ラグビーW杯に向けて高まるウェールズのプレゼンス|Wales Now Vol.61

発行日:2019. 4. 11

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“日本へも積極的にラム肉の輸出を”


Mike Goodingディレクター
今年1月に英国産ミートの日本への輸入が解禁され、高級食材として世界的にも注目を集めているウェールズ産の極上ラム肉に対する関心が日本市場でも高まってきています。3月初めに千葉市の幕張メッセで開催された第44回「国際食品・飲料展」(FOODEX JAPAN 2019)に出展するため、英国産ミート貿易使節団の一員として来日したファーマーズ・フレッシュのMike Goodingディレクターに、日本での展開方針やラム肉の魅力などをお聞きしました。

ー ファーマーズ・フレッシュについて、ご説明いただけますか。
ファーマーズ・フレッシュとファーマーズ・フレッシュ・ウェールズは、牧場主や畜産農家などの事業者によって構成されている事業組織で、2000年から欧州各国へラム肉を輸出してきています。ラム肉の生産加工は、北ウェールズのWrexhamを含む3カ所で行っており、極めてクォリティの高い製品がコンチネンタル・ヨーロッパで消費されています。ファーマーズ・フレッシュとファーマーズ・フレッシュ・ウェールズは、畜産農家が株主になっている持ち株会社であるファーマーズ・ファースト傘下の事業組織として運営されています。

ー 英国からのラム肉輸出を軸に事業展開されているということでしょうか。
そうです。ウェールズ産のラム肉を中心に英国各地のラム肉を加工生産して出荷しており、コンチネンタル・ヨーロッパでは、フランスやドイツをはじめ、オランダ、ベルギー、スイス、オーストリア、イタリア、スペイン、ポルトガルの各国、さらには、北欧のスウェーデンやフィンランドにも輸出しています。また、各国のイスラムコミュニティでもラム肉を消費してもらえるようにハラル企業としての認証も受けています。

ー 日本市場では、どのような事業展開を目指しているのでしょうか。

われわれとしては、現在、欧州域外の世界各地でも高級食材としてのウェールズ産ラム肉の市場開発を進めていきたいと考えており、既に、マトンとともにラム肉の需要も大きい中東各国へのアプローチを始めてきていますが、今年1月に英国産ミートの輸入が解禁された日本も、極めてポテンシャルの大きな市場だろうと思っています。英国産牛肉については、23年ぶりの輸入解禁ということで、マスメディアによる報道なども含めて注目度が高いようですけれども、世界的にも極上肉として知られるウェールズ産のラム肉も、クォリティ志向の強い日本市場で十分に評価していただけるものと確信しています。食肉としての品質もさることながら、健康食品という意味合いからもミネラルも豊富なウェールズ産のラム肉は、付加価値が高いと言えますので、色々な意味合いから日本市場で評価していただける可能性は大きいのではないかと期待しているところです。

ー オーストラリア産ラム肉やニュージーランド産ラム肉など、日本市場で先行しているラム肉との競合については、どのようにお考えになっていらしゃいますか。
ご指摘の通り、まだ、日本市場でのラム肉需要が決して大きくないという状況で、小さな市場でのパイの奪い合いといった展開は、お互いにマイナスが大きいことにもなりかねませんけれども、幸い、日本市場で先行するオーストラリア産ラム肉とニュージーランド産ラム肉とは、棲み分けによる共存が可能だろうと考えています。廉価なオーストラリア産ラム肉とニュージーランド産ラム肉は、直接コンシューマーにアピールする小売り展開の部分も小さくないようですが、高級食材として評価されている極上で高価なウェールズ産ラム肉は、もともとレストランやホテルなどに向けた卸売り展開が中心となりますから、競合するというよりも、別々に新規需要の開発や新たな市場開拓を進めていくことができるのではないでしょうか。ですから、むしろ、日本市場ではまだそれほどポピュラーではないラム肉については、逆に、その認知度向上に向けてコラボレーション展開も視野に入れて、小売りと卸売りの両面で相乗効果によるラム肉の浸透などを図ることも出来るかもしれません。

ー まだ、ラム肉については馴染みが薄いかもしれない日本の皆さんに、ラム肉の魅力についてアピールしていただけますか。
何と言っても、仔羊なので肉質が柔らかいことと、大人の羊であるマトンと違ってクセがないため、シンプルなメニューでも味わい深い料理が楽しめることが、最大の魅力です。一般的に、ラムと呼ばれるのは生後1年未満の仔羊の肉で、生後2年から7年くらいの成長した大人の羊の肉がマトンと言われており、ラム肉に比べて羊特有の匂いがあることから、好き嫌いが分かれるようです。例えば、シチューやスープなどの煮込み料理に使われることが多いのがマトンで、羊肉の旨味が野菜に沁みこみ、寒い冬などには身体を温めてくれる料理として人気です。一方、クセがなく肉質も柔らかいラムのメニューで代表的な存在がラムチョップです。シンプルな料理ですが、ラム肉の奥深い味わいを楽しむことができます。また、ラム肉はコレステロール量も低いので、健康のためにも、積極的に食べていただきたい肉なのです。日本の皆さんにも、極上のラム肉を味わっていただけるように、日本にも積極的にラム肉を輸出できるようにしていきたいと思います。

