帽子デザインから医薬品流通まで多様なウェールズの産業|Wales Now Vol.52

発行日:2018. 11. 20

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“ウェールズから世界に帽子文化を発信”


英国王室御用達の帽子ブランド「フレデリック・フォックス」でキャリアをスタートし、自身のブランド“Misa Harada London”を発表して以来、世界的に高い評価を得ている帽子デザイナーの原田美砂さん。ローリングストーンズやミッキー・ロークなどの著名人に帽子やヘッドピースを提供したことでも知られる原田さんに、ロンドンからカーディフに拠点を移した経緯やウェールズから世界に発信する帽子文化の意味合いなどをお聞きしました。

ー 英国とのご縁は、そもそも、どのようなものだったのでしょうか。

もともと、高校を卒業して、直ぐに英国へ行きました。小さい頃から海外へ出たいと思っていて、中学の時から独学で英会話を勉強していましたから、大学に留学するための渡英でした。最初はロンドン大学アジア・アフリカ研究学院校(SOAS)で現代哲学を学んでいましたが、父を説得して、ロンドン大学の芸術部門に特化したゴールドスミス・カレッジで1年間にわたり基礎コースを勉強した後、サリー・インスティテュート・オブ・アート・アンド・デザイン大学を経て、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでデザインを学びました。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートは、アート・デザインの修士号以上の研究を行う大学院で、その中のファッション科で毎年1人だけに限られている帽子のデザインを専攻しました。

ー なぜ、珍しい帽子デザインを専攻されたのですか。

それは、偶然の出会いによるものでした。小さい時から音楽とファッションが大好きでしたけれども、最初から帽子デザインを志して英国に行ったわけではありません。普通に大学留学のつもりでしたし、日本では進学校の高校に行っていましたから、それなりの教育を受けさせたいという親の期待もあったと思いますけれども、やはり、英国で個人主義の社会に感化されたのでしょうか、「ここでやらなければ、いつやるんだ」というように決心し、親を説得して芸術部門のカレッジへ進み、その後、アート・アンド・デザイン大学のファッション科にたまたま用意されていた2週間だけのカリキュラムの帽子デザインで、運命の巡り合いが待っていました。そこに教えに来てくれていたのが、私の生涯の恩師となるシャーリー・ヘックス先生だったのです。先生は英国王室御用達のフレデリック・フォックスで、ダイアナ妃がチャールズ皇太子との結婚式の時に着用されていた帽子も作られた方でした。とても魅力的な方で、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの先生でもいらっしゃいましたから、彼女に教えてもらいたい一心で大学院に進み、結果として専攻が帽子デザインになってしまいました。

ー 大学院を卒業して、先生も仕事をされていたフレデリック・フォックスでキャリアをスタートされたわけですね。
フレデリック・フォックスでは、上流階級の社交の場で使われるような帽子を作っていて、例えば、1個数十万円というようなものも珍しくありませんでした。ただ、帽子づくりに携わる中で、上流階級の若い世代が帽子の被り方も分からなくなり、帽子離れが進んでいるのではないかと思い始めて、若い世代を惹きつけるようなカジュアルさも兼ね備えた帽子を作りたいという気持ちも湧いてきて、「30歳になったら独立しよう」と考えるようになりました。「自分のブランドをつくりたい」「帽子文化を衰退させてはならない」という強い 思いを持ちながら、仕事を続けていたのを覚えています。

ー そして、独立されたのが、ちょうど20年前の1998年とお聞きしています。

1998年の8月に自分の会社を立ち上げて、10月に「パリコレ」として知られているパリのファッションウィークで“Misa Harada London”という自身のブランドを発表しました。幸いに、最初のコレクションも、日本と米国のお客様の目に留めていただき、オーダーをいただくことが出来ました。パリコレでは、帽子やバッグなど色々な人たちが発表する合同展示会的な場があって、こうした合同展示会的な場での発表は、20年が経過した現在も行っていますし、世界中のバイヤーの皆さんにコレクションを見ていただいて、オーダーを受けるという形が続いています。世界各国のメディアや雑誌などで取り上げられたり、世界的に著名な方々の帽子やヘッドピースの制作などを通じて、ブランドを知っていただくこともでき、現在は、世界15カ国の100店舗以上で取り扱っていただいています。

ー 現在は、カーディフを拠点とされているそうですね。

実は、2011年にロンドンで直営店を出した後、2013年に子どもを授かり、子どもの誕生後も暫くは、主人の会社があるカーディフの自宅から子連れでアトリエのあるロンドンに通うというスタイルだったのですが、子どもが歩き始めた3年前にアトリエもカーディフに移しました。ロンドンを離れることについては、かなり考え込んでしまいましたけれども、カーディフの素晴らしい環境の中で生活し、子どもを育てるという選択をしたわけです。カーディフも大きな都市ですが、ロンドンで強いられるストレスからは解放されますし、車で30分も走れば、美しい山や海といった自然の中に身を委ねることもできます。ロンドンと比べたら物価もリーズナブルですし、暮らしやすさも実感しているところです。

