文化交流や相互理解の進展で日本との関係拡大を|Wales Now Vol.63

発行日:2019. 5. 10

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“RWCを追い風にウェールズと日本との関係の飛躍的な発展を”


ウェールズ政府の日本代表として、今年1月、ロビン・ウォーカー氏が着任しました。ウェールズ政府が英国政府の全行政職を対象に公募した日本代表として新たに選任されたウォーカー氏は、秋田県で英語を教えていた経験も持つ知日派で、1970年代から続くウェールズと日本との経済協力の発展だけにとどまらず、文化交流や相互理解の進展などを通じた様々な分野での関係拡大に意欲を示しています。着任から約4カ月を経たウォーカー氏に、日本代表としての抱負や将来への展望などをお聞かせいただきました。

ー まず、自己紹介をお願いできますでしょうか。

今年1月10日付でウェールズ政府の日本代表に就任しました。2012年から英国政府の行政職に就き、欧州関連や国際関連の代表業務などに携わり、ウェールズ政府日本代表として着任する直前まで、英国内務省で欧州連合(EU)関連業務を担当していました。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで法学を専攻し、大学を卒業した後、英国政府の行政職に就く前に、日本の総務省・外務省・文部科学省・自治体国際協会(CLAIR)の協力で、日本国内の自治体が語学指導などのために外国から青年を招致する事業であるJETプログラムに参加して、秋田県の大曲市で1年間にわたって英語を教えていました。日本でラグビーワールドカップ(RWC)が開催される2019年の初めからウェールズ政府の日本代表を務めていることについては、とても恵まれた完璧なタイミングであると感謝しています。ラグビーのウェールズ代表チームは、今年の欧州6カ国対抗で全勝優勝して、世界ランキングも2位まで上昇しており、日本で試合が行われるRWCでの活躍を今から大いに楽しみにしています。

ー なぜ、秋田県で英語を教えてみようと思ったのですか。

最初から秋田県で英語を教えてみたいと思ったわけではなく、日本には外国人が英語を教えるJETプログラムというものがあることを知り、このプログラムへの参加を申請した結果、実際に英語を教える場所として秋田県を割り当てられたのです。実は、JETプログラムへの参加を申請した当時は、あまり日本については知りませんでした。公務員になることも考えていた大学時代に、海外での勤務にも興味があったので、たまたま知ったJETプログラムへの参加を申請し、大学以外の場所で実地研修のようなことにトライしてみたいという気持ちもありました。外国で生活することにも興味を覚えていましたから、JETプログラムはとても意義深いものに感じたのです。ほとんど予備知識もないまま来日しましたけれども、日本が想像以上に魅力に溢れた国だったので、日本語を学習して話せるようになりたいと思いましたし、歴史や文化についても勉強して日本という国への理解を深めたいと考えるようになりました。

ー ご出身は、どちらですか。

イングランド南西部にあるサマセット地方の小さな村で育ちました。両親はロンドンの出身ですけれども、育った村はウェールズを遠くに望むことができるような場所でしたから、子どもの頃からウェールズには家族旅行で何度も出かけていたので、私にとってウェールズは身近な存在だったと言えます。

ー ウェールズ政府の日本代表に就任されたことについて、ご自身はどのように考えていらっしゃいますか。

育った環境や日本での滞在経験が、ウェールズ政府による日本代表の公募への応募動機にもなっていると言えますし、実際に自分自身でも「このポジションこそ僕の仕事だ」と直感的に思いました。また、ウェールズ政府が新しい日本代表として英国政府の全行政職を対象に公募を行ったことは、政策的にも大きな変更を意味するものだったと考えています。これまでもウェールズ政府の日本代表事務所では、日本のローカルスタッフが素晴らしい仕事をしてきていたわけですけれども、今回の政策変更は、現在のウェールズ政府による国際戦略が反映されたものと言えるのではないかと思います。つまり、より外交的な機能も日本代表事務所に付与することによって、日本におけるウェールズのプレゼンスを高めることを狙ったものでもあり、日本代表事務所を早い時点で英国大使館内に移転したのも、そうした意図に基づくものだっただろうと理解しています。

