“不思議の国”の存在感を十二分に示した「ウェールズ月間」|Wales Now Vol.49

発行日:2018. 10. 4

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“姉妹城提携の礎となるタペストリーを創作”


アパレル製品やインテリア用品などの生地をデザインするテキスタイル・デザイナーとして活躍するゲシン・ヒューズ氏。まだ、20代半ばという若さながら、斬新でユニークな発想と作風は、ラグジュアリーファッション界でも高く評価されています。コンウィ城と姫路城による「姉妹城提携」を象徴するタペストリーの製作も任された新進気鋭のヒューズ氏に、作品づくりへの思いなどをお聞きしました。

ー テキスタイル・デザイナーとしてのキャリアについて、教えていただけますか。

カーディフ大学のアート・デザイン・スクールで修士号を取得し、女性用スカーフ・デザインの仕事をした後、羊毛製造で知られるイングランド北部のハリファクスにある絹織物企業で伝統的な絹製品の素材開発なども担当しました。現在は、母のミドルネームである“Wilding”というブランドを立ち上げて、北ウェールズやイングランド北部の高級ブティックなどでデザインした製品を扱ってもらっています。

ー コンウィ城と姫路城の姉妹城提携を象徴するタペストリー製作については、どのようにお考えになっていますか。
単なるタペストリーの製作ではなく、コンウィと姫路という英国と日本の地域同士の新たなパートナーシップや友情を表すと同時に、双方の文化も反映するような作品を創造したいと思っています。コンウィ城と姫路城は何れも世界文化遺産に登録されていて、どちらも中世にまで遡る長い歴史を持つ素晴らしい城です。姉妹城提携を通じて、偉大な文化遺産を継承するために、観光や教育、文化など様々な面で協力も進められると聞いています。相互の往来も拡大していくと思いますから、将来にわたる交流の礎となるような作品に出来たらと考えています。

織物03

ー これまでも、日本と関わる仕事をされたことはあるのでしょうか。
いいえ、これが初めてです。繊維産業の長い歴史や奥深い織物文化を持つ日本と関わる仕事が出来ることを、心から嬉しく思っています。しかも、コンウィ城と姫路城の姉妹城提携というとてもエキサイティングなプロジェクトに参加させていただけるのは、本当に光栄なことです。これまでも、素材デザインなどの過程で日本のシルク生地には何度も触れてきていますけれども、その絹製品の素晴らしさには、いつも感嘆しています。常に新しいアイデアが盛り込まれていて、将来への可能性も強く感じさせてくれるものです。

ー 日本にいらっしゃったことはありますか。
日本に行ったことはありませんが、今回のプロジェクトの中で、訪れるチャンスがあるかもしれません。日本の繊維産業や織物文化を肌で感じることができたら、本当に嬉しいだろうと思います。ただ、日本の繊維や織物については、多くの書物を読んできましたし、日本の作品を5万点以上も所蔵している芸術・デザイン分野専門の「ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館」のアジアセクションでもリサーチなどを行いました。ヨーロッパで最大規模の日本製繊維コレクションを持つ博物館での調査研究は、大いに勉強になりました。

ー 今回の姉妹城プロジェクトに関わる前から「姫路」や「姫路城」のことはご存知でしたか。
姫路城という認識はありませんでしたが、ジェームズ・ボンドが活躍する“007”シリーズの映画で舞台になった立派なお城のことは覚えていたので、それが姫路城だったということを、今回、初めて知りました。ショーン・コネリーが主演の作品は1960年代の公開ですから、もちろんリアルタイムでは見ていませんけれども、家族が“007”シリーズの映画を何度も楽しんでいたので、瞼に焼き付けられています。

ー コンウィ城については、どのような思いをお持ちですか。
実は、祖母がコンウィで夏を過ごす人だったので、子どもの頃は夏休みになると家族で祖母の元を訪ねていました。もちろん、コンウィ城はコンウィのシンボルとして誰もが知っている存在ですけれども、その風景は個人的にとても懐かしいもので、家族の記憶とともにある大切な存在と言えるかと思います。