ー ウェールズ政府貿易使節団の一員として来日された感想をお聞かせください。
英国ファッション協会や英国政府機関の方々などには、それなりに知名度もありましたが、ウェールズに来て間もないこともあり、カーディフに拠点がある会社として皆さんに知っていただいたり、ウェールズ企業の皆さんと一緒に活動したり、貴重な機会をいただけたと感謝しています。現在、直営店はロンドンだけですが、来年にはカーディフでも直営店をオープンする予定です。また、現在、日本国内でも百貨店や30近い店舗を展開する帽子ブティックなど、多くのお店で“Misa Harada London”のブランドを扱っていただいていますが、将来的には、東京に直営店を出すことができたらとも考えています。

ー ウェールズの会社として認知されたり、ウェールズの製品として帽子が流通することについては、どのような意味があるとお考えですか。
正直に申し上げると、カーディフには帽子屋さんはありませんし、帽子をかぶっていらっしゃる方も多くありません。そういう意味では、カーディフやウェールズに帽子文化が根付くように頑張らせていただくのが、私のチャレンジではないかと考えています。帽子デザイナーである私がウェールズに拠点を置いているということについても、もっともっと知られるようになりたいと思います。ウェールズには以前、バーバリーやローラアシュレイの工場があったこともあり、腕の良い職人さんは沢山いらっしゃいますし、私も含めて、ファッション業界のブランドも少しずつウェールズに拠点を移してきています。英国のアパレルやファッションに興味がある日本の皆さんには、若いブランドがウェールズにシフトしている現象も知っていただいて、ロンドンだけでなくカーディフにも、是非、着目していただけると嬉しいです。

ー どうも、ありがとうございました。

misaharada Official Web Site : https://www.misaharada.com/

 


“日本の顧客企業との関係強化で事業拡大へ”


治験薬から市販薬にいたるまで、医薬品の受託製造事業やパッケージ・ラベリング・保管・流通のサポート事業を国際的に展開しているPCIファーマ・サービス。ウェールズ貿易使節団の一員として来日した同社クリニカル・サービス部門のフランク・アンドリュー(Frank Andrew)ビジネス開発部長に、日本での事業展開方針などについて語っていただきました。

ー 日本にも多くの顧客企業があり、日本でのビジネスの歴史も長いPCIファーマ・サービスは、日本市場の担当者が年に何度か来日されていらっしゃいますけれども、貿易使節団の一員として来日された目的をお聞かせいただけますか。

PCIでは、製造部門が多くの日本企業との長年にわたるビジネス関係を築いてきており、日本市場でも一定のプレゼンスを維持してきていますけれども、クリニカル・サービス部門が日本への本格的なアプローチを行うようになったのは最近になってからです。貿易使節団の一員として来日することで、政府のサポートを受けることができますし、貿易使節団に参加している他の企業とも情報交換ができる貴重な機会ともなっていて、ウェールズ企業としての恩恵を感じています。

ー 実際に日本企業を訪問されて、どのような印象を持たれましたか。
今回は3日間で日本企業7社を訪れましたが、PCIの顧客企業でもクリニカル・サービス部門と面談を行うのは初めての方もおり、改めて、PCIの近況について説明させていただくと同時に、私が担当する部門のサービスを紹介させていただくことで、将来における相互の協力関係強化にとっての基盤を固められたと感じています。

ー PCIとして、既に協力関係にある日本の顧客企業との協力関係の拡充を目指されているわけですね。
PCIがこれまでビジネス関係を構築してきた日本企業では、製造部門の担当者が日本側のカウンターパートとなる担当者の方との人的なつながりも含めて交流を深めてきているわけですが、今回の貿易使節団の一員としての来日を通じて、日本の顧客企業との新しいパイプ作りをすることができました。これまでのPCIによる日本企業とのビジネス関係や日本市場でのプレゼンスなどを十二分に活かしながら、クリニカル・サービス部門としても日本でのビジネスを積極的に開発していきたいと考えています。

ー 日本の顧客企業でも、PCIのクリニカル・サービス部門が提供する機能へのニーズが高まっているのでしょうか。

日本の製薬会社もグローバルな事業展開を進めてきており、特に、海外の各国における新薬の治験では、薬品のパッケージ・ラベリング・保管・流通など全ての面で慎重に取り組まなければなりませんから、そうした分野でのサポートを担うPCIのクリニカル・サービス部門が提供する機能は重要性を増してきていると思います。PCIのクリニカル・サービス部門では、既に、世界の100カ国以上でそうしたサポート事業を展開してきています。

