ラグビーを通じて深まるウェールズと日本の絆|Wales Now Vol.62

発行日:2019. 4. 24

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“ウェールズとの交流拡大やラグビー文化の定着を”


今回来日した、ウェールズラグビー協会(WRU)の主要メンバーとポール・マデン大使(左からグループ事業開発担当マネージャー リース・ウィリアムズ氏、元ウェールズ代表選手 ヒュー・ベネット氏、駐日英国大使 ポール・マデン大使、地域ラグビーコーディネーター RGCウェスト地区 レイチェル・テイラー氏、ラグビー事業担当マネージャー グレッグ・ウッズ氏、代表チームコミュニケーション担当マネージャー ルーク・ブロードリー氏)

今年の欧州6カ国対抗(シックスネーションズ)で全勝優勝して世界ランキングも2位まで上昇し、9月に日本で開幕するラグビーワールドカップ(RWC)の優勝候補として一気に注目が高まっているウェールズ。事前合宿地である北九州市での交流プログラムに参加した後、3月28日に駐日英国大使館でウェールズ政府が主催した記者会見とウェルシュ・アフタヌーンティーのレセプションに出席したウェールズラグビー協会(WRU)の主要メンバーが北九州市とのパートナーシップやRWCに向けた抱負などを語りました。

老若男女問わず多くの人々が楽しめるラグビー

2003年にオーストラリアで開催された第5回RWCで活躍して注目を集め、ウェールズ代表としてテストマッチに出場した選手に贈られるキャップ数も44を誇る元ウェールズ代表ウィングのリース・ウィリアムズ氏。現在、WRUのビジネス・デベロップメント・マネージャーとして北九州市とのパートナーシップ・プロジェクトをリードするウィリアムズ氏は、「老若男女を問わず多くの人々にラグビーを楽しんでもらえるようにすることをビジョンの一つとして掲げるWRUでは、ラグビーをプレーするだけでなく、沢山のボランティアの皆さんにラグビーチームのコーチやラグビーの試合での審判などもやっていただきたいと考えています」と語り、より地域社会に根差したスポーツとしてラグビーの普及拡大を図ることの重要性を指摘しています。
北九州市で実施された交流プログラムでも、大人向けと子ども向けのラグビー教室、高校生向けラグビー教室、タグラグビー体験会などに加えて、北九州ラグビー協会が募集した地域のコーチや審判に対する研修も実施されました。
「より多くの親御さんたちやサポーターの皆さんにもラグビーに関わっていただきたいと考えており、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、また、健常者の皆さんだけにとどまらず、ラグビーを愛する障碍者の皆さんにも様々な形で楽しんでいただけるのがウェールズのラグビーであると思っています」(ウィリアムズ氏)
今年9月から11月まで日本で開催されるRWCでは、日本で初めてとなるだけでなく、アジア地域においても初めての大会となります。「4年に一度じゃない、一生に一度だ」というRWC日本大会のキャッチフレーズにも象徴されているように、これまで英連邦加盟国を中心に開催されてきたRWCが英連邦以外の日本で開催されることの意義は小さくありません。ウィリアムズ氏は、「日本でRWCが開催されるということで非常に興奮しており、ウェールズ代表チームの選手たちだけでなく、代表チームを応援するためにウェールズから日本を訪れるサポーターたちにとっても、大変に素晴らしい経験になるものと確信しています」と表明。「事前合宿が行われる北九州市だけでなく、ウェールズ代表の試合が開催される日本国内の各都市とも、RWCが閉幕した後もずっとラグビーを通じた交流が続くようにしていきたい」と語るウィリアムズ氏は、「日本でRWCが開催されることの本当の意味合いは、ラグビーを通じた交流や合宿地や試合開催地にラグビー文化が根付いていくことにこそある」と持論を強調しています。

