人工スキー場と家族経営ホテルが日本市場に熱い視線|Wales Now Vol.50

発行日:2018. 10. 20

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“人工スキー場で楽しむスポーツ文化を日本にも”


英国をはじめ、オランダやドイツをはじめとする欧州各国やイスラエル、中国などで人工スキー場の設計・施工に携わっているMKエンタープライズ。ウェールズからのトレードミッションの一員として来日した同社のマイク・キーティング社長に、独自の人工スキー場向け素材であるプレーグラス・スキー・カーペットの開発経緯や、同社による事業展開、日本市場への期待などについてお聞きしました。

ー MKエンタープライズの事業展開について、お聞かせください。

私自身は1970年代から人工スキー場の設計・施工などに関わってきており、英国をはじめ、オランダやドイツ、アイルランド、フランスなどで、人工スキー場の建設に携わりました。その40年以上に及ぶ経験に基づいて、2010年に人工スキー場向けの素材であるプレーグラス・スキー・カーペットを開発して、北ウェールズのランルーストでMKエンタープライズを設立し、最近は、中国や台湾など、アジア市場の開拓にも取り組んでいます。

ー 独自に開発されたプレーグラス・スキー・カーペットは、どういったものなのでしょうか。
プレーグラス・スキー・カーペットは、非常に安全性の高い耐摩耗仕上げの人工スキー場用マットです。英国では、子どもたちが転んでもケガをしないように、既存の素材から切り替えた人工スキー場もありますし、最近、設計・施工に携わったイスラエルの人工スキー場では、半袖・半ズボン姿でスキーを楽しむお客さんも少なくないなど、安心してスキーを楽しめる素材であることが証明されてきています。英国内のあるスキー場では、現在まで15年以上にわたって継続使用されているケースもあり、その高い耐摩耗性も実証済みです。スキーだけでなくスノーボードの練習もできますし、幅広い年齢層のプレーヤーがプレーグラス・スキー・カーペットで技術の向上に励んできています。

ー 中国でも人工スキー場を手掛けられているそうですが、アジア市場への進出の足掛かりといったような意味合いもあるのでしょうか。
中国では、クライアントが現地の事業者を活用して施工を進め、MKエンタープライズが必要に応じて、アドバイスやコンサルティングを行う形で、事業提携を実現しました。2022年に北京で冬季五輪の開催が予定されている中国では、政府が中心となってスキーやスケート、アイスホッケーなどのウィンタースポーツ振興が図られています。五輪などの競技スキーで人工スキー場が使われることはあり得ませんけれども、例えば、リフトの周辺など関連施設で天然の雪の代わりにプレーグラス・スキー・カーペットを活用してもらえる余地もあるのではないかと考えています。冬季五輪の開催が間近に迫る中国で積極的な新規顧客の開拓に取り組み、その後のアジア市場における新たな需要創出につなげていくことができればと思っています。

ー 本国である英国でも、人工スキー場の普及は進んでいるのでしょうか。

英国では1960年代前半から、ウェールズやイングランド、スコットランドの各地域で合わせて100以上の人工スキー場が開設されました。現在も、90カ所以上で人工スキー場が運営されています。降雪量が多い北部のスコットランドには、天然の雪で滑ることができるスキー場が5カ所ありますけれども、イングランドやウェールズには殆ど雪が降りませんから、本格的な天然のスキー場はありませんので、ウェールズには現在、6カ所の人工スキー場があります。

