新たな日本代表着任で日本との関係をさらに強化|Wales Now Vol.58

発行日:2019. 2. 19

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“産学共同の斬新なアプローチで画期的な防食剤を開発”


革新的な産業の育成が積極的に進められているウェールズでは、様々な分野で最先端の技術も次々と誕生してきています。伝統的な産業の一つである塗装産業においても、欧州連合(EU)による毒性や発がん性物質を含む腐食防止剤の使用に対する規制が進む中で、そうした規制をクリアする新しい革新的な技術が注目を集めています。スウォンジー大学の研究成果をベースに安全で効果の高い製品開発に成功したHexigone Inhibitorsのパトリック・ドッズ博士に、同社の事業展開などをお話いただきました。

ー Hexigone Inhibitorsについて、ご説明いただけますか。

Hexigone Inhibitorsは、スウォンジー大学での研究成果をベースに、その研究成果が塗装産業にもたらすことになると思われる大きな影響を見越して設立されました。英国王立協会や王立工学アカデミー、イノベートUKなどから実現可能性調査のための資金を調達し、全世界で数十億ポンド規模とも言われる市場を対象に安全で効果の高い製品を投入しています。

ー 安全で効果の高い製品とは、どういうものなのでしょうか。
腐食が世界経済にもたらすコストは毎年2兆ポンドに達しているとも言われていますが、EUでは、最も効果の高い腐食防止剤が毒性と発がん性を理由に使用が禁止されつつあります。つまり、塗装が重要な要素となっている自動車・航空宇宙・建築などの分野における最終商品や塗装産業そのものにも大きな経済的・社会的打撃をもたらすことになりかねない状況にあるわけです。実は、約30年にわたる研究にも関わらず、毒性や発がん性を伴う効果の高い腐食防止剤と同等の性能を備えた代替品の開発にはいたっていなかったのですが、Hexigone Inhibitorsはその壁を打ち破って、安全で効果の高い製品を実現することに成功しました。

hexigone_imageー どのようにして、そうした製品を開発されたのですか。
Hexigone Inhibitorsでは、新たなアプローチで市場が直面する課題を解決することを試みたのです。つまり、単に代用品を追求するのではなく、これまで塗料に使用できなかった化学物質を適用可能とする添加剤を研究するという方向へ舵を切ることにしました。その結果として生まれたのが“Intelli-ion”で、現在、市場をリードしているクロムフリー製品の10倍の効果を発揮するという従来の常識を覆す画期的な坊食剤と言えます。

hexigone_imageー “Intelli-ion”について、もう少し詳しくご説明いただけますか。
Intelli-ion顔料は、電気化学的な材料の調査、分析などの分野で活用されるマイクロ・リザーバーのインテリジェント版を用いて、塗料を環境に適応させることで、保護が必要な状況の感知を通じてスマートに母材を保護し、自動車や飛行機、船舶、建物などの構成要素を早期破損から守ることができる革新的かつ独創的なアプローチなのです。Hexigone Inhibitorsが資金提供を受けたイノベートUKのティム・ソーヤー最高投資責任者は、「Hexigoneがイノベーション事業向け融資の最初の出資先の一つとなったことを嬉しく思っています」と語り、「このイノベーション事業向け融資は、革新的な技術を開発する企業のスケールアップと成長を助けることを狙いとしており、Hexigonが提供する新たな防食技術は、まさに、これを体現するものと言えます」と評価してくれています。

hexigone_imageー 日本市場での事業展開については、どのように見通されていますか。
日本でも、EUと同様に、毒性や発がん性物質を含む腐食防止剤の使用に対する規制が行われることになりますから、Hexigone Inhibitorsが開発した安全で効果の高い製品に対するニーズが拡大していくことは間違いないだろうと考えています。もちろん、競合他社においてもそうした規制をクリアするための製品開発は進められていますし、有望な市場である日本での競争も厳しいものになっていくだろうと思っています。ただ、既に説明させていただいた通り、スウォンジー大学での研究成果をベースに、これまで塗料には使えなかった化学物質を添加剤によって利用できるようにするIntelli-ion顔料の優位性は揺るぎのないものですから、日本市場でも着実に地歩を築いていけると確信しています。

