別府で始動するウェールズとの地域交流プロジェクト|Wales Now Vol.65

発行日:2019. 6. 18

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“ウェールズの美しさや魅力への理解深める手伝いを”


アート体験の提供や様々な分野での創造的な課題解決を通じて、多様性に満ちたよりよい社会の実現を目指すBEPPU PROJECT。大分県別府市に拠点を構える特定非営利活動法人・BEPPU PROJECTの山出淳也代表理事に、日本で開催されるラグビーワールドカップ(RWC)2019を契機とする別府市や大分県とウェールズとの交流を通じた新たな価値創造の可能性などについて、お話をお聞かせいただきました。

ー ウェールズとBEPPU PROJECTとの関わりについて、教えていただけますでしょうか。
今年の秋に開催されるRWC日本大会期間中、ウェールズのチームが別府市でキャンプを行うことになり、大分県を訪れていたウェールズ政府日本代表事務所と意見交換の機会をいただきました。BEPPU PROJECTとしても、ウェールズについて詳しく知りたいと考え、現地への視察も行わせていただくことになりました。

ー BEPPU PROJECTによる今後の活動において、ウェールズとの関りをどのように生かしていきたいと考えていらっしゃいますか。

自治体や政府との関係をベースにすると、なかなか動き出しが難しかったり、時間がかかってしまったり、小回りが利かないといったこともありがちですけれども、BEPPU PROJECTは、NPO法人としてのフットワークの軽さを生かし、これまでにも海外の大学と交流協定を結んだり、色々な取り組みを行ってきています。ウェールズ産品の市場開発や地域間交流、さらには、インバウンド・アウトバウンドの旅行流動など、様々な分野に一緒に取り組ませていただきたいと考えています。

ー 先月半ばに3泊4日でウェールズを訪問されたそうですが、どのような印象や感想を持たれましたか。
僕は今回、初めてウェールズを訪れたのですが、植生が日本的だということを強く感じました。ウェールズの風景は、日本人にとっても、どこか懐かしく、牧歌的な魅力があると思います。また、今回は、北ウェールズと南ウェールズを中心に回りましたが、特に、北の方はまだ日本人旅行者もあまり来ていないと聞いています。しかし、現地の観光協会の方がアテンドしてくださったおかげで、どこへ行っても皆さんがとても温かく受け入れてくださいました。まだ、具体的に何をやろうということは決まっていませんが、これから一緒に面白いことができそうな、ワクワクするようなお話を現地のみなさんとさせていただきました。ビジネスとしてどういう契約をして、どのように進めていこうかという話ではなく、とにかく彼らと一緒に何かをやりたいという思いを強く持ちました。現地の風景と人々の顔がとても印象に残る視察でした。

ー BEPPU PROJECTとして、ウェールズ産品の市場開発や地域間交流に向けてどのようなコラボレーションをイメージされていますか。
ウェールズの高級ラム肉やウィスキー・ワインなどのお酒、あるいは、工芸品など、インポーターなどによる大きな動きも出て来るかもしれませんが、われわれとしては、そういうカテゴリーに整理できないものであったり、これからお互いに開発して育てていくものであったり、何か新しいものを創造する方向性を目指せればと思っています。また、何か製品を日本市場で販売展開するような場合でも、単に製品を市場に導入するということにとどまらず、製品を日本で広めていくための仕組みやPRなどを総合的に計画し、様々な取り組みを有機的に繋げていくことで、より効果的で即効性の強い動きを実現できるのではないかと感じています。

