“コンウィ(イギリス) 中世の雰囲気を残すウェールズの街”



 グレート・ブリテン島の南西に位置するウェールズには、641もの城があるという。
 中でも、北ウェールズにあるコンウィ城と、城壁に囲まれたコンウィの街は、今も中世そのままの雰囲気を残している。
 石灰岩などでできた飾り気のない城。それが第一印象だ。近づくほどに人を威圧するような存在感がある。
 それもそのはず。コンウィ城は、13世紀にイングランド王のエドワード1世が、ウェールズを征服した際の軍事拠点だ。城壁の内側に住んだのは、イングランドの人々。ウェールズ人は長い間、入ることを許されなかった。
 城内に入ると、天井などはほとんどなくなっており、すべてが遺跡と化している。エドワード1世の巨大な部屋や厨房、牢屋があった場所は確認できた。しかし、そこかしこが草むしているだけ。
 城には八つの塔がある。近くを流れるコンウィ川に最も近い塔に上ってみた。薄暗い中、足元を確認しながら一歩一歩進む。てっぺんにたどりつくと、目の前に壮大な風景が広がった。思わず息をのむ美しさだ。
 起伏に富んだスノードニア国立公園の緑深い山々に、水をたたえたコンウィ川。そして眼下には、城壁内の、おもちゃのようにかわいい家々。すべてが見渡せる。ウェールズを支配するための要衝であったことが、塔の上に立つとよくわかる。
 1986年、城と城壁はエドワード1世が周辺に作った三つの城とともに国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された。
 北ウェールズで観光ガイドを務めているアンソニー・オールドフィールドさん(49)は「この城が多くの人の印象に残るのは、ウェールズとイングランドの関係を物語り、しかもウェールズの豊かな自然の中にあるからなのです」と話す。
 コンウィの街を囲む城壁の上も歩いてみた。周囲約1.2㌔。大半を歩くことができ、街を一望できる。
 起伏が激しく、道の幅も狭い。行き交う観光客と「こんにちは」「足元に気をつけて」などとあいさつを交わし、道を譲り合いながら歩くのも楽しい。
 遠くに見えるコンウィ城は、荘厳な要塞そのものだが、周囲の景色と調和し、天気や時間帯によって美しさが変化する。イギリスの有名画家、ターナーもこの城にひかれて作品を描いた。
 城壁を下りて、街中へ。中世の雰囲気が色濃く残るコンウィは、日本旅行業協会の「ヨーロッパの美しい村30選」に、イギリスから唯一選ばれている。石畳の細い通りを歩くと、色とりどりのかわいらしい店が現れる。菓子やチーズの専門店など、ウェールズの特産品を扱う店が多い。
 長い年月を経ても変わらぬ城の存在と、イングランドとウェールズの複雑な関係をも包み込むような豊かな自然。しばし、時の流れを忘れさせてくれた。
小さな家
ギネス認定 イギリスで一番小さな家
 コンウィで人気の「イギリスで一番小さな家」=写真=を訪ねた。童話に出てきそうな赤い壁の家で、ギネスブックに登録されている。
 16世紀の建物で、幅1.83㍍、高さ3.1㍍。1階には暖炉があり、2階にシングルベッドが置ける部屋がある。室内は驚くほど狭い。
 1900年まで住居として使われ、最後の住人は地元の漁師。身長が190㌢だったそうだ。
(2019年3月まで冬季休館中)

文と写真 編集委員・宮智泉


●あし
ロンドンのユーストン駅から、列車で約3時間半。コンウィ駅で下車。チェスターやクルーなどでの乗り換えが1,2回ある。
●問い合わせ
ウェールズ政府公式サイト
https://www.wales-japan.com/


[味] ほどよい甘さ
パンケーキ風

ウェールズの伝統的なお菓子を楽しもうと、コンウィから車で20分ほどのティールーム「ティ・フント・イル・ボント」に行った。1480年に建てられた、ツタの絡まる小さな家だ。
注文したのは、「ウェルシュ・ケーキ」(2.80ポンド=約400円)=写真=。直径7センチ、厚さ1センチほどの大きさの小さなパンケーキ風。小粒の干しぶどうが入っており、ベイクストーンと呼ばれる大きな鉄板で焼き上げる。しっとりとした食感と、ほどよい甘さが特徴だ。
店では温めたものが、地元産のバターとともに出てくる。バターをたっぷり塗って食べると、ミルクティーとの相性もぴったり。

ビン
[買] 乾燥岩ノリ
みそ汁にも?

ウェールズの人はよく海藻を食べる。じっくり煮てペースト状にしたラバーブレッドが一般的のようだ。ウェールズの特産品を集めた「ボドナント・フードセンター」では、瓶入りの「ウェルシュマンズ・キャビア」=写真=なるものを見つけた。キャビアと思いきや、手摘みの岩ノリを乾燥させたもの。みそ汁に入れてもいいかもしれない。4.85ポンド(約700円)。

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