ー どうも、ありがとうございました。


“ウェールズの伝統技術も活かされた救助訓練人形”


ワコー商事_高野さん世界の優れた救急医療資機材の輸入・販売・卸しを行っている専門商社であるワコー商事。ウェールズのメーカーから救急・災害救助訓練人形を輸入している同社国際マーケティング事業部の高野哲副部長に同社の事業概要やウェールズからの輸入製品などについてお話をお聞かせいただきました。

ー ワコー商事の事業概要について、ご説明ください。
1978年に設立された専門商社で、救急医療資機材をはじめ、一般医療用資機材、看護用資機材などの輸入・販売・卸しのほか、医療資機材の輸出、救急など各種ソフトウエアの開発販売、災害医療システムの構築サポートとコンサルティング、消防情報一括管理システムの提供なども行っています。日本は、台風や地震、火山の噴火、大雨・大雪など自然災害の多い国ですが、特に、近年は大規模な自然災害の発生頻度が高まっていますし、欧米でも、自然災害だけでなくテロ事件も頻発するようになっており、様々な緊急事態などに対応するための救急医療資機材への需要が高まっていますから、そうしたニーズに応える製品やサービスを中心に事業を展開しています。

ー 主な取引先についても、教えていただけますか。
防衛省や海上保安庁、全国各地の消防本部をはじめとする官公庁や全国の自治体、日本赤十字社、自然災害などの時の救急拠点となっている病院、航空会社など多岐に及んでいます。また、救急医療資機材などを輸入しているサプライヤーは、英国、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、アイスランド、チェコなどの欧州各国や米国、オーストラリアなど10カ国以上の約60社を数えています。

ー ウェールズからは、どういった製品を輸入されているのでしょうか。
ウェールズのルースリー社が製造している救助訓練人形を輸入して、「タフ・ダミー」という商品名で販売しています。英国で開発され、世界各国の救急隊や軍隊に納入されて、急速にマーケットシェアを伸ばしてきている製品で、数年前に米国メーカーの製品から切り替えました。過酷な訓練状況にも耐える丈夫なボディを持つ標準仕様のものに加えて、水難救助用の訓練人形もあります。

ー 製品の特性などについて、ご説明いただけますか。
標準仕様の訓練人形は、本体生地とカバーオールが警察の防刃・防弾ベストにも使用されている素材で、高い耐久性が実現されています。脇や腰などの大きい負荷がかかる部分は、高密度ポリプロピレンの帯ヒモで補強されていますし、カバーオールは交換も可能ですから、本体も長持ちする製品となっています。水難救助用の訓練人形も、タフでリアルな訓練にも十分に耐えられるように、本体生地はナイロンメッシュ性で素早く水を吸収、排出することができ、水はけが大変に良好です。オレンジのカバーオールや頭部の反射テープによって、海や川などの訓練で使用する場合にも、視認性が極めて高くて安心できる製品で、こちらもカバーオールが着せ替え可能な仕様となっています。

ルースリー社のポール・マクドネル社長

ーウェールズの企業によってつくられている製品の強みや特徴として、どのようなことを感じていらっしゃいますか。
日本人の成人男性に近いサイズの人形も製造されており、身長が約165センチ、体重は約30キロ、約50キロ、約70キロと3つのタイプから選択が可能となっていて、キメの細かい製品づくりが行われていると思います。それから、製品の強みとして「高い耐久性」ということを強調させていただいていますけれども、その背景には、ケルトの歴史が育んだ伝統文化の厚みなどもあるように聞いています。ウェールズには以前、バーバリーやローラアシュレイの工場があったほどで、様々なクラフトワークの集積によって腕の良い縫子さんなどの職人も多いと言われていますから、そうした地域に根差した伝統技術が、救急・災害救助訓練人形の製作などにも活かされているのではないでしょうか。ルースリー社の訓練人形は、輸入しているタイプの他にも全部で20種類くらいがラインナップされていますから、今後、輸入製品を増やしていくことも検討したいと考えています。