ー その新たな日本代表として着任されて、どのような抱負をお持ちでいらっしゃいますか。

ウェールズにとって、日本はこれまでも非常に重要なパートナーだったわけですけれども、1970年代にまで遡る製造業分野における日本からの投資を中心とする協力関係は、ウェールズ経済にとって極めて重要な役割を果たしてきました。近年においても、カルビーをはじめとする飲料・食品関連分野での日本企業によるウェールズへの進出といった動きもあり、こうしたウェールズと日本との経済関係の強化は将来にわたって重要性が増していくだろうと見通しており、その実現を後押ししていきたいと考えています。現時点で、ウェールズに投資している日本企業は40社以上を数えていますが、ウェールズにおける日本企業の拠点への支援に加えて、日本でもウェールズに進出している企業をサポートしていくことがウェールズ日本代表事務所の重要な機能となるはずです。また、これからウェールズへの投資を検討している多くの日本企業に対しても、その実現に向けて、投資を行いやすい環境を整えていくウェールズ政府を側面支援することも重要な役割となります。日本からウェールズに進出する企業への支援を行うだけでなく、日本市場での投資や製品販売などを目指しているウェールズ側の企業に対しても、日本市場への理解を深めてもらったり、実際に日本へ進出するために必要となる情報を十分に提供していきたいと考えています。さらに、重要な日英関係の維持・発展に向けて、ウェールズ日本代表事務所として何が求められていくことになるのか、駐日英国大使とも密接に意思疎通を図るように努めていきたいと思っています。

ー さきほどもおっしゃったように、今年、日本でRWCが開催されることは、大きな追い風となりそうです。

RWCが日本で開催される今年は、ウェールズを日本の皆さんに知ってもらうための貴重な機会となるだろうと期待しています。この貴重な機会を捉えて、ウェールズ代表の事前合宿や試合が行われる日本の各都市とウェールズとの往来の拡大や、お互いの歴史や文化への理解を深める相互交流の活性化など、経済分野だけにとどまらないウェールズと日本との関係強化を支援していくことも極めて重要になってくると思います。まだ、ウェールズのことをあまりご存知ない日本の皆さんも多いようですから、ウェールズ代表の活躍が期待される日本開催のRWCを通じ、ウェールズについて様々なことを知っていただけるようにしたいと考えています。既に、北ウェールズにあるコンウィ城と姫路城が、ともに世界文化遺産の城として姉妹城提携を行うことも基本合意されており、今年の秋には正式調印が行われる計画で、RWCとともにウェールズと日本の関係強化を進展させる大きな推進力になるものと期待しています。

ー どうも、ありがとうございました。


““高校ラグビー世界一”決める大会でウェールズをアピール”


(左から)CAVCのDufy氏、CAVCラグビーチームのWilliamson君とJames君

公益財団法人日本ラグビーフットボール協会や一般財団法人サニックススポーツ振興財団などの共催により4月28日から5月5日まで、福岡県宗像市のグローバルアリーナで開催された「サニックスワールドラグビーユース交流大会2019」に、ウェールズからカーディフ・アンド・ベール・カレッジ(CAVC)が出場しました。2001年1月1日以降に生まれた高校生レベルの選手が出場する同大会には、日本国内の8チームと各国ラグビー協会推薦による海外の8チームが参加。CAVCは5月5日に行われた5位決定戦で大阪桐蔭高校に42対51で惜敗したものの、その健闘ぶりが注目を集めました。慌しい大会の日程を縫って、東京・一番町の駐日英国大使館にあるウェールズ政府日本代表事務所を訪れたCAVCのChristopher Duffyコマーシャル・ビジネス・パートナー、CAVCラグビーチームのAneruin James君とLuc Williamson君の3人に、同大会の様子や日本で開催されるラグビーワールドカップ(RWC)への期待などを語っていただきました。

***

「サニックスワールドラグビーユース交流大会」は毎年、ゴールデンウイークに開催される“高校ラグビー世界一決定戦”とも言える恒例の大会で、過去の同大会からは各国の代表チームで活躍する選手やスーパーラグビーのスタープレーヤーへと羽ばたいた選手は少なくありません。上位校同士の対戦はワールドクラスというレベルの高さでも知られ、期間中に参加チームの選手同士の交流が国境を越えて深まることも大会の魅力となっています。ウェールズから同大会に初出場したCAVCのChristopher Duffyコマーシャル・ビジネス・パートナーは、「日本でラグビーワールドカップ(RWC)が開催される2019年は、サニックスワールドラグビーユース交流大会としても20周年という記念すべき節目の年であり、そうしたタイミングで初出場できたのは大変に光栄なことです」と語っています。Duffyコマーシャル・ビジネス・パートナーによると、CAVCは英国でも最大規模のカレッジで、11を数えるキャンパスに通う学生は3万人に及び、自然科学から人文科学、社会科学まで様々な専門分野で教育・研究活動が行われているほか、ラグビーをはじめとするスポーツ分野でも強豪校として知られています。

