ウェールズと日本を結ぶ技術交流の新たな可能性に期待|Wales Now Vol.46

発行日:2018. 8. 14

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“日本企業との協力により住宅不足の解消を目指す”


東京で開催された「英国ウェールズ住宅産業ワークショップ」に参加するため、スウォンジーの住宅開発会社であるコースタル・ハウジング・グループのギャレス・デイビス開発部長が来日しました。ウェールズをはじめ英国で深刻化する住宅不足問題の解消を図るため、日本の住宅産業との連携を目指すデイビス開発部長に、ウェールズの住宅事情や日本の住宅産業の印象などについてお話をお聞かせいただきました。

ギャレス・デイビス開発部長

ギャレス・デイビス開発部長

ー 今回の来日目的を教えてください。
プレハブ建築やツーバイフォー建築の業界団体などで構成される一般社団法人・住宅生産団体連合会の傘下組織に加盟する会員企業の皆さんなどとのワークショップに参加すると同時に、日本の住宅関連企業などを訪問するため日本に来ています。以前、日本での航空便乗り継ぎで空港近辺のホテルに宿泊したこともありますけれども、実質的な来日は今回が初めてということになります。英国では住宅不足問題が深刻化しており、ワークショップへの参加や企業訪問などを通じて、問題の解決を図るために日本の住宅産業との連携を進めることができればと考えています。

ー 英国の住宅不足問題について、その現状を詳しく説明していただけますか。
現在、ウェールズでも住宅不足問題が深刻化していますけれども、英国全体の住宅不足問題もウェールズと似たような状況になっています。大きな住宅需要が存在しているにも関わらず、迅速に住宅をつくることができないため、住宅の需給関係が逼迫するという事態が発生しているのです。英国の住宅建設は伝統的な時間がかかるやり方のままであるのに加えて、建設業界の労働者数も減少してきていることが、事態を悪化させる結果を招いています。コースタル・ハウジング・グループでも様々なパートナーと密接に協力しながら仕事に取り組んでおり、地域における問題の解決に向けて、スウォンジー大学との共同プロジェクトなども進めていますが、住宅のプレハブ・ユニットを工場で生産している日本の住宅生産メーカーから最新の技術を取り入れることが出来ればとも考えています。

【参考】Wales Now Vol.20 「スウォンジー大学の革新的な技術」

ー なぜ、日本の住宅生産メーカーをパートナー候補として重視されているのですか。
日本の住宅生産メーカーは、既に長年にわたって工場でプレハブ・ユニットを製造してきています。欧州にも、同様の素材を供給する企業がないわけではありませんけれども、やはり、このプレハブ・ユニットの製造分野では、日本企業に一日の長があり、日本のメーカーがフロントランナーとして位置づけられると思いますから、日本でパートナーを見つけて最新の技術を導入することができないかと考えたわけです。英国では、電機産業や自動車産業などの分野でも日本のメーカーが高い評価を受けてきており、住宅産業においても日本から学ぶべきことは少なくないだろうと思っています。実際に日本の国内市場では、日本の住宅生産メーカーは工場でプレハブ・ユニットを製造して、建築現場で組み立てるというプロセスを通じて住宅を供給するというやり方で、大きな成功を収めてきているわけです。

ー 欧州にも日本の住宅生産メーカーと同じようにプレハブ・ユニットを供給する企業もあるようですが、日本でのパートナー探しの背景には、英国によるEU離脱という動きを意識されている部分もあるのでしょうか。
これまでも英国を中心に様々な企業とのパートナーシップ関係の構築は模索してきていますし、欧州各国における色々な事例やベストプラクティスについても調査・研究をしてきていますから、今回の来日も、特に、英国によるEU離脱を意識しているものではないと思っています。何れにしても、今回の来日によって得られた成果は、今後の展開に資するものとなっていくと考えています。

ー 「実質的な初来日」ということですが、日本にはどのような印象をお持ちになりましたか。
とても魅力的な国だと思います。ワークショップやビジネスミーティングでの自己紹介の仕方もユニークですし、お互いに敬意を払いながらじっくりと話し合いをしていただき、ビジネスミーティングの雰囲気はとても穏やかで忍耐強いものでしたし、何よりも、とてもフレンドリーで親切な態度が強く印象に残っています。英国でのビジネスミーティングなどとは全く違う雰囲気で、とても魅力的かつ興味深いものでした。英国に戻ってからも、今後のビジネスミーティングなどの参考にさせていただきたいと思っています。私の会社は非常に小さい規模ですけれども、英国の住宅産業や住宅市場に興味・関心を持っていただいた日本の企業とは、良好なパートナーシップを構築していけるように努力したいと考えています。

コースタル・ハウジング・グループによるプロジェクト

移転した小学校の校舎をアパートとして再開発したコースタル・ハウジング・グループによるプロジェクト。同グループは現在、5500戸におよぶ住宅の所有・管理・賃貸を行っており、年間の新規住宅建設は200~300戸を数えています

