強固なウェールズ・コミュニティーの形成を目指して|
Wales Now Vol.77

発行日:2020. 06. 15

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“銭湯や商店街など“下町風情”こそ大田区の魅力”


大田区の国際交流員として活躍するベサニー・カミングスさんは、“国際都市おおた”を目指す同区による「多文化共生」や「国際交流」「国際人財育成」「国際協力」などの取り組みを推進するため、様々な仕事をしています。高校の頃から日本語の勉強を本格的に始め、岡山県での留学経験もあるベサニーさんに、国際交流員としての仕事や大田区への思いなどについて、お話をお聞かせいただきました。

ー 初めて日本にいらっしゃったのは、いつだったのでしょうか。
大学1年生の夏に、英国の友人と一緒に2週間ほど、京都や大阪を回りました。子どもの頃から、日本の映画やアニメ、テレビ番組などを見ていたので、実際に自分の眼で見た日本は、イメージ通りでした。

ー ご出身は、どちらですか。
南ウェールズのポースコール(Porthcawl)という海辺の町で、カーディフとスウォンジーの間に位置しています。美しい海岸線はサーフィンビーチとしても人気が高く、多くのサーファー観光客が訪れる場所です。

ー どうして、日本語を勉強されるようになったのですか。
小学校から中学・高校まで一緒だった日本人と英国人のハーフの友人が、よく日本のアニメやテレビ番組を見せてくれて、日本に興味を持ったからです。

ー どんなアニメやテレビ番組がお気に入りだったのでしょうか。
アニメは、名門高校に通う主人公が学校を牛耳る御曹司4人組とぶつかり合い、様々なトラブルに巻き込まれながら、持ち前の明るさと雑草魂でたくましく生きていく姿を描いた痛快青春ラブストーリーの「花より男子(だんご)」が好きでした。また、毎年、お正月には、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」を見ていました。「花より男子」は英語の字幕付きでしたが、「ガキの使い」は英語の字幕がなかったので、友人が映像を途中で止めて、今のジョークはこういうことだから面白いんだよ、と教えてくれたものです。

ー 本格的に日本語の勉強を始めたのは、いつからですか。
高校の時に、最初は図書館のオーディオブックを借りて、それを読んだり、日本語を繰り返し聞いたりして、それから、インターネットを使ってYouTubeの動画も見たりしていました。その後、GCEという高校終了時に受験する公的な外国語試験科目の日本語試験などを受けるため、友人の日本人のお母さんから毎週1回、日本語のレッスンを受けていました。高校では、通算すると2年間ほど日本語を勉強したことになります。

ー 大学でも日本語を学ばれたのですか。
そうです。エジンバラ大学の日本語学科で日本語を勉強しました。日本語の授業はもちろん日本語で行われ、日本の歴史や文化についての授業は英語でしたけれども、2年生からは、日本語以外の授業でも日本語で行われる科目もありました。3年生の時には、10カ月ほど岡山大学にも留学しています。

ー なぜ、岡山大学に行かれたのですか。
エジンバラ大学は、日本の16大学と提携していて、東京では慶應義塾や早稲田などにも留学できるのですが、岡山だったら英語を喋れる人が少なくて、日本語を勉強するのに良い環境なのではないかと考えたのです。また、岡山大学に留学した先輩から「岡山は良いところだよ」と教えてもらったり、日本語の先生が岡山大学の出身だったりしたことも、岡山大学に留学するきっかけになりました。

ー 岡山では、どこに住まわれたのでしょうか。
岡山大学にある留学生向けの寮に入っていました。私の部屋では、フランスとドイツからの留学生と日本人の学生の4人が一緒でした。寮生活でしたけれども、日本の暮らしや文化に深く触れることができましたし、日本語の授業だけでなく、日本の歴史や祭りについての授業もあったので、鳥取県の三朝で本当のお祭りも体験して、御神輿を担ぐ行列に参加したこともあります。

ー エジンバラ大学を卒業して、直ぐに、日本へ来たのですか。
そうです。ジェットプログラムに参加する形で、大田区の国際交流員として来日しました。ジェットプログラムについても、参加したことのある友人から、通訳や翻訳だけじゃなくて、色々な仕事を経験できるから、その後の仕事に生かすこともできるとアドバイスを受け、良い機会になるのではないかと考えました。