日本での女子ラグビー普及にも貢献

ウェールズ女子代表チームで10年にわたってプレーし、7人制と15人制の両方で代表チームのキャプテンを務め、代表選手として67の国際試合に出場した後、2015年からWRUでラグビーの普及促進を担当しているレイチェル・テイラー氏は、「北九州市での交流プログラムに参加したのは今回が2度目となりますが、日本でRWCへの期待が非常に高まっていることに大変勇気づけられています」と語り、「交流プログラムに関わることを通じて、日本とウェールズには考え方も似ているところがあると感じているので、こういう機会を通じて日本の文化もしっかりと学んでいきたい」と日本とウェールズの交流拡大に意欲を示しています。
幼い頃はバレリーナになりたかったというテイラー氏は、「両親が熱心なラグビーファンだったことから、ラグビーを始めた兄の影響で私もラグビーを始めたのですが、日本ではまだ女子ラグビーはあまりポピュラーではないと聞いていますので、日本での女子ラグビーの普及にも貢献したい」考えです。
ラグビーが国技と言われるウェールズでは、学校の授業でもラグビーが必修科目となっており、中学校や高校の多くが指導員を雇用してカリキュラムを組んでいます。
テイラー氏は、「日本でも女性や子ども達にも身近にラグビーというスポーツを楽しんでいただけるように、広報活動なども含めて支援していくことができればと思っています」と説明。「日本を訪れるたびに行く先々で、とても温かい『おもてなし』を感じることができ、日本での滞在は本当に心に残るものとなります」と語るテイラー氏は、「フルタイムでWRUの仕事に関わるという僥倖に感謝しながら、日本でRWCが開催された後も、ラグビーを通じたウェールズと日本の双方向交流の定着・拡大に寄与していくことができればと思います」と表明しています。


“~ウェールズ・サイバーセキュリティ最前線シリーズ 第4弾~
企業におけるサイバーセキュリティのレベル底上げを”


デーモン・ランズ氏
企業に対するサイバー攻撃の脅威も高まり続ける現在、英国では企業におけるサイバーセキュリティの向上を図るため、サイバーエッセンシャルズ制度が運用されています。サウスウェールズ・サイバーセキュリティ・クラスターの中心メンバーで、自身が創設したWolfberry Cyberが同制度の認証組織として認可されているデーモン・ランズ氏に、お話をお聞かせいただきました。

ー 英国政府が2014年から開始したサイバーセキュリティの向上を目指すサイバーエッセンシャルズ制度について、教えていただけますでしょうか。
デーモン・ランズ氏私が創設したWolfberry Cyberもサイバーエッセンシャルズの認証組織として認可を受けていますけれども、サイバーエッセンシャルズ・マークを取得したい企業は、定められたサイバー対策に関する審査に合格しなければなりません。つまり、このマークを保持することで、企業は顧客をはじめ、関係するステークホルダーに対してサイバー対策にきちんと取り組んでいることをアピールできるわけです。英国政府の入札案件に参加したい企業は、サイバーエッセンシャルズ制度のスキームに基づいて運営されていることが義務付けられており、英国経済におけるサイバーセキュリティのレベルを底上げすることに大きく貢献してきていると思います。サイバーエッセンシャルズ・マークの取得を希望する企業が取り組むべき対策は、極めて具体的なものですから、日本の企業でサイバーセキュリティを担当する皆さんにも参考にしていただけるのではないかと考えています。

ー サイバー・エッセンシャルズ制度の審査項目としては、どういったものがあるのでしょうか。
自己診断シートの主な審査項目は、「システムの境界対策」「ID・パスワードの管理や不要なソフトの削除などコンフィギュレーションの確保」「マルウェア対策」「アクセスコントロール」「パッチマネジメント」の5つです。

ー それぞれの審査項目について、簡単に説明していただけますでしょうか。
まず、「システムの境界対策」については、「ファイアウォールなどのネットワークデバイスの初期パスワードを変更すること」「ファイアウォールを通過するトラフィックを個別に設定し、文書化すること」「承認されていないサービスや攻撃を受けやすいサービスについては、原則として、ファイアウォールでブロックすること」「サービスの終了などに伴って適用されなくなったファイアウォールは削除すること」「ファイアウォールの環境設定を行う管理者インターフェースは、インターネットからアクセスできないようにしておくこと」などです。