ー どうも、ありがとうございました。


“日本でのサイバーセキュリティの技術向上や人材育成に貢献”


ジョン・デイビス議長サイバーセキュリティの分野で世界の最先端を走るウェールズ。昨年から日本におけるサイバーセキュリティの技術向上や人材育成を積極的に支援してきているサウスウェールズ・サイバーセキュリティ・クラスターのジョン・デイヴィス共同創立者兼議長に、英国ウェールズ政府によるサイバーセキュリティ政策などについて説明していただきました。

ー ウェールズがサイバーセキュリティの分野で世界の最先端を走っている背景には、どういった理由があるのでしょうか。
ウェールズとイングランドとの国境のイングランド側に位置するチェルトナムには、英国政府の3つの情報機関の一つである英国政府通信本部(GCHQ)があります。1914年に第一次世界大戦が勃発した直後に設立されたGCHQは、対戦国であるドイツの通信傍受や暗号解読などを行うための組織として発足し、その歴史は既に100年以上に及びますが、現在は、そうした情報機関としての役割に加えて、テロ対策やサイバーセキュリティなど英国の安全保障にとって重要な機能も担っていますが、そうした長年に及ぶ歴史を背景に、周辺地域にはエアバスやロッキード、ブリティッシュ・エアロスペースなどの航空宇宙産業の代表的企業や世界的に知られたIT企業なども立地するようになり、英国内でも屈指の情報通信や航空宇宙などの最先端技術が集積されるエリアが形成されてきました。イングランド側は地価が高いうえに、経常コストもかさみがちなため、国境を越えたウェールズ側にも世界的にも知られる先端技術産業の施設が展開されるようになったのです。

ロゴ・イメージ
ー そうした先端技術分野を支える産業基盤がウェールズ側に根付いてきたということでしょうか。
その通りです。現在、10社近い超大手のサイバーセキュリティ企業がウェールズ側に立地していますし、その中にはイングランドからウェールズに移転したケースも少なくありませんし、近年でもブリストルにあった3社がニューポートに移ってきたりしています。英国内だけでなく欧州全体でみても、これだけ技術移転が進んだり最先端技術が集約されたりするようになったエリアは、他に例を見出すことはできないだろうと思います。超大手企業では数千人規模の社員が働いており、そうした中から自分で起業したり、コンサルタントになったりする人たちも出てきて、数多くのサイバーセキュリティのスペシャリストがウェールズに誕生しすると同時に、地域の有力大学であるサウスウェールズ大学やカーディフ大学、スウォンジー大学にはサイバーセキュリティの学位コースが開設され、教育プログラムの開発も進められてきたわけです。その歴史的な背景なども含めて、ウェールズがサイバーセキュリティの分野で世界でも最先端のエリアとなっていることは、専門家や関係者を除けば、英国でも知っている人は極めて少ないようですから、日本では殆ど知られていないかもしれません。

ジョン・デイビス議長
ー 地域に根差した産業基盤がサウスウェールズ・サイバーセキュリティ・クラスターを下支えする形となっているわけですね。
それと同時に、成長産業分野でのクラスター形成を支えようというウェールズ政府による積極的な施策も、ウェールズがサイバーセキュリティの分野で世界の最先端を走っていることの大きな追い風になっていると思います。チェルトナムやブリストルといったイングランド側に立地する企業が、国境を越えてウェールズに拠点を置いたり、ウェールズ側の企業と協力するようになったのは、ウェールズでのサイバーセキュリティ関連事業の発展に大きな可能性を見出しているからなのです。さらに、民間部門がイニシアチブをとっている投資分野でも、情報コミュニケーション技術(ICT)は数少ない重要な投資先の一つとなってきたことも大きな要因になってきています。もちろん、そうした動きを促進しているのも、ウェールズ政府によるサイバーセキュリティ分野でのクラスター形成を後押しする政策であるわけです。もう一つ、ウェールズの企業にも日本の企業と同じように、非常にオープンで異業種の相手も含めて積極的にコラボレーションを進めようという気質が強く、そのこともウェールズにおけるサイバーセキュリティ分野における発展をもたらしているのだろうと考えています。