ー 国際交流員として、印象に残った仕事を教えていただけますか。
大田区は、大森貝塚を発見したモース博士が、米国マサチューセッツ州のセーラム市にある博物館の館長を務めていた縁で、1980年代に大田区立郷土博物館と姉妹館提携を結び、それが発展して1990年代には大田区とセーラム市が姉妹都市となりました。そのセーラム市からは毎年、使節団が大田区を訪問するのですが、その使節団による視察にアテンドさせていただき、町工場の方による説明を通訳させていただいたりした仕事は、大変に興味深いものでした。
ー 来日されてから、ウェールズに里帰りされましたか。
昨年、TBSの「メイドインJAPAN」という番組で、日本のお土産を故郷に持って帰るという企画があり、無水調理鍋を持って実家に帰りました。ウェールズ料理の野菜スープを作ったり、炊飯器モードで炊いたお米も美味しくて、家族には大評判でした。今年の9月にも姉が結婚するので、ウェールズに行く予定でしたけれども、新型コロナウイルスの感染拡大で、キャンセルしなければならなかったので、とても、残念です。

ー 日本ウェールズ協会(St. David's Society)でも活躍されていらっしゃるそうですね。
既に1年以上にわたって、日本ウェールズ協会でソーシャル・ディレクター/ソーシャル・セクレタリーを務めています。協会によるイベントのサポートやPRを行うとともに、協会のSNS運営も担当しています。ウェールズの人々やウェールズに関わりのある人々と結びつけ、東京あるいは日本で強固なウェールズ・コミュニティーを形成することを目指して、頑張っているところです。

ー ウェールズの皆さんに、大田区の魅力を伝えるとしたら、どんなことをアピールしたいですか。
大田区には、東京23区の中でも最も多く銭湯があると言われており、「銭湯特区」としても活動していますから、その銭湯の魅力を伝えたいと思います。また、大田区には元気の良い商店街も沢山あって、美味しい食べ物も楽しむことができますから、ウェールズにはない日本独特の商店街もアピールできるのではないかと考えています。銭湯や商店街といった下町の風情は、大田区ならではのものです。

ー 最後に、“Wales Now”の読者の皆さんへメッセージをお願いします。
まだ、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、なかなか旅行を楽しむこともできない状況ですけれども、状況が落ち着いてきたら、是非、ウェールズを訪れていただけると嬉しいです。日本からの旅行では、どうしてもロンドンが中心になってしまいますけれども、少し足を伸ばしていただければ、イングランドとは異なるウェールズの独特な雰囲気を楽しむことができます。ウェールズにも、どうぞ、お出かけください。

|NEWS|
オンライン開催の実現で新たな可能性も
注目集めた“ヘイ・フェスティバル・デジタル”

毎年5月から6月にかけてウェールズ中部に位置するポーイス地方のヘイ・オン・ワイで開催されている文学祭“ヘイ・フェスティバル”が、今年は“ヘイ・フェスティバル・デジタル”として5月18日から31日までの14日間にわたって開催されました。
多くの来場者を集めてきた“ヘイ・フェスティバル”ですが、今年は、新型コロナウィルスの感染拡大による影響で、3月に開催中止が決定されたため、同フェスティバルを支持するファンから激励のメッセージや支援の寄付金なども寄せられ、オンラインでの開催を実現しています。
1980年代からスタートした“ヘイ・フェスティバル”は、2001年に出席したビル・クリントン元米国大統領が「心のウッドストック」と形容するなど、人間性の回復を目指すアートイベントとしても注目を集めてきました。
近年は、音楽演奏や映画の試写会も行われるようになってきているほか、子ども向けのプログラムも実施されるなど規模を拡大してきており、今年は、“ヘイ・フェスティバル・デジタル”としてオンラインでの開催を余儀なくされたものの、逆に、より多様な参加者に多彩なプログラムを楽しんでもらっており、将来に向けて新たな可能性も期待される結果となっています。

