世界に羽ばたくウェールズのイノベーションパワー|Wales Now Vol.45

発行日:2018. 7. 31

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“ポータブル・リフティング器械で日本市場に進出”


アルミニウム製の軽量で強固なポータブル・リフティング器械を考案し、その企画・開発力に基づくユニークな製品が英国と欧州で順調に市場を拡大しているリード・リフティング(Reid Lifting)。市場視察などのために来日した同社のニック・バッターズビー(Nick Battersby)社長に、同社製品の特長や日本市場での可能性などについてお話をうかがいました。

ニック・バッターズビー(Nick Battersby)社長

ー リード・リフティング社について、ご説明いただけますか。
1996年に設立されたポータブル・リフティング器械の企画・開発・製造を行う会社で、本社はウェールズのチェプストウにあり、現在の従業員数は49人です。ポータブル・リフティング器械の分野にイノベーションを起こしたパイオニア企業として知られています。

ー 日本では既に、ビジネスを展開されていらっしゃるのですか。
2013年にウェールズからのトレードミッションの一員として来日し、日本市場における製品販売の可能性について調査を行い、ユーザー向けにリフティング商品を販売している複数の日本企業とも商談をさせていただき、製品に関心を持っていただくことができました。その時には、業界団体のメンバーともお会いしたり、日本市場での製品流通を担っていただけそうな会社も訪問してお話もさせていただきましたが、まだ、本格的に製品を販売するまでにはいたっていません。

ー ご自身としての来日は何回目になりますか。
2013年のトレードミッションに参加した後、2016年にも2度目のトレードミッションメンバーに加わり、昨年も日本に来ていますので、今回の来日は4回目ということになります。

ー 日本市場での製品販売の可能性をどのようにみていますか。
日本市場には、大きな可能性を感じています。特に、このポータブル・リフティング器械という分野においては、日本は英国や欧州に比べて市場としては後発の状態にあると思います。アルミニウム製リフティング器械の製造・販売を通じて、ヨーロッパでは市場の開拓も進んできています。世界的にみると、米国市場が英国・欧州に続いていますけれども、アジア市場については、これから市場開発が進められる段階ということになるかと思います。ですから、逆に、こうした製品を供給する初めての企業として市場に参入することができれば、大きな可能性を切り開くことができると考えています。

リード・リフティングの製品紹介ページ

リード・リフティングの製品紹介ページ

ー 現在、日本では、どんな製品が使われているのでしょうか。
いわゆる伝統的な鉄鋼製のリフティング器械が使われています。アルミニウムのリフティング器械よりも重い製品ですが、ポータブル・リフティング器械は商品としてまだ供給されていませんから、当然、その市場はまだ存在していません。現状では、固定設置されて、同じ場所で恒久的に使用されるような製品が利用されている状況です。アルミニウム製の軽量で持ち運びが可能なリフティング器械があれば、様々な場所や色々な局面で柔軟に活用できるので、利便性は高まるはずです。

ー 英国や欧州には、競合企業も存在するのですか。
競合企業は存在していますけれども、リード・リフティングがこの市場におけるリーディング・カンパニーであると自負しています。弊社が成功を収めている状況をみて、新規参入を検討している企業もあるようですけれども、一般的に言っても、弊社が市場に供給しているような製品は、一朝一夕に製造を始められるものではありません。ここまで軽量化しながら強度を保った製品を開発・製造して販売することは、決して容易ではないと思います。使いたい場所に素早く簡単に設置して、柔軟かつ安全に使える製品を供給できるメーカーとしては、弊社が独占的な立場にあると言って良い状況です。

ー ポータブル・リフティング器械を製造する前には、どんな製品をつくられていたのですか。
このポータブル・リフティング器械の製造に特化して、小さな規模でスタートした会社ですから、それ以前の製品というものは存在しません。全く新しいコンセプトの製品を市場に供給することで需要を創り出して、会社としても成長してきたのです。長い歴史を持つ会社ではありませんけれども、斬新なアイデアに基づいて新規製品の開発・製造を行い、顧客の求める製品をより精度の高い水準で供給することにより、様々な分野において柔軟かつ安全に活用できる製品として評価されるようになってきています。

ー 御社の製品は、顧客からの受注に基づくカスタムメードが中心になっているのでしょうか。
製品としての基本型は用意されており、いわゆるスタンダード製品としてカタログ的に紹介されている商品が存在する一方で、おっしゃるように製品を発注する顧客のニーズに合わせて基本型の製品をカスタマイズしながら生産する商品もあります。そうしたカスタマイズ製品は、当然、弊社が供給しているスタンダード製品とは異なるもので、同じコンポーネントを使いながらも、顧客の利用環境や製品の使用状況、ユーザーの利用目的や使用方法に合わせて、それぞれのニーズに応じた受注特化型商品と言えるものになっていると思います。

ー 受注型特化商品の場合は、単に製品を納入するというよりも、顧客のニーズに対してソリューションを提供するというようなニュアンスが強いのでしょうか。
そうです。我々の製品の生産工程に発注したユーザーも関わりながら、商品が製造されるというケースは珍しくありません。顧客にとってのベストソリューションを見極めながら、製品がつくられていくわけです。もちろん、スタンダード製品の中に、顧客の目的や必要に合致するものがあり、十分なソリューションを提供できる場合は、そちらをご案内します。

