ビジネスでも研究でも日本は重要なパートナー|Wales Now Vol.55

発行日:2018. 12.31

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“重要な日本市場で強固な信頼関係を構築”


世界各国の製薬会社やバイオテクノロジー企業、生物学的製剤会社などに、製材・分析法の開発や臨床試験と商業生産の総合的アウトソーシングを受託しているQuay Pharmaceuticals。東京の英国大使館で開催された英国バイオ製薬セミナーに参加した同社のMichael Kruidenier事業開発部長に、国際的なビジネス展開や日本市場の可能性などについてお聞かせいただきました。

ー 今回の来日目的を教えてください。
大きな潜在需要が存在し、将来の本格的なビジネス展開を目指している日本市場での足場を確保したいと考えています。東京の英国大使館で開催された英国バイオ製薬セミナーへの参加を通じて、10社もの日本企業の関係者と商談を行うことができました。今日も、弊社のサービスに関心を持つ横浜にある日本企業の担当者と会ってきたばかりで、日本市場の可能性を感じているところです。

ー QuayPharmaの事業内容について、ご説明いただけますか。
社員の8割近くが博士号の取得者や元大学教授などで構成されている会社で、極めて専門性の高い豊富な経験に基づいて、世界中の製薬会社やバイオテクノロジー企業、生物学的製剤会社などを対象に、製剤・分析法の開発やそれに続く臨床試験、商業生産などの総合的なアウトソーシングを受託し、それぞれの課題に対するソリューション・サービスを提供しています。

ー 専門性の高さで競争上の優位を確保されているということでしょうか。
熱意と積極性にあふれたチームメンバーが、強力なプロジェクト管理能力と専門知識・技術を活用して顧客企業をサポートしており、そのサービスも迅速かつ費用対効果の高いもので、高い満足度を獲得してきています。国際的にも著名な研究者の指導に基づいて、医薬品原薬の開発や改良を進めるスペシャリストとしてのサービスを通じ、技術支援を行ってきた多くの中小バイオテクノロジー企業に、グローバル製薬会社としてのライセンシングを実現してきました。

ー 具体的なサービス内容の一部を、ご紹介ください。
英国と米国で公的な認証を受けた施設で、前臨床試験から市販製剤の設計や新薬送達システムの構築、分析・移転または手法の開発や検証、ライブ・バイオセラピューティックの送達、散剤や液剤・軟カプセル剤から粒剤・丸剤・成型剤の製造、医療機器などの商業生産、包装・ラベリングなどにいたるまで、多岐にわたるサービスを提供しています。

ー 日本市場では、どのような展開を想定されていますか。
日本企業は、十分に信頼できる強固な関係を構築するため、慎重に取り組みを進めますから、私たちも日本市場で一朝一夕にビジネスを本格化できるとは考えていません。これから数年というようなスパンで頻繁に日本企業との商談を重ねながら、相互に信頼できるパートナーシップ関係を構築していければと思っています。将来のビジネス展開に向けて、日本は非常に重要な市場と位置付けていますから、時間はかかっても、日本市場でのビジネスを確立いかなければなりません。日本での実績を積み重ねていくことで、日本以外の極東の国々での将来的なビジネスの可能性も切り拓いていけるのではないかと考えています。

ー ご自身もウェールズのご出身でいらっしゃいますか。
いいえ、私はオランダ南部にあるライデンの出身です。ライデンはオランダ最古の大学都市として知られていますけれども、国際的にみて薬学の研究も進んでおり、世界各国の製薬会社が研究拠点を置いています。大学を卒業後、製薬業界でビジネスキャリアを重ねてきましたが、28年前にウェールズの製薬会社に入社して、カーディフに移り住みました。国籍的にはオランダ人ということになりますけれども、身体の中にはウェールズの血が流れていますし、自分ではすっかりウェールズ人になったと思っています。

ー ご家族について、お聞かせください。
妻はウェールズ人で、娘はプロの歌手です。先日も、ラグビーのウェールズ代表が試合を行う前に、ピッチでウェールズ国歌を歌わせてもらいました。ウェールズの血が流れている私は、ウェールズ代表の試合はほとんど観戦していますので、本当に誇らしい気持ちでした。

ー ご自身もラグビーをされていたのですが。
今の体型では信じてもらえないかもしれませんが、快速ウイングでした。テニスやゴルフもやっていましたし、スポーツは大好きです。実は、甥がホッケーのオランダ代表チームの選手で、リオデジャネイロの夏季五輪では最年少の出場選手として活躍しました。2020年の夏季五輪でも出場する予定ですから、家族そろって東京オリンピックを観戦に来ようと思っています。もちろん、私自身は、その前にも、顧客企業との商談のために、何度も日本に来ることになるはずです。