▼HAY FESTIVAL
http://hayfestival.com/home

|NEWS|
「時を止めてやり直そう」
ウェールズから世界へメッセージ

ウェールズでは毎年5月の最終週に、ウルドと呼ばれる若者ボランティア組織の主催によるウェールズ語の文学・音楽・演劇イベント“ウルド・ナショナル・アイステズヴォッド”が開催されています。
今年は、新型コロナウィルスの感染拡大によりイベントの実施も見送られましたが、1929年に初めて“ウルド・ナショナル・アイステズヴォッド”が開催されて以来、ウェールズの若者が世界中の若者に向けて伝え続けてきた「平和と親善のメッセージ」は、今年も世界の57カ国語で発信されました。
今年のメッセージは、新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大している状況を踏まえ、人類がこのパンデミックを乗り越えることができるように、ウェールズの若者が思いを込めて練り上げたものです。
5月18日に発信され、世界の人々からの共感を得ているメッセージを、日本語で紹介します。

時を止めてやり直そう

世界中の人々へ
自然界に揺さぶられ、目が覚めた私たちは
むやみにお金をつかい
むやみに物を無駄にして
むやみに旅行を繰り返している

世界中の若者へ
今こそ感謝の気持ちを持とう
私たちの生活を支えてくれている最前線の人々へ「ありがとう」
力を合わせれば明るい将来を作れるはず
自分や周りの人の事を気に掛けられる将来
地域の恵まれない人々の事を気に掛けられる将来
私たちの地球の事を気に掛けられる将来
行動を起こすのは、今

世界中のリーダーの皆さん
コロナウイルスによって時計の針が止められました
ウェールズや共に立ち上がっている世界中の若者の声に耳を傾けて、
私たちの将来のためにも、今すぐ行動を起こしてください
世界が目を覚ました今、
皆さんも目を覚ます必要があるのです

 

|NEWS|
英国政府が事業継続のために支援策を実施
新型コロナウィルス感染拡大による影響に対応

英国政府は、新型コロナウィルスの感染拡大による影響への対応を迫られている事業者に対して、英国における現在の事業を継続するための支援策を実施しています。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は公衆衛生上の緊急事態を引き起こすと同時に、経済上の緊急事態も招いており、英国のリシ・スーナック財務大臣は、「大小を問わず、企業を支え、英国の経済を守り抜くためのあらゆる手段を講じる」と言明。既に、事業継続のために英国政府が実施する支援制度が発表されており、銀行融資を対象とする3300億ポンド(44兆円)を超える保証の提供と、新型コロナウィルス対策雇用維持スキームにより、企業と630万人に及ぶ従業員の賃金支援が実施されています。
英国でビジネスを展開する事業者が利用できる可能性のある支援策の一部は、次の通りです。

〈給与給付、税務優遇、助成金など〉
◎事業税(ビジネスレート)免税
https://www.gov.uk/apply-for-business-rate-relief
◎助成金給付
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-business-support-grant-funding-guidance-for-businesses
◎税務ヘルプライン
https://www.gov.uk/government/publications/time-to-pay

〈融資〉
◎中小企業向け緊急少額融資
https://www.gov.uk/guidance/apply-for-a-coronavirus-bounce-back-loan
◎スタートアップ向け株式転換型融資
http://www.gov.uk/guidance/future-fund

各種事業がどの支援制度の対象となるのかを分かりやすく解説した「ビジネスサポート検索ツール」も、英国政府ウェブサイト上に公開されています。
https://www.gov.uk/business-coronavirus-support-finder

編集後記

ウェールズの若者たちが「時を止めてやり直そう」というメッセージを世界に向けて発信し、力を合わせて「周りの人の事」や「地球の事」を気に掛けられる明るい将来を作るために行動を起こそうと呼びかけました。10年前に「破滅的なパンデミック」を警告していた思想家のジャック・アタリ氏も、「深刻な危機に直面した今こそ、『他者のために生きる』という人間の本質に立ち返らなければならない」と訴えています。世界の57カ国語で発信されたウェールズの若者たちによるメッセージも、多くの人々から共感と支持を得られるものとなるに違いありません。

次号は2020年6月30日に発行予定です。お楽しみに!

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