ウェールズと日本の間に広がる多様な可能性|Wales Now Vol.54

発行日:2018. 12.18

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“英国周辺海域の海洋生物すべてを観察できる水族館”



北ウェールズのアングルシー島にあるアングルシー水族館は、英国の周辺海域に生息している海洋生物を全て観察することができるユニークな水族館として人気を集めています。福島県で開催された世界水族館会議に出席するため来日した同水族館のフランキー・ホブロ館長に、施設の魅力や日本の印象などを語っていただきました。

ー 今回の来日目的を教えていただけますか。
いくつかの目的があって来日していますが、主な目的としては、福島県いわき市で開催された第10回世界水族館会議に参加することです。1960年代から始まった会議は、世界中から水族館関係者が集まって、環境汚染や水域の保全、漁業と水族館の役割など様々な課題を話し合う場で、今回は「水の惑星・地球の未来について考える」がメインテーマでした。欧米やアジアなどの31カ国から水族館の館長や研究者など約500人が参加した大規模な会議は、地球規模で関心が持たれている東日本大震災からの復旧や復興の状況を確かめることを通じて、風評被害の解消につなげたり、地域全体の復興に向けて海外へメッセージを発信するという狙いもあったようです。国際的な問題になっているマイクロプラスチックによる海洋汚染の解決策やウミガメ保護のあり方など様々な課題について討論が行われ、アングルシー水族館でも海洋保全や海洋生物の保護などを活動の中心テーマにしているので、非常に興味深い内容でした。

ー 福島県以外の場所も訪問されたのですか。
北ウェールズのコンウィ城と姉妹城提携で基本合意した姫路城のある兵庫県姫路市を北ウェールズ観光局の使節として訪れ、姫路城を視察したり、地元の水族館や学校の子ども達との交流事業などにも参加してきました。また、アングルシー水族館では、美しい真珠を生み出すアコヤガイを日本から輸入しているので、その輸出元である三重県鳥羽市の関連施設や真珠貝の研究を行っている三重大学も訪問しています。三重大学では真珠養殖技術の開発プロジェクトなども進められているので、その取り組みなどを見学させていただきました。

ー アングルシー水族館の特長などについて、お聞かせください。
北ウェールズとは2本の橋で結ばれているアングルシー島の南東部にある海岸線に位置しているアングルシー水族館は、コンウィからは車で30分もかからない場所にあります。英国の周辺海域に生息している全ての海洋生物を観察できる英国でも唯一の水族館として知られており、タツノオトシゴやタコ、ロブスターなど人気の高い生物を間近に見られるので、家族連れや子どもでも十分に楽しめる施設です。また、水族館としては、単に海洋生物を観察するだけにとどまらず、地球規模の課題となっている海洋自然環境の保全やビーチの清掃活動、学校教育における授業の一環としても活用してもらえる学習プログラムなども用意しており、旅行者や観光客だけにとどまらず、地域に開かれた水族館として住民の皆さんにも愛されています。

ー 来日されたのは、今回が初めてでいらっしゃいますか。
そうです。世界中の水族館を回ったりして色々な国を訪れてきているのに、日本どころかアジアを訪れたのも今回が初めてなんです。初めてでしたけれども、10日以上も日本に滞在して、福島県、三重県、兵庫県と各地を回らせていただいて、日本の皆さんがとても親切で、優しいおもてなしの心に溢れているのにとても感動しました。街を歩いてもとても綺麗で清潔な印象ですし、全てがファンタスティックでアメージングでした。

ー 姫路城の印象はいかがでしたか。
とても美しく立派なお城だったので、本当に驚きました。コンウィ城も素晴らしいお城ですけれども、全く趣きの異なる世界遺産の城同士による姉妹城提携というのは、素晴らしいマッチングなのではないでしょうか。コンウィ城は全てが石造りですけれども、姫路城の内部は全てが木造で、そのメンテナンスだけでも大変な努力をしてきているのだろうと思いました。

ー 日本の皆さんにアピールしたい北ウェールズの魅力について教えてください。
北ウェールズは英国でも最も景観の美しい場所ではないかと思います。英国内でも、そうした北ウェールズの本当の魅力について知られるようになったのは、最近になってからのことです。紀元前から積み重ねられてきた重厚で長い歴史や独特の文化、そして、海岸線や山々の景色も目を見張るばかりの美しですから、そうした自然の中で散策やハイキングを楽しんで、自然に身を委ねることの素晴らしさを、是非、現地に来て楽しんでいただきたいと思います。

ー どうも、ありがとうございました。


“日本でも最先端医療のサポートでプレゼンス確立へ”