Duffyコマーシャル・ビジネス・パートナーは、「サニックスワールドラグビーユース交流大会への出場を通じて、日本のチームだけでなく、世界的なラグビー強豪国であるオーストラリア、イングランド、ニュージーランド、南アフリカなどのチームと、高校レベルから切磋琢磨しながら交流を深められるのはとても貴重な機会です」と大会の意義を指摘。「ウェールズ代表の活躍が期待されるRWCに先駆けて、CAVCがサニックスワールドラグビーユース交流大会に出場することで、ラグビーファンをはじめとする日本の皆さんにウェールズをアピールできたのも大変に嬉しい」と強調しています。

東福岡高校や大阪桐蔭高校、中部大学春日丘高校といった日本の高校ラグビー強豪チームと対戦したフッカーのAneruin James君とプロップのLuc Williamson君は、「日本の各チームの戦術やスキルの水準は非常に高かったが、最も驚いたのはフィットネスの強さでした」と異口同音に語り、日本の高校ラグビーが国際的にも遜色のないレベルに近づいていることを印象づけています。Duffyコマーシャル・ビジネス・パートナーは、「4年前のRWCイングランド大会で日本が南アフリカに勝利した試合は『スポーツ史上最大のジャイアント・キリング(番狂わせ)』と評され、世界中から注目されましたが、高校ラグビーのレベルを見ても、日本のラグビーはその後も進化を続けており、これからは世界の強豪国チームに勝っても『ジャイアント・キリング』などとは言われなくなるでしょう」と指摘しました。

また、Duffyコマーシャル・ビジネス・パートナーとJames君、Williamson君の3人は、今年の欧州6カ国対抗で全勝優勝したウェールズ代表チームについて、「世界ランキングがトップのニュージーランドに次ぐ2位まで上昇し、日本で開催されるRWCでウェールズ代表が大活躍してウェールズ旋風を巻き起こすことは間違いなく、今からRWCの開幕が待ち遠しい」と口を揃え、「ウェールズ代表がRWCで優勝する可能性も大きくなってきているようです」と期待を示しています。

|NEWS|
アルツハイマー病の特効薬として「ラッパ水仙」に注目
ウェールズのバイオリサーチ企業が米国・カナダへ輸出

ウェールズの国花としても知られるダフォディル(黄色のラッパ水仙)が、アルツハイマー病の症状を緩和する特効薬として注目を集めています。
ウェールズ中東部のポーイス州に拠点を置くバイオリサーチ企業のAgroceutical Productsは、同州東部に位置するブラックマウンテンズでダフォディルの栽培を行っており、同社によると、1000フィートを超える標高で栽培されるダフォディルには、アルツハイマー病の治療薬として承認されているガランタミンが通常のダフォディルよりも多く含まれていることが判明しました。
英国国際通商省のフェアヘッド貿易・輸出促進担当大臣によると、ウェールズをはじめ、英国内には5500を超えるライフサイエンス企業が世界の最先端を行くイノベーションを実現しており、同相は「ウェールズのダフォディルが世界中のアルツハイマー病患者の治療に効果をもたらすことは喜ばしい」と語っています。
2012年に設立されたAgroceutical Productsは、年間20キロのガラタミンを生産。その輸出先である米国とカナダの製薬会社がつくる薬は、既に9000人を超えるアルツハイマー病患者に処方されており、Agroceutical Productsのガラタミンは、米国とカナダに続いてニュージーランドへの輸出も計画されています。

編集後記

ウェールズ政府の日本代表として今年1月に着任したロビン・ウォーカー氏は、2009年から2010年にかけて秋田県大曲市で英語を教えていた経験を持ち、当時から学習を始めた日本語に加えて、日本の歴史や文化にも精通した知日派です。1970年代から続くウェールズと日本との経済協力関係をさらに発展させると同時に、文化交流や相互理解を通じた様々な分野でのウェールズと日本との関係強化にも強い意欲を示すウォーカー氏の手腕と活躍が大いに期待されます。

次号は2019年5月15日に発行予定です。お楽しみに!

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