ー ご出身は、どちらですか。
北ウェールズにあるDenbighという小さな町ですが、11世紀まで歴史を遡る古い町で、かつては、200年近くにわたってウェールズの皇太子が住む場所だったこともあり、北ウェールズの拠点として重要な役割も担っていました。近郊には美しい山々や渓谷もあり、素晴らしい自然に囲まれていて、小さいけれどもとても温かいコミュニティで育ちました。

ー 日本の読者の皆さんにメッセージをいただけますか
繰り返しになりますけれども、コンウィ城と姫路城の姉妹城提携は、偉大な文化遺産の継承という大きなテーマに基づいて、相互の協力や交流を深めようという素晴らしいプロジェクトです。ウェールズと日本の絆を強めて、お互いの明るい未来を切り開くものでもあると考えていますので、是非、今後の展開にも注目していただければと思います。

ー どうも、ありがとうございました。


“IPL(光エネルギー)脱毛器のパイオニアとして日本市場を開拓”


IPL(光エネルギー)脱毛器の分野で世界のパイオニアとして最先端を走り続けるウェールズのサイデン社は昨年3月、日本市場への本格的な参入を実現しています。日本法人であるサイデン株式会社の市原佳奈代表取締役に、同社製品の特長や今後の販売計画などについて語っていただきました。

ー サイデン社について、簡単にご説明いただけますか。

ウェールズのスウォンジーで、2002年に設立されました。もともと、スウォンジー大学で英国政府との産学連携により医療器具の開発を行っていた研究者が、ある時、デバイスのレーザーが照射された肌の一部だけ毛が生えてこなくなるという発見をして、脱毛器だけを開発・販売する会社として創業されたと聞いています。スウォンジー大学は、技術開発を積極的に進めていることで知られているそうですが、そういう環境だからこそ、医療器具の研究・開発というプロセスで光エネルギーによって毛の成長を止められるという偶然の発見が生まれたようです。

ー 家庭で利用できるIPL脱毛器も、創業当初から生産されていたのですか。
会社が設立された当初は、世界的なブランドで知られる大手メーカーへのOEMビジネスにより、ウェールズにあるサイデン工場のラインで家庭用脱毛器が生産されていました。ただ、OEM生産には一定のリスクも伴うことから、2006年に英国で全国展開しているブーツとのコラボレーションにより、家庭でも安心して使える脱毛器として「スムーズスキン」というブランドで製品を販売しました。この英国の大手企業との連携によって、ヨーロッパでの「スムーズスキン」の認知度も向上していくことになっていきます。

ー 日本法人が設立される前に、日本市場でも製品は販売されていたのでしょうか。
日本市場では当初、イギリス本社からある商社に製品を卸す形でビジネスが始まり、家電量販店などで販売されていました。一定の販売実績を残すことができたので、ウェールズのサイデン本社としても、日本市場でのポテンシャルを見い出す結果につながったようです。英国以外で法人を立ち上げたのは日本が初めてで、2016年の夏に私がサイデンに入社して、会社の設立準備を担当することになりました。

ー 初年度の販売状況はどうだったのでしょうか。
かなりオンラインに特化する形で販売を行い、ネットショッピングの最大手サイトに「スムーズスキン」を出店しましたが、3カ月くらいは苦戦したものの、ブランド認知をSNSなどで上げていきながら、販促を実施したところ、1日で300本くらい売れました。家電量販店での展開も最初から行っていますが、製品の中心購買層である若い女性たちは、家電量販店にはあまり行かないので、競合する美容機器のカテゴリーで認知度の高いメーカーとは異なるアプローチも心掛けてきています。