ー ご自身は、ウェールズのどちらのご出身でいらっしゃいますか。
ウェールズ南岸部で、カーディフとスウォンジーのちょうど中間くらいに位置しているブリジェンド(Bridgend)という小さな町です。その後、西ウェールズの田舎町で育ちましたけれども、現在は、ブリジェンドに住んでいます。

ー ウェールズ語は話されますか。
ほんの少しですが、話せます。両親はウェールズ人なのですが、父親が英国海軍の軍人だったため、イングランドを転々としていた時期も長かったので、残念ながら学校でウェールズ語の勉強はしていません。

ー ご家族とご趣味を教えてください。
妻との間に15歳と10歳の二人の息子がいます。走ることが趣味で、サイクリングやスイミングも好きです。ロンドン、ニューヨーク、ベルリン、パリ、ダブリンなどのマラソン大会では、フルマラソンを走ったこともありますし、北ウェールズのスノードン・マラソンにも参加しました。次に来日する時期は分かりませんが、日本のビジネスパートナーと仕事が出来るようになったら、出張のためだけでなく、家族を連れて日本を旅行できればとも思っています。東京マラソンも、ぜひ、走ってみたいと思っています。

ー どうも、ありがとうございました。


“楽しい学生時代を過ごしたウェールズは「心の故郷」”


上智大学で30年以上にわたって英語を教え、日本ウェールズ協会のメンバーでもいらっしゃるクリストファー・バーネットさん。もともとイングランドのご出身ですが、学生時代を過ごしたウェールズは「心の故郷」というバーネットさんに、ウェールズへの思いや魅力を語っていただきました。

クリスバーネットさん

クリストファー・バーネットさん

ー 最初に来日されたのは、いつでいらっしゃいますか。
日本に初めて来たのは昭和52年でしたから、1977年のことです。もう、40年も前になってしまいました。当時は、旅行者として来日したのですが、ストリートパフォーマーとしてフォークミュージックを路上で歌っていました。新宿駅東口に近い歌舞伎町の辺りとか、渋谷のセンター街などで、アンプは使わずにアコースティックギターを使って、当時流行っていたジョン・デンバーをはじめとするフォークミュージックやビートルズ、ボブ・ディランなどを歌っていたものです。当時、僕は20代の後半でしたが、英国から世界旅行に出発して、アジアでは、イラン、アフガニスタン、インド、パキスタン、タイ、香港などを回ってから日本にやってきて、半年くらい路上でフォークミュージックを歌ってお金を稼いで、また、フィリピンなどへ旅行に出かけました。僕が歌っていた頃は、外国人のストリートパフォーマーはほとんどいなかったので、珍しがられたこともあって、お金もかなり稼ぐことができました。

ー 日本に住まわれるようになったのは、どういう経緯だったのでしょうか。
二度目に来た時に、日本人の女性と出会って結婚することになったのです。ストリートパフォーマーでは収入が安定しませんから、ちゃんとした仕事でお金を稼がなければならないので、色々なところで英語を教えるようになり、1983年に上智大学の先生として職を得ました。それまでの間に、日本でストリートパフォーマンスを行うセミプロのような外国人も少しずつ増えてきて、僕は基本的にアマチュアですから、止めた方がいいと考えたということもあります。

ー ご出身はウェールズのどちらでいらっしゃいますか。
僕はもともとロンドン生まれで、イングランド人です。ウェールズにとっては敵の国の人間ということになります。でも、ウェールズ大学に入って、アベリストウィス校という田舎の町で勉強しましたから、とてもウェールズ的なところで学生時代を過ごすことになりました。今の若い人風に言うと「チョー辺鄙なところ」だったので、日常生活ではウェールズ語を使う人の方が多くて、町中では英語は聞こえず、ウェールズ語が飛び交っているような状況でした。僕も少しウェールズ語を勉強したのですが、とても気に入ったのを覚えています。それから、先生の免許を取るために、カーディフの大学院に行ったのですが、卒業した後は、残念ながらウェールズとのコネクションは全くなくなってしまいました。

ー 日本に来てから、改めて、ウェールズとの縁が復活したのですか。
そうなんです。たまたま、日本でウェールズ大学アベリストウィス校出身の人と知り合って、彼がウェールズ語を教えるサークルを作ることになり、僕も仲間に入れてもらったのです。それが、1990年頃のことだった思いますが、これを契機に、僕のウェールズ語に対する興味も甦ってきたのです。さらに色々とウェールズへの関心が高まっていく中で、日本ウェールズ協会のメンバーにもなりました。ウェールズ語を教えるサークルを作った先生は帰国することになってしまい、他にウェールズ語を話せる人がいなかったため、僕がピンチヒッターで教えることになりました。30年以上も勤務した上智大学は4年前に退官して、その後、非常勤で教えていましたが、今年3月でその仕事も終わり、現在は、ウェールズ語のサークルで月に1度、ウェールズ語を教えています。