ー どうも、ありがとうございました。

|NEWS|
ウォーカー英国ウェールズ政府日本代表が着任
駐日英国大使館で就任記念レセプションを開催

ポール・マデン駐日英国大使と英国ウェールズ政府は2月6日、今年1月に着任したロビン・ウォーカー英国ウェールズ政府日本代表の就任記念レセプションを開催しました。
東京・一番町の駐日英国大使館で開催された就任記念レセプションには、ウェールズに進出している日本企業やウェールズと関わりの深い関係者など約130人が出席しました。
マデン大使はレセプションの冒頭で「皆様のご支援により、日本とウェールズの関係は常に成長・発展してきた」と挨拶。今年1月にロンドンで開催された日英首脳会談に出席した同大使は、「両国首相の間で貿易・商務の連携を深めることが合意され、その一環として、英国から日本への牛肉とラム肉の輸入も再開されることになり、今後は、日本でもウェールズの高級食材を楽しんでいただける」と期待を示しました。また、「ウェールズでは、ラグビーはスポーツではなく宗教だ」と指摘したマデン大使は、今年の秋に日本で開催されるラグビーワールドカップ(RWC)に強豪のウェールズ代表も参加することから、ウェールズチームの活躍によって「日本とウェールズの絆がさらに深まるだろう」と強調しています。

新しい産業分野でも日本との連携を

ウォーカー代表は「日本に着任したことを大変光栄に思う」と挨拶し、10年前に英語教師として秋田県に1年間住んでいたことに言及して、「日本の美しい自然や素晴らしい人々に魅了されている」と語りました。
昨年12月にウェールズに進出している日本企業のオフィスや工場を訪問したウォーカー代表は、「両国の企業がお互いのビジネス文化を理解し尊重していることが関係を深める結果をもたらしており、50年にわたって進化を続けてきた日本とウェールズの間における投資・貿易・商務の繋がりは、自動車などの伝統的な製造業に加えてデジタルやテクノロジー、ライフスタイルなど新しい産業分野での連携へと拡大してきている」と指摘。「今年後半に予定されている姫路城とコンウィ城による姉妹城提携の正式調印により、文化交流を軸にした教育やスポーツなどの交流も活性化することが期待される」と語りました。また日本大会に参加するウェールズ代表チームの事前キャンプ地である北九州市や試合会場となる大分市、熊本市、豊田市でも教育・スポーツ・文化などの交流を予定していることも明らかにして、「皆さんと日本で働けることを心から楽しみにしている」と意欲を示しています。

[ロビン・ウォーカー英国ウェールズ政府日本代表のプロフィール]
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで法学を専攻。英国政府機関で勤務する前に、JETプログラムにより英語教師として来日し、秋田県に1年滞在し、日本語の学習を開始。2012年から英国政府の行政職に就き、欧州および国際関連代表業務などに携わる。英国内務省のEU関連業務担当から1月にウェールズ政府日本代表に就任。趣味はスポーツ(スキー、スカッシュ、ボルダリングなど)、読書、語学、旅行。

編集後記

1970年代に初めて日本企業がウェールズに進出して以来、日本からの投資がウェールズ経済に重要な役割を果たしてきたことは間違いありません。新たに着任したロビン・ウォーカー英国ウェールズ政府日本代表は、就任記念レセプションで「姫路城とコンウィ城の姉妹城提携に象徴される双方の文化交流が深まることこそ、長年にわたって積み重ねられてきたビジネス関係のさらなる発展につながる」ことを強調しており、新たなフェーズを迎える今後の展開が期待されます。

次号は2019年2月28日に発行予定です。お楽しみに!

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