先端的な細胞治療などの医療に関連するソフトウェアやプラットフォームの開発を行っているトラクセル。英国バイオ製薬セミナーに参加するため来日した同社のマシュー・レイクリン副社長(ビジネス開発・科学関連担当)に、同社の事業展開や日本市場での取り組みなどについてお聞きしました。

ー トラクセルの事業内容について、ご説明ください。
トラクセルは、細胞治療やワクチン製品などの総合管理ソフトウェアを開発しており、医療や治療に関連する複雑なサプライサイクルの管理にも役立つサービスを顧客に提供しています。トラクセルが開発するプラットフォームは、細胞療法や個々の患者に最適な療法を提供する個別化ワクチンの管理などに利用されるものです。顧客のニーズに基づいて開発されるソフトウェアやプラットフォームは、先端的な治療法を開発している研究者やそれぞれの治療法のプロセスに合わせて設計されていますから、細胞の培養やワクチンの創生を管理したり、それぞれの識別や記録の作成などを行うこともできます。ソフトウェアには、サプライチェーンに関わる全ての要件を統合するスケジューリング機能も備わっているので、原材料収集センター、製造センター、補給事業者、治療センターの相関する動きを、総合的に正確な管理を行うことも可能です。


ー 今回の来日目的を教えていただけますか。

トラクセルの事業は、大半が外国のパートナーとのビジネスで占められており、これまでの展開を通じて、米国と欧州各国では一定のプレゼンスを確立してきています。米国と欧州に続いて、トラクセルの重要なマーケットとして着目しているのが日本市場で、今回の来日が今年に入ってから3回目となります。英国大使館で開催されたバイオ製薬セミナーを通じて、潜在顧客として期待される新しい日本企業の担当者と会うことができたほか、これまでの来日で商談を行ってきた日本企業の担当者とも交渉を継続的に行っており、相互の理解を深めながら今後のビジネス関係を着実に構築していきたいと考えています。トラクセルとしては、定期的な来日を繰り返すことで、日本市場での足場固めを行っていく方針です。今後も日本企業との広範な関係構築を目指していきますし、個別企業のニーズに応じてソフトウェアやプラットフォームの開発を行うビジネスにつなげていければと思っています。

ー 日本にも、競合する同業他社はあるのでしょうか。
日本でトラクセルと同様のビジネスを展開しようとしている米国企業はありますけれども、今のところ、競合する日本企業はないと思います。日本では、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功したiPS細胞によって、再生医療や新しい薬の開発などへの期待が高まってきており、iPS細胞から分化誘導した細胞を移植する細胞移植治療への応用も見込まれるようになってきました。こうした細胞治療の先端的な高い技術は、欧米各国からも注目されていますから、トラクセルのサポートを必要とする日本のパートナーとの関係を構築して、日本市場でのビジネスを広げていきたいと考えているわけです。


ー ご自身もウェールズの出身でいらっしゃいますか。

いいえ。ウェールズとの国境に近いイングランド中西部シュルーズベリー近郊にある小さな村の出身です。大学に入るまでは、ビジネスや化学、生物学などに興味を持っていましたが、病気を治療する薬への関心が強くなっていき、カーディフ大学で薬学を専攻しました。薬学の博士号を取得して、世界中の様々な実験施設で色々なタイプの細胞モデルを研究したいと思っていたのですが、ドクターコースの最終年度に美しい女性と出会い、予定を変更することになったのです。その女性と結婚して二人の娘を授かり、現在はカーディフ郊外に住んでいます。

ー ご趣味は何ですか。
自宅で自家製ビールをつくったり、ワインをつくったりしています。ワインは完成するまで6カ月ほどかかりますけれども、ビールは8週間ほどで飲めるようになります。日本食や日本文化も大好きなので、妻を連れて日本を旅行したいと考えています。仕事で日本に来ると、1社でも多くの企業を回らなければならないので、旅行をしている時間はありませんから、古い神社などがある京都へ行ってみたいと思います。

ー 神社にも興味をお持ちなのですか。
日本の歴史や文化には大いに惹かれますけれども、それだけでなく、日常生活や暮らしぶりにも関心があります。ロシアで開催されたサッカーのワールドカップで、日本の代表チームが使ったロッカールームは試合後、綺麗に片付けられていたり、日本のサポーターの皆さんがスタンドを清掃してゴミを持ち帰ったりしていたのは、本当に感銘を受けました。また、実際に来日して、新幹線や地下鉄などが分刻みでスケジュール通りに運行されているのにも驚きましたが、電車が遅れた時に「遅延証明」を発行することにはもっと驚きました。そんな国は世界中を探しても絶対にありませんから、日本のことをもっと知りたいと思っています。