ー 「コンフィギュレーションの確保」については、どういった審査項目があるのでしょうか。
こちらは、「不要なユーザーアカウントの削除」「ユーザーアカウントのデフォルトパスワードの変更」「不要なソフトウェアの削除」といった基本的なことに始まり、「リムーバブルメディアが接続されたりネットワークフォルダにアクセスがあったりした時に、ソフトウェアプログラムが自動的に実行されないように、自動実行プログラムを無効化すること」や「パーソナルファイアウォールを有効にして、未承認の接続をデフォルトで無効化すること」などになります。

ー 「マルウェア対策」については、いかがですか。
デーモン・ランズ氏言うまでもありませんけれども、「インターネットに接続できる全てのコンピューターにマルウェア対策ソフトをインストールすること」が求められるだけでなく、インストールされたマルウェア対策ソフトは常に最新のバージョンにしておかねければなりません。また、リムーバブルメディアやネットワークフォルダ内へのファイルアクセスとダウンロードなどファイルにアクセスする際や、ブラウザを介してウェブページにアクセスする際には、マルウェア対策ソフトが自動でスキャンを行うように設定しておく必要があります。さらに、マルウェア対策ソフトは、全てのファイルを1日1回など定期的にスキャンするよう設定し、インターネット上の悪意のあるウェブサイトへの接続も遮断しなければなりません。

ー 「アクセスコントロール」の審査項目には、どんなものがありますか。
まず、ユーザーアカウントを作成する際には、承認された手順に従うこととアクセス特権は限られた人だけに与えること、それから、特権IDの詳細は文書化し安全な場所に保管して、定期的に内容を見直す必要があります。また、管理者アカウントは、管理行為をする際だけ使用して、メールやインターネットのアクセス承認には使用しないことや、管理者アカウントのパスワードは、最低でも2カ月に1度など定期的に変更されるよう設定することが求められます。さらに、ユーザーは、アプリケーションやコンピューター、ネットワークデバイスにアクセスする前に、固有のユーザーネームとパスワードを設定しなければなりません。ユーザーアカウントとアクセス特権は、使用されなくなったり、一定の期間が経過した場合には、削除または無効化する必要があります。

ー 最後の「パッチマネジメント」については、いかがでしょうか。
システム構成を把握して、構成要素ごとに関連する脆弱性情報を検知し、影響範囲の特定とリスクの分析によって、緊急性と必要性を判断して迅速に対応するという一連の流れが「パッチマネジメント」ですから、インターネットに接続できるコンピューターやネットワークデバイス内のソフトウェアは、ライセンスのあるものやソフトウェアベンダー・サプライヤーからサポートのあるもので、脆弱性対策が可能でなければなりませんし、ソフトウェアは定期的にアップデートする必要があります。当然、サポート期限切れのソフトウェアは、削除しなければなりません。そして、ソフトウェアのセキュリティパッチは、定期的にインストールすることが求められます。

ー どうも、ありがとうございました。

|NEWS|
ウェールズの伝統料理やラブスプーンをフィーチャー
ジェイアール名古屋タカシマヤ「英国展」に2万6500人が来場

名古屋市のJRセントラルタワーズの中核施設となっている複合型大型百貨店「ジェイアール名古屋タカシマヤ」で3月27日から4月1日までの6日間にわたり、「第5回記念 英国展 2019~Life with British Quality~」が開催されました。
日本国内で数多く開催されている英国展の中でも高い人気を誇るジェイアール名古屋タカシマヤの英国展は今年で5回目を迎え、“Life with British Quality”をテーマにウェールズ関連の商品と英国王室関連の商品をフィーチャー。ウェールズからは南ウェールズ・ニューポートにあるケルティックマナーリゾートからエグゼクティブ・レストランシェフのSimon Crockford(サイモン・クロックフォード)氏とウェルシュ・ラブスプーン彫刻家のSion Llewellyn(シオン・スウェリン)氏の2人が招聘され、イベントを盛り上げました。
クロックフォード氏はイベント会場内に設営されたケルティックマナーリゾート・ポップアップレストランで、ウェールズの伝統料理であるウェルシュ・ケーキとリゾートオリジナルのローストビーフサンドを提供。2017年のウェールズ・ナショナル・シェフ・オブ・ザ・イヤーにも輝いたクロックフォード氏は、今後の活躍が期待されている若手シェフです。
スウェリン氏は、イベント会場でウェルシュ・ラブスプーンの制作実演を行いました。12歳からキャリアを積んできたスウェリン氏の作品は、ウェールズ国立博物館にも収蔵されており、その繊細な技巧に来場者の皆さんも見入っていました。ウェルシュ・ラブスプーンは、大切な人への愛を伝える装飾的な彫刻が施された木製スプーンで、17世紀から続くウェールズの伝統文化の一つとして人気を集めています。
「第5回記念 英国展 2019~Life with British Quality~」には、6日間で2万6500人が来場しました。