ー 大分県内で地域商社の立ち上げなどにも関わってきているとお聞きしています。

県内の各地にお土産物や様々な産品、工芸品などがあります。当然ながら、それらは個々の事業者が製造しており、各自で情報発信に取り組んでいます。それらをもうちょっとトータルに、外部からの視点なども含めて、評価されるべき価値は何なのか、その価値をきちんと伝えるためのメディアとの関り方などを考えながら、フランスのAOCのように産地の個性を守るための仕組みづくりなども目指しています。その土地で作られたものが主原料であるということや、地域固有の技術や作り手の思いを伝えることにこだわり、ただ商品を売るということだけにとどまらず、未来に繋がるような形で生産者を応援する仕組みが必要だと考えたんです。そこで、商品だけでなくその生産者のファンにもなってもらいたい、さらにはその土地のファンにもなっていただきたい。商品を通じて人や土地を思うファンを増やすことで、その土地の風景を守っていきたいというコンセプトをベースに、立ち上げた地域産品のブランド「Oita Made」が、現在は地域商社に発展しています。

ー ウェールズとのコラボレーションも、同様のコンセプトで考えていらっしゃるということでしょうか。
その通りです。今回、実際に現地を訪れて、その風景や人々ときちんと向き合わせていただきました。今後も継続的に現地での踏査も重ね、ウェールズの最も魅力的な部分や本質的な価値をちゃんと掴まえると同時に、なぜ、その産品や製品がウェールズで生まれてきたのかという核心部分のストーリーもきちんと紡いでいきたいと考えています。例えば、今回、北ウェールズでコミュニティラグビーに取り組んでいる方にもお会いして、その取り組みが地域を育てることにつながっているというお話をお聞かせいただきました。つまり、子どもを中心にして地域がしっかりと横に繋がっているんです。今回のRWCのような機会に、別府市や大分県とも交流が広がれば、とても素敵だろうし、それは地域の人々にとっても希望になるんだと力説されていました。我々としても、是非、意義のある交流に繋げていきたいという気持ちを強く持ちました。

ー 日本でのRWCを契機にウェールズと日本各地との地域間交流が拡大することも見込まれていますが、別府市や大分県から先行して成功モデルを発信していくという展開も期待されることになりそうです。
BEPPU PROJECTは、アートやクリエイティブを軸に地域課題と向き合いながら活動している組織です。これまでに食文化や地域固有のコミュニティに根差す文化などに関わる機会も多くありました。今回のウェールズとのコラボレーションについても、同様に、具体的にどの分野と特定するのではなく、まず、双方の地域固有の文化をしっかりと捉えていきたいと思っています。大分県にも大分ラグビースクールという西日本で最も古いラグビースクールがありますから、ラグビーを通じた地域間交流ということも考えられます。また、今後、日本市場やウェールズ市場で展開される商材を通じて、共通のテーマをベースに交流を育んでいくというような取り組みもあるかもしれません。例えば、ウェールズのウィスキーを題材に、別府市内や大分市内の店舗でウイスキーに合うメニューを考案して提供するなど、身近なところから取り組みを始めてみたいと考えています。このような取り組みは、必ずしも大きなムーブメントにするということを目指すのではなく、まずはそこを一つの入口にしてウェールズを知っていただくことを目標にしたいと思っています。ヒット商品ではなく、長く愛されるロングテールとなる商品を開発して、地域間交流を深めていくことと同時進行的にプロジェクトを組み立てていくことができればと考えています。基本的には、丁寧に一つ一つの関係を積み上げていきながら、ウェールズの本質的な価値って何だろう、ウェールズの本当の美しさや魅力は何だろう、といったことをしっかりと捉えることで、この魅力的な国の情報を日本で発信するお手伝いができたらと考えています。

ー どうも、ありがとうございました。

HITOTZUKI「Evidence Clouds」2015年

2014年から2015年にかけてBEPPU PROJECTが取り組んだ
「まちじゅう美術館事業 壁画プロジェクト」では、中心市街地の活性化に寄与しました
HITOTZUKI「Evidence Clouds」2015年