ー どうも、ありがとうございました。


“再生医療の最先端を行く日本と共同研究プロジェクト”


英国バイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC)による日本との研究交流支援事業の一環として、大阪大学で12月7日、角膜再生医療など眼科学の先進医療研究についてのシンポジウムが開催されました。大阪大学大学院医学系研究科・医学部の西田幸二教授とともにシンポジウムを主宰したカーディフ大学眼科学・視覚科学部のアンドリュー・クォントック教授に、英国と日本との共同研究プロジェクトについてお聞かせいただきました。

ー 日本との共同研究プロジェクトについて、ご説明いただけますか。
英国と日本との間では、政府間の合意に基づいて、BBSRCや英国医学研究会議(MRC)と科学技術振興機構(JSTA)をはじめとする日本側の組織との間で研究交流支援事業が展開されてきており、現在は、バイオナノテクノロジーやシステムバイオロジーなどの分野での研究交流プロジェクトが推進されています。今回、大阪大学で開催されたシンポジウムは、カーディフ大学と大阪大学、京都府立医科大学、理化学研究所神戸キャンパスなどが参画して進められている2022年までの4年間にわたる研究交流プロジェクトの一環として位置付けられるものです。このプロジェクトでは、角膜再生医療などについて研究している英国と日本の若手研究者を相互に派遣留学させて、研究成果などを共有しながら眼科学の先進医療研究を深めることを目指しています。

ー 先生の研究されている専門分野についても、お聞かせください。
私の研究テーマは、角膜の透過性に影響する様々な因子に関わる角膜の微細構造についての理解を深めることで、過去20年間にわたって、特に、角膜の様々な病気や異常の原因となるコラーゲン原繊維組織やプロテオグリカンと呼ばれる分子群について研究を行ってきています。かつては、眼科医が加齢による視力の衰えを理由に眼鏡の利用を勧めていた老眼をはじめとする視力再生については、近年における眼科学研究や技術革新の進展により、治療方法が加速度的に進歩してきました。私や西田教授が角膜の幹細胞について研究を始めた1980年代には、まだ再生医療という概念は一般的ではありませんでしたが、それまで眼科医により行われてきた角膜移植などの問題を解決する方策として、再生医療に取り組むべきだという考え方が出て来るようになったのです。

ー 角膜の再生医療などに関わる共同研究プロジェクトが、日本の大学や研究機関と進められている理由は、どういったことなのでしょうか。
西田教授と共同研究などもされてきた京都大学の山中伸弥教授が、患者の皮膚などから体のどの組織にもなる能力を持ったiPS細胞の作成に成功してノーベル賞を受賞するなど、日本では再生医療に関わる分野で最先端の研究が行われています。このiPS細胞を活用して、角膜のパーツを作る研究も進められており、将来的には、iPS細胞を使った角膜移植が実現して、拒絶反応の心配もなくなるだろうと期待されているほどです。また、私自身が米国ミズーリ州の大学で研究活動を行っている時に、京都府立医科大学の研究者が派遣留学されてきて、関西の大学や研究者のネットワークとの知己を得ることができたのも、カーディフ大学による共同研究のパートナーとして日本の大学との関係が深まった理由になっていると思います。

 ー 先生ご自身も、ウェールズのご出身でいらっしゃいますか。
私はカーディフ生まれで、父方の祖父も母方の祖父も炭鉱労働者でした。ですから、炭鉱や石炭産業が盛んだった「黄金時代」の雰囲気も知っていますし、炭鉱や石炭産業が衰退していく様子もこの目で見てきました。石炭の時代が終焉した1980年代以降、ウェールズ政府は新たな産業を振興するために注力してきましたし、その結果として、現在のバイオテクノロジー分野における投資の誘致が進んでいることなどがあると思っています。私の研究テーマにも関わるライフサイエンスの産業も、将来性を見込める分野として注目されているところです。

ー  ご家族について、お聞かせください。
実は、私の妻は日本人で、京都府八幡市の出身です。妻の実家が京都と大阪の間にあるということもありますし、1980年代から関西の大学との共同研究を行ってきていることなどもあり、日本にはもう何十回も来ています。