ー 日本市場での可能性については、どのように考えていらっしゃいますか。
天然の雪で滑ることができるスキー場も沢山ある日本では、人工スキー場の可能性は未知数ですけれども、中国をはじめとするアジア各国で人工スキー場が増えていけば、日本でのビジネスチャンスも広がるのではないかと期待しています。中国のような巨大市場にはならないかもしれませんが、英国よりは潜在需要が見込めるのではないかと考えています。今回は、ウェールズからのトレードミッションのメンバーとして来日しており、人工スキー場の設計・施工に関わるビジネスパートナーとなりうる東京近郊の企業関係者に会っていますが、今後10年くらいのスパンで協働しながら日本における人工スキー場の需要開発を進めていきたいと思っています。日本には現在、約20の人工スキー場があり、特に、東京などの大都市では、屋内の人工スキー場に対する潜在需要は大きいのではないでしょうか。平日の夜などに人工スキー場でスキーやスノーボードなどの練習をして、週末や休日に天然の雪で滑るスキー場で腕試しをするような新しいスキー文化を創造することが出来ればとも考えています。もちろん、通年で人工スキー場を利用するという新たなスポーツ文化としての可能性も十分になるのではないかとも思っています。

ー ウェールズでは、そうした人工スキー場の利用も進んでいるのでしょうか。
雪が少ないウェールズの場合、まさに、人工スキー場でスキーやスノーボードの練習をして、飛行機なら2時間くらいで行くことができるスイスやフランスなどのアルプスで、実際に天然の雪の上で大いにスキーやスノーボードを楽しむという人が増えてきています。人工スキー場を利用するスポーツ文化を、ウェールズだけでなく英国全土に広げていくことができればと考えています。ハンガリーやウクライナ、ジョージアといった内陸の欧州各国でも人工スキー場を普及する可能性はあると思っていますし、11月から4月くらいまで年間に半年もスキーを楽しめるスイスやフランス、イタリアなどでも、人工スキー場があれば、1年を通じてスキーを楽しめるようになるわけですから、市場を開発する余地はあるはずです。

ー ご自身も、北ウェールズの出身でいらっしゃるのですか。
いえ、リバプール近郊で生まれたイングランド人です。でも、現在の仕事をするため、1970年代の後半にウェールズに移住しましたから、4人の子どもは皆、ウェールズ生まれのウェールズ人で、ウェールズ語と英語のバイリンガルです。

ー どうも、ありがとうございました。


“家族経営で質の高いホテルサービスを実現”


 「不思議の国のアリス」の物語の“故郷”として知られるスランドゥドゥノで、家族経営による質の高いホテルサービスで注目を集めるLCグループ。3軒のホテルを一体的に経営し、地元レストランも再生させるなど、見事な手腕を発揮しているキャロル・リンさんにお話をお聞きしました。

ー LCグループによるホテル展開について、ご説明いただけますか。

2010年にスランドゥドゥノのLauriston Court Hotelという11室のホテル経営を開始したのが、そもそものスタートです。スランドゥドゥノの有名な海外沿いの遊歩道を見下ろすホテルで、その後、ホテルのグレードアップ工事なども行い、ホテルビジネスを確立させました。2013年には、トリップアドバイザーのコンシューマー・サービス部門で“The Best in the World”を獲得して、世界的にも知られるようになり、稼働率が100%という状態になりました。それから3年間の間に、隣接するホテルと、さらに、そのホテルに隣接するホテルも購入し、3つのホテルを統合して35室のホテルグループとして経営しています。3つ目のホテルをLawton Courtと呼んでいますが、私たちの息子夫婦に、このホテルの経営を任せることにして、現在のLCブランドによるホテルグループとなりました。2015年にもトリップアドバイザーの“the best bargain hotel in WORLD”を獲得し、トリップアドバイザーの「殿堂」入りを果たしています。

ー その後の事業拡大についても、お聞かせください。
2015年には、ホテルの近所のレストランをリース契約してLawton's Cafe Grillと名付け、LC Grillとして知られるようになりました。ビジネスパートナーの協力により、LC Grillも成功を収め、トリップアドバイザーによりコンウィのナンバーワンに選定されました。2017年に経営難に陥っていたパブの所有者となり、内装を一新してLCグループ傘下のパブとして営業を始め、現在は、LC Drink and Dineとして人気を集めています。同じ2017年には、息子夫婦に経営を任せたLawton Courtも、トリップアドバイザーのコンシューマー・サービス部門で“The Best in the World”を獲得して、素晴らしい成果を達成することができました。2018年にも、ヨーロッパの“Best Value for Money”も獲得して、リーズナブルな料金で最高のサービスを提供していることが証明されました。

