お元気でお過ごしください。

北九州市の小学生達とカロン・ランを合唱

北九州市の小学生達とカロン・ランを合唱

ー どうも、ありがとうございました。
※このインタビューは、5月15日に実施しました

|NEWS|
南ウェールズ出身のトム・ジョーンズ氏が80歳に
大英帝国勲章も授与された世界的ポピュラー歌手

南ウェールズ出身で英国を代表するポピュラーシンガーとして世界的に知られるトム・ジョーンズ氏が6月7日、満80歳の誕生日を迎えました。
1940年6月7日に南ウェールズのポンティプリッドで炭鉱夫の家庭に生まれ、自身も数多くの肉体労働に従事した後、1964年にデッカ・レコードと契約して歌手デビュー。「何かいいことないか子猫チャン」(1965年)、「思い出のグリーン・グラス」(1966年)、「16トン」(1967年)、「デライラ」(1968年)といったヒット曲を連発し、1969年に発売された「ラヴ・ミー・トゥナイト」は日本でも大ヒット。1973年と74年には、2年続けて日本武道館での来日公演も実現させています。
米国進出にも成功したトム・ジョーンズ氏は、1969年から英国と米国でテレビ番組「ディス・イズ・トム・ジョーンズ」が放映され、1970年代にはショービジネスの本場であるラスベガスでもショー活動を展開。1987年に発表されたミュージカル「マタドール」に出演し、自らが歌った主題歌のヒットによって表舞台にカムバック。
1990年代にも「恋はメキメキ」(1994年)が英国と日本でヒットして、健在ぶりを示していました。
1999年に俳優のロジャー・ムーア氏とともに、バッキンガム宮殿でエリザベス女王から大英帝国勲章を受けたのに続き、2006年には大英帝国ナイト位を授与されています。

|NEWS|
ウェブセミナーで最新状況や観光情報など紹介
ウェールズ観光局が“コロナ後”へ魅力をアピール

英国ウェールズ政府(ウェールズ観光局)は6月3日、日本旅行業協会(JATA)アウトバウンド促進協議会(JOTC)が主催したウェブセミナーで、JATA会員旅行会社を対象にウェールズの観光情報や新型コロナウィルスの感染拡大への対応状況などについて説明しました。
ウェールズ政府は、新しい共同バイオセキュリティセンターを通じて、英国だけでなく世界における感染症に関する最新情報を入手して、対応を重ねていく方針です。
ウェールズ観光局はウェブセミナーで、“アフターコロナ”を見据えて「英国の隠れ家」「英国の中の異郷」「不思議の国」などと呼ばれるウェールズの魅力を紹介しました。
ウェールズでは、2020年度の後半から2021年度にかけて日本人旅行者が安心安全な旅行や長期滞在を楽しめるようになることを期待して、各地域が柔軟性をもって出来る限りの準備を進めています。

山羊たちが“ステイタウン”を楽しむ街

「不思議の国のアリス」の物語の故郷である北ウェールズのスランドゥドゥノは、“ファンタジーの街”として知られていますが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴うロックダウンで人影が消えた今春には、野生の山羊たちが街中を闊歩する“山羊の王国”と化して“ファンタジーの街”の本領を発揮しました。
スランドゥドゥノの街中に現れた山羊たちは、高級で柔らかなカシミアウールが取れるカシミア山羊で、ソーシャルディスタンシングで求められる2メートルの距離を置くこともなく隊列を組みながら、住宅街に連なる生垣の植え込みを食べたり、教会の墓地で寝そべったり、まさに、我が物顔で“ステイホーム”ならぬ“ステイタウン”の自由を謳歌していたようです。
グレートオーム岬の丘に生息している山羊たちは、強風などの荒天時に市街地へ“避難”してくることもあるそうですが、100頭を超える群れが街中に大挙して現れることは珍しく、BBCや『ザ・ガーディアン』といった英国を代表するメディアだけにとどまらず、国外のテレビや雑誌、新聞などでも大きく報じられました。
このカシミア山羊たちは、数百年にわたってスランドゥドゥノの広大な土地を守ってきた貴族であるモスティン家の先祖がヴィクトリア女王から下賜されて飼育し始めたものと伝えられ、以前はグレートオームで観光客が山羊を見ようとしても、なかなか姿を見せてくれなかったのに、新型コロナウィルスの感染拡大に伴うロックダウンで街に慣れた山羊たちは人間を恐れなくなり、今では、犬を散歩に連れている街の人たちを興味深そうに眺めるまでになっています。

|NEWS|
「世界ふしぎ発見!」にモスティン卿が再登場
カシミヤ山羊のデザインTシャツで慈善活動も

TBS系の地上波で6月27日に放送された「世界ふしぎ発見!」に、数百年にわたって北ウェールズのスランドゥドゥノを守ってきた貴族の子孫であるグレゴリー・モスティン卿が登場しました。
2019年10月12日にも同じ番組に出演し、屋敷の図書館で偶然発見された100年以上前に曾々祖父が日本に旅行した際の写真にまつわるエピソードを紹介したモスティン卿は、今回も新型コロナウィルスの感染拡大の影響によるロックダウン中に新たな写真が見つかったことを報告しています。
番組では、1908年に撮影された鳥居の前で馬に乗る曾々祖父一行と海に浮かぶ石燈籠の印象的な2カットの撮影場所が特定できなかったことから、視聴者に情報を寄せてもらい、約110年前のモスティン卿の祖先による訪日旅行の足跡と写真が語る歴史を探る予定です。
また、モスティン卿は、ロックダウン期間中にスランドゥドゥノの市街に繰り出したカシミア山羊たちが「僕の山羊」だったことを明かして、ザ・ビートルズの名盤『アビイ・ロード』のアルバム・ジャケットをモチーフに制作したカシミア山羊のデザインTシャツも人気を集めており、その売り上げが慈善活動に役立てられていることも伝えました。

編集後記

世界的な未曽有の危機をもたらした新型コロナウィルスの感染拡大。各国で3カ月前後に及んだロックダウンの期間を経て、日本でも非常事態宣言の解除から1カ月が経過し、事態の進捗を慎重に見守る日々が続きます。英国では、不要不急の国外旅行に対する制限が緩和される見通しとなり、感染拡大の第2波・第3波を警戒しつつも、経済の活性化に向けた動きも加速してきているようです。ウェールズと日本の間における交流も、「ウイズコロナ」「ニューノーマル」という新しい環境のもとで、近い将来、次のステップへと踏み出すことが期待されます。

次号は2020年7月15日に発行予定です。お楽しみに!

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