ー 日本在住期間も40年近くに及ぶわけですが、ウェールズには頻繁に行かれているのですか。
大学の先生だったころは、妻と一人娘と一緒に時々、ウェールズに行っていました。僕の父は英国空軍に勤務していたので、転勤も多く、僕にとって故郷と言える場所はないのですが、学生時代を楽しく過ごしたウェールズは「心の故郷」だと思っています。特に、毎年8月の初めにウェールズ各都市の持ち回りで開催される“Eisteddfod”という「ウェールズ国民文化祭」的なイベントもあるのですが、僕はこの文化祭が大好きで毎年一人で行くようになりました。音楽のコンサートや映画、演劇のコンペティションなどもあり、ウェールズ各地からはもちろん、世界各国に住んでいるウェールズ人も、沢山来ていて、顔なじみになっている人も何人かいるので、毎年、楽しみにしています。

ー ウェールズの最も大きな魅力として、どんなことを感じていらっしゃいますか。
まず、最初に美しい自然です。自然景観、特に、山の風景は、本当に素晴らしいと思います。そして、やはり、ウェールズ語です。ローマ帝国の時代には、既にウェールズ語は存在していたようですから、英語よりも長い歴史を持つ言語なんです。ケルト文化の中でも、ウェールズの特異性や独自性を強く感じられるのは、現在も生活の中で使われているウェールズ語の存在が大きいのではないでしょうか。イングランド人の僕でも、ラグビーの試合前に皆で一緒に大きな声でウェールズ語でウェールズ国歌を歌うと、本当に気持ちが盛り上がります。日本の皆さんにも、ウェールズの素晴らしい自然景観とウェールズ人の魂を感じることが出来るウェールズ語を体感してもらえるように、是非、ウェールズを訪れていただきたいと思います。

ー どうも、ありがとうございました。

|NEWS|
日本の官民関係者に市場性の高さなどを紹介
「英国ウェールズ住宅産業ワークショップ」開催

「英国ウェールズ住宅産業ワークショップ」が8月6日、東京・六番町の一般社団法人・住宅生産団体連合会(住団連)で開催されました。
住団連は、プレハブ建築協会や日本ツーバイフォー建築協会、日本木造住宅産業協会、新都市ハウジング協会など、低層住宅を建設する業界団体を中心に、中高層住宅から住宅設備機器類関連にいたるまで、幅広い団体で構成される組織です。税制・金融・補助・規制などに関する調査・研究や提言、産業界・消費者・メディアに向けた情報発信とともに、主要国との積極的な国際交流も行っている団体で、今回のワークショップでは、ウェールズの研究機関や住宅開発会社の担当者らが、英国における住宅事情や住宅産業について紹介し、日本企業にとってのビジネスチャンスの見通しなども説明しました。
今号のインタビュー記事に登場しているコースタル・ハウジング・グループのギャレス・デイビス開発部長は、「日本の住宅生産関連企業や住宅産業を所管する官庁の皆さんに英国の住宅事情について理解を深めていただき、ウェールズの住宅産業や住宅市場への関心を持っていただくことができた」と語り、今後のウェールズと日本の間における住宅生産に関わるパートナーシップ構築や相互協力の進展への期待を示しています。


パレードにウェールズ代表応援団が登場
北九州市の「わっしょい百万夏まつり」

北九州市で8月4日と5日の両日に開催された「わっしょい百万夏まつり」のハイライト「わっしょいパレード」で、“ラグビーワールドカップ・ウェールズ代表応援団”が登場しました。
日本で来年開催されるラグビーワールドカップに出場するウェールズ代表チームは、北九州市でキャンプを実施することが決定しています。北九州ラグビーフットボール協会では、同市内と近郊のラグビースクール生や父兄をはじめラグビーファンに「わっしょいパレード」でウェールズ国旗を持って参加するよう呼びかけ、ウェールズからもウェールズラグビー協会のスタッフ8人が来日して、パレードに参加しました。
交流プログラム「わっしょいパレード2018」の表彰では、“ラグビーワールドカップ・ウェールズ代表応援団”が2位に当たる「百万賞」を受賞するなど、パレードを大いに盛り上げています。
北九州市では、ウェールズやラグビーワールドカップへの地域的な関心と盛り上げ機運の醸成に向けて、世界最高レベルと言われるウェールズ代表チームとウェールズラグビー協会の全面的な協力により、交流プログラムを実施。既に、地域の子どもたちを対象とするラグビークリニックなども行われており、市民との交流も深まっていることから、今回のパレード参加も実現しました。
「わっしょい百万夏まつり」には、福岡県の小川洋知事も駆けつけ、ウェールズから来日したラグビー協会のスタッフとも懇親を深めています。

編集後記

かつては「ウサギ小屋」と揶揄されたこともあり、必ずしも豊かとは言い難い日本の住宅事情ですが、工場量産住宅(プレハブ住宅)の分野では世界的にも稀有な成功市場となりました。住宅不足が深刻化している英国では、問題解決の鍵として日本のプレハブ工法も注目されており、新たな技術交流の可能性に期待も高まります。

次号は8月31日に発行予定です。お楽しみに!

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