ー 日本については、どんな印象をお持ちですか。
日本の人たちは「おもてなし」の心を持っていることや外国人にも親切に対応することなど、ウェールズの人たちと共通点が多いと感じています。研究分野でも、日本の科学者もウェールズの科学者も非常にハードワークですし、オープンマインドでアイデアを共有しながら積極的に共同研究に取り組むなど、良く似ていると思います。2019年は、日本でラグビーのワールドカップも開催されますし、ウェールズ代表の試合は是非、観戦したいと考えています。日本代表も強くなってきていますし、本当に楽しみです。日本代表がイングランド大会で南アフリカ代表に勝った試合を、ウェールズの人々は決して忘れないと思います。

ー どうも、ありがとうございました。

|NEWS|
英国ウェールズ政府が「お城EXPO 2018」に参加
海外からの初出展でセミナーも連日満席の盛況ぶり

日本全国の城にまつわる歴史や伝統を紹介する“お城EXPO2018”が12月22日から24日までの4日間にわたり、横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜で開催されました。今回が3度目となったイベントには、3日間で2万170人の来場者が訪れ、過去最大規模の集客数を記録しています。
同EXPOには、海外からは初めてとなる英国ウェールズ政府も出展し、北ウェールズのコンウィ城と姉妹城提携することで基本合意した姫路城のある姫路市に隣接するブースで、641もの城がある「古城の国=ウェールズ」を強力にアピールしました。
22日と23日の両日には、英国ウェールズ政府によるセミナー「不思議の国ウェールズ 古城街道」も実施され、全国各地から40以上の自治体や団体などが参加する中で、海外からは唯一の出展で注目度も高かったことから、セミナーは両日とも満席となる盛況ぶりでした。
ウェールズブースに隣接していた姫路城のブースには、ウェールズと日本の国旗や姫路城のミニのぼりなども飾られ、姫路市観光交流局の和田達也局長は、「姫路城とコンウィ城が旅行や城郭をテーマにしたイベントや展示会で、相互に連携・協力しながらPRを展開していきたい」と語り、姉妹城提携による相乗効果の意義を強調しています。

|NEWS|
“Wales Now”2018年アクセスランキング
アクセス数・SNSなどでベスト3を決定

いつも、“Wales Now”をご愛読いただき、ありがとうございます。
2018年も沢山の皆さんに様々な記事をお読みいただいてきましたが、掲載されたホームページへのアクセス数やSNSでのリアクションが大きかった号を総合的に判断して、編集部がまとめたランキングを紹介します。皆さんも、改めて、お読みになられてはいかがでしょうか。

★No.1★
ウェールズの2018年は「海の年」

▼Vol.34はこちらから(発行日:2018. 1. 25)

<Contents>
|お知らせ|2018年の観光プロモーションのテーマは「Year of the Sea」
|お知らせ|ウェールズ産クラフトジンがUKベストジンに輝く
|インタビュー|スランドゥドゥノを守る若き貴族、モスティン卿(Lord Mostyn)
|インタビュー|東京大学生産技術研究所 機械系 柳本研究室/日本学術振興会 特別研究員 トム・テイラー(Tom Taylor)さん

★No.2★
ウェールズと日本を繋ぐ濃密な人生模様の物語

▼Vol.42はこちらから(発行日:2018. 6. 15)

<Contents>
|インタビュー|日本ウェールズ協会(St. David's Society)の創設メンバー 岩田ローズさん
|インタビュー|英国雑貨専門店「ブリティッシュ・ライフ」 代表取締役 犬山貴雄さん
|NEWS|主要旅行会社など対象に2つの街道で視察ツアー
|NEWS|世界一周ヨットレースがカーディフを出航

★No.3★
「不思議の国ウェールズ」が秘めるアートのパワーに感嘆!!

▼Vol.39はこちらから(発行日:2018. 5. 1)

<Contents>
|インタビュー|コンテンポラリー・アーティスト ジュリア・ブルッカー(Julia Brooker)さん
|インタビュー|IT専門就職コンサルタント フィリップ・プシュニク(Filip Pusnik)さん
|NEWS|ウェールズ女性ガラス作家2名来日
東京・猿楽町ヒルサイドテラスで5月12日から20日まで 女流ガラス作家展出展へ
|NEWS|「不思議の国ウェールズ」の魅力をアピール 羽田空港国際線ターミナルで海外旅行イベント

編集後記

世界のバイオ製薬市場で重要マーケットとして注目を集める日本は、再生医療の分野では、その高い研究水準により、英国にとって大切なパートナーとして貴重な存在となっています。コンウィ城と姫路城の姉妹城提携など、文化面での結びつきも強めようとしているウェールズは、日本と英国を結ぶ多様な関係を深める上で、貴重な架け橋としても期待されることになりそうです。

次号は2019年1月15日に発行予定です。お楽しみに!

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