|NEWS|
毎年4月14日は熊本県宇土市「ドゥルー祭」
〜北ウェールズの海苔の研究から日本における海苔養殖発祥へつなげたドゥルー教授〜

 熊本県宇土市の住吉神社で4月14日、ウェールズ地方の海苔の生態を研究し、日本における海苔養殖産業の発展にも貢献した英国の海藻学者であるキャスリーン・メアリー・ドゥルー博士を顕彰する「ドゥルー祭」が開かれました。
東側を除く三面を海に囲まれたウェールズでは、岩海苔(Laver Bread)の食文化が定着しており、ドゥルー博士による海苔養殖技術の発見は、このウェールズの食文化と博士による北ウェールズでの研究活動が融合した成果とも言えるものです。
日本では江戸時代に始まった海苔養殖の技術が定着しませんでしたが、1949年にドゥルー博士が貝殻に付着していた糸状の菌がアマノリの胞子であることを発見し、海藻の成長過程を初めて解明。親交のあった九州大学の教授を通じて、熊本県水産試験場にも伝えられ、同試験場が1953年に海苔の人工採苗に成功し、海苔が毎年安定して十分な量を収穫できるようになりました。
 ドゥルー博士は1957年に他界しましたが、1963年にはドゥルー博士の偉業を讃える記念碑が有明海を見下ろす宇土市の住吉公園に建立され、“Mother of the Sea”と刻まれた記念碑を囲んで毎年4月14日に「ドゥルー祭」が開かれるようになり、今年56回目を迎えています。
熊本県では、今年9月に日本で開幕するラグビーワールドカップ(RWC)の予選プールD組で、ウェールズ対ウルグアイの試合が10月14日に熊本市東区にある熊本県民総合運動公園陸上競技場で行われることになっており、海苔養殖に続いてラグビーを通じてもウェールズとの交流がさらに深まるものと期待されています。

宇土市の早期復興をお祈りします
宇土市は2016年4月14日と16日に発生した「熊本地震」で震度5強、6強という激しい揺れに襲われました。また、同年6月20日から21日にかけての記録的な豪雨により、熊本地震で地盤が緩んでいたことも影響して、河川の決壊・氾濫、宅地への土砂の流入などが発生し、甚大な被害を受けました。
宇土市では「宇土市復興まちづくり事業計画」を策定し、熊本地震からの早期復旧・復興を図るとともに、災害に強いまちづくりへの取り組みを目指しています。
英国ウェールズ政府日本代表事務所は、宇土市の早期復旧・復興と災害に強いまちへの再生が一日も早く実現するよう、心からお祈り申し上げます。

編集後記

駐日英国大使館で3月28日に開催されたウェールズラグビー協会(WRU)による記者会見には多くのメディア関係者が集まり、改めて、日本で9月から開催されるラグビーワールドカップ(RWC)に向けて、ウェールズ代表チームへの関心が高まっていることを印象付けました。これまでも、RWC開催地での交流プログラムなどを通じて、ウェールズと開催国との関係拡大に貢献してきたWRUでは、日本との交流やラグビー文化の定着などへの貢献に意欲を示しており、今後の展開が大いに期待されます。

次号は2019年4月30日に発行予定です。お楽しみに!

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