ー 具体的には、どういったアプローチをされているのでしょうか。
オンラインでディスカウントにより販売を拡大するという手法は、ヘルシーなビジネスモデルではありませんから、美容感度の高いオーディエンスに照準を合わせて、販売チャネルを強化するような方向性を目指しています。具体的には、4月からヘアサロンに製品を卸すビジネスをスタートしました。日本全国には、コンビニの4倍と言われる20万店ものヘアサロンがあります。特に、狙い目ではないかと思っているのが、東京や大阪、名古屋などの大都市圏ではなく、地方にあるヘアサロンです。地方のナンバーワンサロンがあるエリアには、ほとんど脱毛サロンがなく、家電量販店も車で20〜30分かかります。でも、ヘアサロンとしての売り上げは良いわけですから、ヘアサロンで家庭でケアできる脱毛器を見たり、体験してもらったりして、まずはブランドを知っていただくというモデルです。時間はかかるかもしれませんけれども、販売チャネルとしては可能性を感じており、オンラインとリアル店舗のバランスをとりながら、販売を伸ばしていければと考えています。

ー 日本市場の将来性は大きいというわけでしょうか。
そうです。化粧品のマーケティングやブランディングを長年にわたって担当してきましたが、日本の美容ラグジュアリーブランド市場は世界規模でも大変大きく、美容マインドの高い日本では、ビューティギアの潜在需要も大きく、美肌を叶える脱毛器、あるいは、サイデンの技術力によって光エネルギーを活用した美顔器の開発などにも商機を見出せるかもしれません。美容に対する意識の高い日本市場で成功した製品は、アジア各国に波及する力を持つことにもなります。

ー 本社のあるウェールズについては、どんな印象を持っていらっしゃいますか。
サイデンに入社した後、研修で1週間ほどスウォンジーに滞在しましたが、テクノロジーやイノベーションが盛んな街なんだなぁという印象を持ちました。本社もアットホームな感じで、リラックスした環境でブランドの開発力・哲学を学ぶことができました。以前働いていたフランスの会社は、非常に官僚的な雰囲気で、複数のブランドを持っていたため、社内での競争も厳しかったのですが、サイデンでは、一つのブランドでIPL脱毛器という一つの製品に特化して、社員全員が一つの方向で一所懸命にやっている雰囲気を心地よく感じています。2週間に1回ほどスカイプミーティングをしていますが、こちらの考え方に対して直ぐにリアクションしてもらえる距離感の近さもあります。日本向けに出荷される製品に特化した独自のデザインなども提案し、それが採用されるというジャパンモデル的なビジネスも始まっており、今後は、日本市場での成功が本社にフィードバックされて、世界的に広がっていくという展開もあるかもしれません。

ー どうも、ありがとうございました。

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|NEWS|
展示ブースと業界向けセミナーで“ウェールズ”をアピール
来場者20万人超の「ツーリズムEXPOジャパン2018」に今年も出展

 英国ウェールズ政府は、東京・有明の東京ビッグサイトで9月20日から23日までの4日間にわたって開催された「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2018」に、連合王国(UK)の構成国としては唯一「ウェールズ」として単独ブース出展しました。
9月22日には、TEJの旅行業界向けプログラムであるプロフェッショナルセミナーの一つとして「不思議の国ウェールズ 古城街道」も実施して、満席となった会場の旅行業界関係者に直接、“英国の中の隠れ家 ウェールズ”の魅力を伝えています。

 ウェールズによるTEJでの出展は今年が3回目でしたが、今回は初めてウェールズ政府本部からウェールズ観光局マーケティング担当のローリ・ジョーンズが来日。4年目に入った日本でのウェールズによる本格的な観光プロモーションがスタートする契機となったプロジェクトである日本旅行業協会(JATA)による「ヨーロッパの美しい村30選」を企画するなど、日本での海外旅行市場にウェールズの地位確立をサポートした菊間潤吾JATA副会長とも面談し、2015年から継続しているコンウィを中心とするウェールズのプロモーションへの激励を受けました。
JATAによると、JATAチームヨーロッパの主要旅行会社が造成したグループツアーでコンウィを訪れた日本人旅行者数は、2018年上半期だけで3800人に達する見通しで、日本からの送客実績がなかった2015年当時に比べると、飛躍的な増加を遂げています。
4日間で過去最高の20万7352人が来場したTEJ2018の展示会場では、ウェールズがブース出展したヨーロッパエリアも連日多くの来場者で賑わい、「昨年ブースで話を聞き、早速コンウィへ行ってきました」といった声が多かったのに加え、「来週からウェールズで3泊するグループツアーで添乗に行くので資料をください」という旅行会社の担当者もブースを訪れるなど、これまでのプロモーションの成果が実感される出展となりました。
また、今回が4度目の来日となった北ウェールズ観光局のジム・ジョーンズ局長も、「ヨーロッパの美しい村30選 コンウィ」と「ヨーロッパの美しい街道20選 不思議の国の古城街道」をプロモーションするため、大きな赤いドラゴンのマスコットとともにウェールズのブースで来場者への対応などのサポートを行っています。