|NEWS|
青銅器時代の遺跡が残る「アバの滝」に至近の蒸留所
北ウェールズで唯一のアバフォールズ・ディスティラリー

 今月下旬に来日するウェールズからのFood & Drink貿易使節団に参加するアバフォールズ・ディスティラリーは、ウェールズに4カ所しかないウィスキー蒸留所の一つで、北ウェールズでは1900年代初め以来のウィスキー蒸留所として注目されています。
 周辺に青銅器時代の遺跡も残る有名な観光地である「アバの滝」から目と鼻の先に位置するアバフォールズ・ディスティラリーから初めてのウィスキーが出荷されるのは2020年の予定で、手作りのジンやリキュールでも知られています。
 「アバの滝」は、年間5万人の旅行者が訪れる人気スポットで、至近距離にあるアバフォールズ・ディスティラリーも「アバの滝」とのセット観光で多くの旅行者を集めることになりそうです。
 19世紀にはスレート加工工場だった施設は、第1次世界大戦と第2次世界大戦の間はマーガリン工場として活用され、ごく最近まで飲料卸売業者の貯蔵庫として使われていましたが、現在は北ウェールズで唯一のウィスキー蒸留所として地域の期待を担う存在となっています。
 ビジターセンターも設置されているアバフォールズ・ディスティラリーでは、毎週木曜日から日曜日まで施設の見学や試飲もできるツアーも催行されています。ツアーは正午から16時まで催行されており、所要時間は40分です。基本的には、先着順で受け付けていますが、予約も推奨されています。

▼ヴィジットウェールズのアバフォールズ・ディスティラリー紹介ページ
https://www.visitwales.com/en-us/product/2040971

▼アバフォールズ・ディスティラリーの公式サイト
https://www.aberfallsdistillery.com/en/

|NEWS|
「シニアのための英語研修&ホームステイ」説明会
カーディフの家庭に滞在する26日間のプログラム

 東京・銀座の松屋アネックスビルで5月30日、「イギリスで学ぶ『シニアのための英語研修&ホームステイ』」説明会が開催されました。
 海外旅行専門の旅行会社であるオーバーシーズ・トラベルが開催した説明会では、同社の中高年シニア向けホームステイを扱うワールドブリッジ・デスクの担当者が、英語研修やホームステイなどについて詳しく説明。今年9月27日から10月22日までの26日間に及ぶプログラムは、50歳以上の健康で英語に興味のある人や英国での生活体験を希望する人なら誰でも参加でき、滞在中はカーディフにある英語専門学校の「ケルティック・イングリッシュ・アカデミー」のスタッフがサポートを行います。カーディフの家庭にホームステイしながら、1日3時間の英語研修が14日間にわたって実施されるほか、1回当たり2時間の「おもてなし英会話」クラスも4回開催されます。

 説明会では、四国と同じくらいの面積に人間よりも羊の方が4倍ほど多いウェールズは、三面を海に囲まれた温暖な気候の土地であること、古城や城址が600以上もある「お城の国」であること、1970年代から日本企業の進出が続いており対日感情が良好であることなども紹介されました。
 また、昨年のプログラムに参加して体験談を発表した陽子さんは、「ウェールズのことは知らなかったが、治安が良くて日本と同じくらい安全で、道を尋ねても何を訊いても皆さんが立ち止まって丁寧に教えてくれた」と暮らしやすさを強調。「ウェールズやカーディフという地域や都市を選んで、そこへ行くことが出来て良かった。語学学校やホストファミリーだけでなく、町ぐるみでシステムを作っているように感じた」と語り、英語研修やホームスティの快適さを振り返っています。
 さらに、ラグビーが「国技」であるウェールズは、ラグビーワールドカップ(RWC)が日本で開催される今年、代表チームの活躍も期待されており、英語研修先やホームステイ先としても注目を集めることになりそうです。

編集後記

今年9月から11月まで日本で開催されるラグビーワールドカップ(RWC)2019は、世界各国から出場する代表チームの事前合宿地や試合開催地と出場国による地域間交流の活性化なども、大会開催の副次効果として大きな期待が寄せられています。ウェールズ代表が予選プールDで対戦するフィジーとの試合や事前合宿が実施される大分県では、別府市に本拠を置くアートを中心テーマとするNPO法人が、ウェールズとの地域間交流を通じた新たな価値創造の実現に向けて意欲を示しており、その取り組みも大いに注目されます。

次号は2019年6月30日に発行予定です。お楽しみに!

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