ー どうも、ありがとうございました。

|NEWS|
セミナー「不思議の国ウェールズ 古城街道」も実施
パシフィコ横浜で開催される“お城EXPO2018”に出展

 日本全国の城にまつわる歴史や伝統が紹介される“お城EXPO2018”が12月22日から24日までの4日間にわたり、横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜で開催されます。
 同EXPOには、英国ウェールズ政府や北ウェールズのコンウィ城と姉妹城提携することで基本合意した姫路城のある姫路市など、40以上の自治体や企業・団体などが出展する予定で、22日と23日の両日には、英国ウェールズ政府によるセミナー「不思議の国ウェールズ 古城街道」も実施されます。
 海外からは唯一の出展となる英国ウェールズ政府は、コンウィ城をはじめとする中世古城の魅力を発信します。
 同EXPOを主催する日本城郭協会による「ヨーロッパの名城100選」には、ウェールズのコンウィ城・カナーヴォン城・ハーレック城という世界文化遺産に登録されている3つの城とカーフェリー城の合わせて4つの城が名前を連ねています。

 22日と23日の両日には、英国ウェールズ政府によるセミナー「不思議の国ウェールズ 古城街道」も実施されます。
会場:3階 Room:317
時間:22日(土)・23日(日)午前11時ー11時40分

<読売新聞の夕刊コラムがコンウィを紹介>
『読売新聞』11月21日付の全国版夕刊コラム「旅」欄で、北ウェールズとコンウィが紹介されました。記事の内容は、下記URLのページでご覧いただけます。
https://www.wales-japan.com/wales/wales_now/vol-53/#news3

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アストンマーティンが南ウェールズに拠点整備
セント・アサン工場で初のEV“Rapide E”を生産


 英国の自動車メーカーであるアストンマーティンは、南ウェールズのセント・アサンで電気自動車(EV)を生産する拠点の整備を進めており、2019年から生産を開始する計画です。
 セント・アサンで最初に生産されるのは、アストンマーティンとしては初めてのEVとなる“Rapide E”で、昨年6月には155台限定で生産・販売されることが明らかにされています。
 アストンマーティンは、セント・アサンでの生産設備の設置・整備に5000万ポンドを投資しており、750人を雇用している工場では、同社のゼロエミッションのラグジュアリーブランドに位置付けられる“Lagonda”シリーズも生産される予定です。
 今年9月には“Rapide E”の一部仕様も公開されており、電源はリチウムイオン蓄電池を使用。円筒形電池を5600本搭載する蓄電容量の合計は65kWhとなり、満充電状態からの航続距離は燃費試験法の世界標準で200マイル以上に達すると伝えられています。
 “Rapide E”の顧客への納車は、2019年第4四半期からとなる見通しです。

|NEWS|
ウェールズの「ベンダーリン」がブース出展
東京・大久保で“ウィスキーフェスティバル”開催

 日本で最大のウィスキーイベント“ウィスキーフェスティバル2018in東京”が11月24日と25日の両日、東京・大久保のベルサール高田馬場で開催され、ウェールズからはベンダーリンウィスキーがブース出展しました。
 2日間で8000人が来日した同フェスティバルでは、24日にイベントの主催者であるウィスキー文化研究所の土屋守代表が「ウェールズの歴史と文化から紐解く『ベンダーリン』」をテーマにセミナーを行っています。
 土屋代表は、「ケルトの国=ウェールズ」の成り立ちや、北ウェールズにあるコンウィ城やカナーヴォン城とイングランド王・エドワード1世やプリンス・オブ・ウェールズとの関係などについて説明。ウェールズの歴史やケルトの文化への理解を深めた参加者の皆さんは、一段と味わいの深いベンダーリンのテイスティングを楽しみながら、「異郷の国=ウェールズ」への思いを馳せている様子でした。
 ウェールズでは18世紀後半に禁酒法が制定され、長期間にわたって酒づくりが禁止されていましたが、2004年3月にはチャールズ皇太子も臨席してベンダーリン蒸留所の復活式典が開かれ、ウィスキーの生産が再開されています。
 ベンダーリンウィスキーは現在、2カ所で蒸留所の建設を進めており、大規模な拡張に取り組んでいることから、今後の躍進も注目されるところです。

編集後記

国際会議に出席するため来日したアングルシー水族館の館長さんは、福島県のいわき市と三重県鳥羽市、兵庫県姫路市を訪れ、日本の水族館や大学とのネットワークを強化すると同時に、北ウェールズ観光局からの使節として学校の子ども達とも交流するなど、ウェールズと日本との多様な関係性の広がりに可能性を感じて帰国されました。ウィスキーや城郭のイベントでも存在感を示すウェールズは、日本の様々な分野でプレゼンスを高めているようです。

次号は12月29日に発行予定です。お楽しみに!

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