|NEWS|
RWC開催や姉妹城提携で旅行者増加を期待
旅行業界関係者など招いてレセプション開催

ローリ・ジョーンズ

英国ウェールズ政府は9月19日、旅行業界関係者などを招いて東京・東新橋のロイヤルパーク汐留で「不思議の国ウェールズ観光レセプション」を開催しました。レセプションには、来年のラグビーワールドカップ(RWC)でウェールズ代表チームの試合会場となる熊本・大分両県の関係者や“美食のウェールズ”をサポートする江上料理学院の江上栄子学院長なども駆けつけています。
一昨年と昨年に続いて、9月20日から開幕した「ツーリズムEXPOジャパン2018」に出展したウェールズ政府観光局からは、マーケティングを担当するローリ・ジョーンズ氏が初来日。ジョーンズ氏はレセプションで、「旅行業界の皆さんの協力により、日本マーケットにおけるウェールズの存在感も高まってきて、実際にウェールズを訪れる日本人旅行者も増えており、心から感謝している」と挨拶。
ジム・ジョーンズ北ウェールズ観光局のジム・ジョーンズ局長も、「これが4回目の来日となるが、初めて日本に来た頃はウェールズや北ウェールズへの日本人旅行者は少なかったものの、3年前に日本旅行業協会(JATA)の『ヨーロッパの美しい村30選』で北ウェールズのコンウィが選定されてから、日本人旅行者が飛躍的に増加した」と指摘。「来年開催されるラグビーワールドカップ(RWC)に向けて、出場するウェールズ代表チームやウェールズの紹介などメディアでの露出が増え、さらに旅行者が増加することも見込まれる」と強調しました。
また、コンウィと姫路市は今年7月、何れも世界文化遺産であるコンウィ城と姫路城の姉妹城提携で基本合意しており、RWC開催期間中の来年秋に日本で正式調印が行われることも予定されていることから、ジョーンズ局長は「ウェールズと日本の相互交流も拡大するだろう」と期待を示しています。

|NEWS|
『トラベルWatch』がウェールズ政府によるブース出展を掲載

旅を楽しむためのニュースを毎日配信している『トラベルWatch』(https://travel.watch.impress.co.jp)に、英国ウェールズ政府が「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2018」にブース出展したことを伝える記事が掲載されました。
この記事では、日本旅行業協会(JATA)による「ヨーロッパの美しい村30選」と「ヨーロッパの美しい街道20選」で、世界遺産の古城で知られるコンウィと“不思議の国ウェールズ古城街道”が相次いで選定され、ウェールズを訪れる日本人旅行者が急増していることなどを紹介しています。

「英国ウェールズ、『美しい村30選』『美しい街道20選』への選出で日本人観光客が急増中」
https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1144102.html

編集後記

20万人を超える過去最高の来場者を集めた「ツーリズムEXPOジャパン2018」に3年連続で出展した英国ウェールズ政府は、その会期中をはじめ、前後する期間も合わせてレセプションやセミナーを相次いで開催し、9月はさながら「ウェールズ月間」となりました。次号では、東京と姫路で実施されたセミナーの様子を詳報します。

次号は10月15日に発行予定です。お楽しみに!

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