ー PCIファーマサービスとしても、そうした事業を強化されているのですか。
米国に本社を置くPCIファーマサービスは、総合的な製薬関連事業を展開しており、治験薬、市販薬の一次、二次受託製造や医薬品の包装から供給管理にいたるまで、サービス内容は多岐にわたっています。2010年代に入ってから、外国企業とのM&Aを通じた事業拡大を図る戦略を推進しており、特に、2014年にウェールズの医薬品受託製造会社であるペン・ファーマを買収して以来、PCIのメインビジネスはクリニカル、コマーシャル・サプライチェーンの分野にシフトしてきました。世界の各地域でそのシフトを強めており、日本をはじめとするアジア地域でも、その取り組みが本格化してきているわけです。PCIは、このクリニカル、コマーシャル・サプライチェーンの分野では、トップクラスのサービスプロバイダーであると自負しています。最近も、メルボルンやサンディエゴの企業を買収するなど、世界の各市場でビジネスチャンスの拡大を探っており、そうした展開の中で、成長マーケットである日本は、事業開発にとって大きな機会を見出せるものと期待しています。

ー ご自身は、どちらのご出身でいらっしゃいますか。
スコットランド生まれで、現在も、エジンバラに住んでいます。ウェールズに拠点を置く企業で働くのは初めてですが、出張が多いこともあって、エジンバラのホームオフィスで仕事をしています。会議に出席する場合など、必要な時だけウェールズの会社に行きますけれども、現在は、インターネットと電話があれば、どこにいても仕事ができる時代なので、日常的にウェールズのスタッフと接触していますから、ウェールズ的な企業文化にも徐々に馴染んでいくのではないかと思っています。

ー どうも、ありがとうございました。

PCI Pharma Services : https://pciservices.com/

|NEWS|
新国立劇場でバレエ「不思議の国のアリス」上演
スランドゥドゥノのモスティン卿が初日に観劇

 新国立劇場で11月2日から11日まで、新国立劇場バレエ「不思議の国のアリス」が上演されました。
 バレエ「不思議の国のアリス」は2011年に英国ロイヤル・バレエにより世界初演されて一大旋風を巻き起こし、2013年には来日公演が行われて全日完売して追加公演が打たれるなど、話題を集めたのは記憶に新しいところです。
 これまで世界で6団体が「不思議の国のアリス」をレパートリー化していますが、日本では新国立劇場バレエ団が唯一上演を許可され、今回が日本のバレエ団による作品の初演となりました。今回の上演は、この作品の上演経験を持つオーストラリア・バレエとの共同制作によるもので、同バレエ団と共同制作する日本のバレエ団としても新国立劇場が初めてとなっています。
 上演初日には、「不思議の国のアリス」の物語ゆかりの地として知られるスランドゥドゥノのモスティン卿が訪れ、新しい世界観が示された舞台芸術と“日本のアリス”による美しい舞を堪能しました。終演後には、アリス役の米沢唯さんを訪ね、「アリス」の物語が生まれたスランドゥドゥノなどについて懇談したモスティン卿は、「生まれて初めてのクラシックバレエ観劇」だったことを明かして、周囲を驚かせています。

|NEWS|
“misaharada AW18 collection”販売会を開催
日本橋三越でデザイナーによるコンサルティングも

 ウェールズの首都・カーディフを拠点とする帽子デザイナー・原田美砂さんの“misaharada AW18 collection”コンサルティング販売会が10月31日、東京・日本橋室町の日本橋三越本店で開催されました。
 原田さんは、英国王室御用達のミリナリーブランド「フレデリックフォックス」勤務時に、制作した帽子がエリザベス女王在位50周年記念式典のパレード用の帽子に選ばれて、日本でも話題になりました。1998年のパリコレで自らのブランド“Misa Harada London”を発表して以来、世界的にも高い評価を得てきており、2015年には東京・銀座のポーラミュージアムアネックスで個展「原田美砂『HATS OFF!』−賛美の帽子−」が開催されるなど、日本でも注目されてきています。
 日本橋三越本店で開催されたコンサルティング販売会では、別のデザイナーの帽子を買いに来た婦人に原田さんが話かけ、婦人に似合う帽子を勧めたところ、婦人はその場で購入を即決。最初は、全身真っ白にコーディネートされていた婦人が、原田さんのデザインによる青い帽子を着用して素敵に変身するといった光景も見られました。

編集後記

今年10月に来日したウェールズ政府貿易使節団は、高度製造業やクリエイティブ産業、食品、テクノロジーなどウェールズが大きな強みを持つ産業分野を象徴する企業によって構成され、今後の国際ビジネスを模索するうえで、素晴らしい成果を残しました。また、日本のバレエ団によって初演された「不思議の国のアリス」も、文化面でのウェールズの魅力を改めて印象付ける結果となっています。

次号は11月30日に発行予定です。お楽しみに!

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