ー ホテルやパブが成功したポイントは「家族経営」ということでしょうか。
スランドゥドゥノという素晴らしいロケーションで、家族経営のホテルとして名声を得ることもでき、私たち自身もごく自然に微笑みながら、最高のスタンダードを実現していると自負しています。私たちの祖先がヴィクトリア時代の19世紀に、北ウェールズで11軒のホテルを所有していたこともあり、そうした血も引いているのだろうと思います。ホテルを経営してお客様をお迎えすることに喜びを感じていますし、ウェールズという地も心から愛しています。

ー LCグループとして、日本人旅行者に最もアピールしたいポイントは、どういったことでしょうか。

まず、スランドゥドゥノの中心に位置しており、北ウェールズを旅行する拠点としては、最高のロケーションにあると思います。ホテルから見える海の景観も素晴らしく、それも大きな魅力のひとつです。そして、何よりも、ホテルのスタッフが一丸となって宿泊されるお客様を心から歓迎し、お客様にお寛ぎいただけるように、チームとしてあらゆることに取り組んでいます。スタッフ全員がスランドゥドゥノや周辺を熟知していますので、お訊ねいただければ、知り得る限りの情報を提供することができます。もちろん、駐車場は完備されていますし、すぐ近くに直営のレストランやパブもあります。

ー 日本人のお客様の利用も多いのでしょうか。
まだ、日本人のお客様は年間を通じても数えるほどですけれども、逆に、日本人旅行者の皆様には、是非、見つけていただきたい「隠れ家」的な存在でありたいと考えています。

ー 日本人旅行者や日本人宿泊客には、どのような印象を持っていらっしゃいますか。
私たちのホテルでお迎えした日本人宿泊客のみなさんは、とても礼儀正しく、また、受け入れる側の私たちに対しても親切でいらっしゃいます。ホテルが提供する高いスタンダードのサービスを評価してくださり、また、私たちがお勧めしているウェールズ文化も楽しんでいただいています。

ー ウェールズの魅力については、どのようにお考えになっていますか。
やはり、美しい丘陵や山々、そして、素晴らしい古城など、豊かで多様な魅力に溢れていると思います。海岸線も素敵な雰囲気ですし、ビーチの美しさも言葉に言い表せないほどです。山々には山岳列車が走っていますし、海には埠頭や桟橋が伸びています。ウェールズで昔から話されていたウェールズ語は、今も人々の生活の中で使われていますし、男性コーラスも世界に誇るべきものです。ラグビーのウェールズ代表を応援する国民の熱狂ぶりは、他では見られないものではないでしょうか。テストマッチが始まる前にスタジアム全体を包み込むウェールズ国歌の斉唱には、誰もが感動するはずです。ウェールズは食べ物もおいしく、素敵なレストランやビストロで地域の食材を使った食事を味わったり、親しみに溢れたパブで地元のお酒を心ゆくまで堪能したり、その楽しみは尽きません。

ー “Wales Now”の読者の皆さんに、メッセージをいただけますか。
もし、まだ、ウェールズをその目でご覧になっていらっしゃらないとすれば、それは、本当に勿体ないことです。ウェールズに住んでいる地元の人々は、皆、それぞれに自分たちの暮らしを楽しんでいますから、是非、その様子もご覧いただきたいと思います。人々をはじめ、ウェールズという国の持つパワー、その情熱、その美しさ、その誇りを感じ取ってください。もちろん、レッドドラゴンも忘れずに!!

|NEWS|
駐日英国大使館で懇親レセプションを開催
ウェールズ企業7社がトレードミッションで来日

 ウェールズ政府日本代表事務所は10月15日、東京・一番町の駐日英国大使館で「ウェールズ・トレードミッション懇親レセプション」を開催しました。
このレセプションは、ウェールズ企業7社によって構成されるトレードミッションの来日に合わせて開催されたもので、ウェールズ企業とのビジネスチャンス開拓を目指す日本側の関係者などが出席し、活発な情報交換や商談が行われています。