ー 今後の日本におけるサイバーセキュリティ人材の育成には、どのように関わっていくことになるのでしょうか。
今回の来日目的は、ウェールズ政府が設立に協力した日本のサイバーセキュリティ人材育成機構とウェールズ政府日本代表事務所が共催した英国大使館でのセミナー「英国ウェールズにおけるサイバーセキュリティ最前線」に出席することでしたが、このセミナーも同機構が発足した当初から計画されていたものでした。日本では、経済産業省が2020年にはサイバーセキュリティ人材が20万人も不足すると見ていますが、世界のトップレベルにあるウェールズの複数の大学で日本からの教育人材の受け入れなども積極的に進めて、日本国内におけるサイバーセキュリティ技術の進展や人材育成に全面的に協力していきたいと考えています。振り返ってみれば、「世界に一つだけ」の存在としてのウェールズの重要性を最初に認識してくれたのは、ほかならない日本だったわけです。1970年代にウェールズ政府が石炭を中心とする重厚長大の産業構造からの転換を目指した時、ウェールズのハイクォリティな労働力や勤勉な企業風土などを評価して日本企業が次々と進出し、現在にいたる新しい産業分野の発展への道筋を切り拓くことに寄与していただきました。今度は、サイバーセキュリティの分野で世界の最先端を走るウェールズが、日本のサイバーセキュリティ技術の進展や人材の育成に貢献させてもらうことができればと考えています。

ー どうも、ありがとうございました。
パネルディスカッション

|NEWS|
ウェールズラグビー協会のメンバーが来日
英国大使館のイベントで日本側関係者と交流

英国ウェールズ政府は3月28日、東京・一番町の駐日英国大使館で「ウェールズラグビー協会 プレスカンファレンス」(ウェルシュ・アフタヌーンティーと楽しむお花見会)を開催しました。
昨年秋の「エンドオブイヤー・ラグビーユニオン・インターナショナルズ(オータム・インターナショナルズ)」を経て世界ランキングが4位となっていたウェールズ代表チームは、今年に入ってからも欧州6カ国対抗(シックスネーションズ)で全勝優勝して世界ランキングも2位まで上昇するなど、その上昇気流に乗った躍進ぶりが国際的にも大きな注目を集めています。
今年9月から日本で開催されるラグビーワールドカップ(WRC)に出場するウェールズ代表チームは、北九州市で事前合宿を行うことが決まっており、ウェールズラグビー協会(WRU)の関係者は3月下旬に同市で実施された昨年8月に続く2回目の地域社会交流プログラムに参加した後、東京でのイベントに臨みました。
英国ウェールズ政府のロビン・ウォーカー日本代表は、ウェールズの魅力について、「国土の20%が3つの国立公園で占められる美しい国」であり、「ユネスコの世界遺産が6つもあるのをはじめ、国内には600もの城が存在すること」を指摘。今年秋には、日本の姫路城とウェールズのコンウィ城が姉妹城提携に調印する予定で、「昨年は4000人だったウェールズを訪れる日本人旅行者がRWC後はさらに増えると思う」と期待を表明しています。
また、ロブスターとラム肉に代表されるウェールズの「食」も世界的に評価が高く、特に、今年1月に輸入が解禁されたラム肉について、ウォーカー日本代表は「既にレストランなどでも食べられるようになっており、RWCを契機に日本市場での認知も広がるだろう」という見通しを示しました。
さらに、ウォーカー代表は、ウェールズでは50年近くにわたって日本からの投資が続けられていることにも言及し、「ウェールズの人々の情熱を享受してきている日本企業を通じて、ワクワクするような両国関係が育まれてきた」ことを強調しています。
2000年から2005年までウェールズ代表チームの選手として活躍し、通算44試合のテストマッチに出場したリース・ウィリアムズ氏も、WRUのグループ事業開発担当マネージャーとして来日。「北九州市との交流プログラムはRWCが開催されるまで1年間を通じて行われており、3回にわたって実施されるプログラムを通じて、ラグビーをベースとした持続的な関係を構築していきたい」と挨拶し、「ラグビーを楽しむという大切な価値観を伝えていくことができればとも思っている」と語りました。
「ウェールズラグビー協会 プレスカンファレンス」に続いて開催された第二部の「ウェルシュ・アフタヌーンティとお花見会」では、ゲストの皆さんが駐日英国大使館敷地内で満開に咲き誇った桜を愛でながら、ウェールズ伝統のウェルシュケーキやバラブリス(フルーツケーキ)、ウェルシュレアビット、ソーセージロールなどに舌鼓を打ち、華やかなおもてなしの光景が繰り広げられました。

編集後記

3月末に駐日英国大使館で開催された「ウェールズラグビー協会 プレスカンファレンス」とアフタヌーンティー&お花見会のイベントでは、来日したウェールズラグビー協会の関係者が来場者への対応で“ひっぱりだこ”状態となり、改めて、欧州6カ国対抗で全勝優勝したウェールズ代表チームへの注目が集まっていることを印象づけました。9月からのラグビーワールドカップ本番に向けて、ラグビーだけでなく、様々な分野でウェールズの日本でのプレゼンスが高まっていくのも大いに楽しみな展開となってきています。

次号は2019年4月15日に発行予定です。お楽しみに!

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