 今回のトレードミッションで来日したのは、カーディフで成人/ジュニア向けの通年スクールを、北ウェールズではジュニア向けにサマースクールを開校しているCeltic English Academy、43年以上溶接パージ機器の開発・設計・製造に携わってきたHuntingdon Fusion Techniques、エレガントなデザインで瞬く間にファッション・帽子業界で注目され、世界15ヵ国・100店舗以上で展開するMisa Harada Millinery Ltd、欧州各地の人工スキー場で採用され、安全性の高い耐摩耗仕上げの人工スキー用マットを製造・販売するMK Enterprises (UK) Ltd、臨床試験の世界をリードするグローバル企業のパートナーであるPCI Clinical Services、魅力的なコース内容で生徒に語学スキルを身につけさせるTEG English Cardiff、創業以来70年以上の歴史を持ち、漁業を通じて漁獲された甲殻類のサプライヤであるThe Lobster Pot (Anglesey) Ltdの7社です。
“Wales Now”では、今号から、来日した各企業の代表や担当者などへのインタビュー記事を通じて、順次、紹介していきます。

|NEWS|
東京と姫路で旅行業界関係者を対象にセミナー
コンウィ城と姫路城の姉妹城提携に向けて実施

 北ウェールズのコンウィと兵庫県姫路市が今年4月にコンウィ城と姫路城の姉妹城提携を結ぶことで基本合意したのを受けて、9月26日と27日の両日、東京都内と姫路市で旅行業界関係者を対象とするセミナーが開催されました。
 9月26日に東京・霞が関の日本旅行業協会(JATA)研修室で開催されたセミナー「北ウェールズ・コンウィ&姫路Twinning観光セミナー」では、北ウェールズ観光局のジム・ジョーンズ局長が、JATAによる「ヨーロッパの美しい村30選」に名前を連ねたコンウィと「美しい街道・道20選」に選定された「不思議の国古城街道」について説明しています。
 9月27日には、姫路市のホテル日航姫路でも「姫路&コンウィ姉妹観光セミナー 」が開催され、姫路市観光局の和田達也局長、公益社団法人姫路観光コンベンションビューローの森田俊司専務理事なども出席。第1部のアウトバウンド観光セミナーで、ジョーンズ局長が同様の説明を行ったのに続き、第2部のインバウンド観光セミナーでは、姫路市の観光プロモーションなどについてプレゼンテーションが実施されました。また、セミナー後には、姫路城の視察も行われています。
コンウィと姫路市は、何れも世界文化遺産であるコンウィ城と姫路城の姉妹城提携を通じて、古城をテーマにしたイベントなどを実施して相互に観光振興を図る方針で、今年7月には姫路市の石見利勝市長がコンウィを訪問してコンウィ側と「持続可能な観光の推進」などを盛り込んだ姉妹城提携の覚書を取り交わしています。
今回のセミナーは、ウェールズと姫路の観光を共同でPRする取り組みの第1弾として位置づけられるもので、日本でラグビーワールドカップが開催される来年秋を目途に、姉妹城提携の調印が行われる予定です。

編集後記

医薬品開発・臨床試験から語学教育、ロブスターにいたるまで、様々な産業分野を代表するウェールズ企業によって構成されるトレードミッションが来日し、日本側のパートナー事業者との国際ビジネス展開を目指して、積極的な商談活動や情報交換などを行っています。今号では、オリジナル素材を開発して人工スキー場の設計・施工に携わる北ウェールズの企業を紹介しましたが、次号以降も順次、トレードミッションに参加した企業の関係者へのインタビュー記事を通じて、ウェールズ・ビジネスの“今”をお伝えします。

次号は10月30日に発行予定です。お楽しみに!

バックナンバー一覧

ページ上部へ戻る