ー 日本市場での今後の展開について、見通しをお聞かせください。
現在、弊社製品の流通を担当する販売代理店との契約に向けて準備を進めており、年内には日本市場での本格的なマーケティング活動を開始できればと思っています。鉄鋼と同様の強度がありながら、重量は3分の1に過ぎないというアルミニウム素材の特性を生かして、日本での潜在顧客の皆さんにクォリティの高い製品を提供させていただき、その普及促進を通じてワーキングメソッドの革新にも貢献できればと考えています。

“BLOODHOUND”プロジェクトの紹介ページ

“BLOODHOUND”プロジェクトの紹介ページ

ー 地上を走行する乗り物として世界最速記録を目指す“BLOODHOUND”というプロジェクトにも関わっているとお聞きしています。
このプロジェクトは、世界最速記録を達成するだけでなく、音速をはるかに上回る時速1000キロを超えるような乗り物の開発を目指しているのですが、試験走行を繰り返している乗り物本体を持ち上げるために、弊社のリフティング器械を購入していただきました。プロジェクトを通じて、若年世代や学校の子ども達にもエンジニアリングへの関心を持ってもらい、技術水準を向上させていくためにも優秀なエンジニアリング人口を増やすことも狙っていて、その趣旨には大いに賛同しています。

ー ご家族やご趣味についても、教えていただけますか。
家族は、ニューヨークで出会ったプロのオペラ歌手の妻と、息子と娘の2人の子どもがいます。息子は今回一緒に来日したティム(Tim)で、リード・リフティングのテクニカル・セールス・エンジニアを務めており、娘は現在、ロンドンで仕事をしています。趣味としては、以前、マラソンを走れるくらいにジョギングを楽しんでいたこともありましたが、現在は、サイクリングとフットボールです。ラグビーも好きですが、もっぱら観戦するのみです。

ー どうも、ありがとうございました。


“「家族旅行のデスティネーション」としても、魅力的なウェールズ”


お子さんが1歳の頃から毎年、ご家族で英国に出かけているというフリー・ジャーナリストの松島まり乃さん。昨年の夏休みには、ウェールズへの家族旅行でアングルシー、スノードニア、クンブラン、カーディフなどを訪れました。ケルト文化にも詳しい松島さんに、家族旅行を通じて体感したウェールズの魅力などについてお聞かせいただきました。

フリージャーナリストの松島まり乃さん

フリージャーナリストの松島まり乃さん

ー 家族旅行先としてウェールズを選ばれた理由を教えていただけますか。
子どもが一歳の頃から、家族で毎年、英国へ出かけています。赤ちゃんの頃は、移動が続くと負担が大きいため、コッツウォルズの民家を借りて、滞在型の旅をしていましたが、ちょっと大きくなってからは、ケンブリッジやロンドンのサマースクールに参加させていただき、プチ留学のようなことも楽しんでいます。子供が小学校1年生になった昨年は、そろそろ観光も入れてもいいかなと考え、ロンドンからもそれほど遠くないウェールズに行くことにしました。私自身はもともとアイルランドを中心に、ケルト文化に傾倒してきたこともあり、ケルト文化圏の一つとしてのウェールズに、そろそろ再訪したいなという思いもあったのです。

ー ご家族で毎年、英国へ出かけていらっしゃるということですが、英国へは特別な思いをお持ちなのでしょうか?
もともと、出版社で女性ファッション誌の編集者をしていたのですが、私は英国の担当で、毎年2回ほど英国に出張し、現地とのつながりも出来てきて、いつしか“イギリス&アイルランド大好き人間”になっていました(笑)。結婚後、主人を英国に連れて行きましたら彼も「ドライブも楽しめるし、イギリス、いいね」ということで、英国への旅が夏のお約束となった次第です。

ー ご専門がアイルランドということですが……。
ダブリン出身のロックバンド、U2がきっかけで、アイルランド音楽に興味を持ちました。その後クラナドという、エンヤのファミリーがやっているバンドの言葉の響きに惹かれ、現地にアイルランド語を学びにいったり、取材を重ね、音楽と口承文学をテーマに、著書を2冊書いています(『アイルランド旅と音楽』『アイルランド民話紀行』)。同じケルト文化圏ということで、雑誌編集者時代からウェールズやスコットランド等にも、取材に何度か訪れていますね。

ー 昨年の家族旅行が、お子さんにとってはウェールズに足を踏み入れた初めての経験だったのですか。

標識や看板はウェールズ語と英語が併記されています

標識や看板はウェールズ語と英語が
併記されています

はい。本人は英国に行くと思っていたので、イングランドからウェールズに入った途端、道路標識や観光地のプレートがウェールズ語と英語の2か国語表記で、英語でないものが出てきたことにびっくりしていました。ご存知の通り、ウェールズ語では英語風に読もうとすると読めない綴りの言葉も多いですよね。英語のフォニックスを勉強してきた娘にとっては、それが通用しない言語があるということが驚きだったようですが、お店でウェールズ語を喋っている人と出くわしたり、BBCの幼児向けチャンネル、CBeebies(シービービーズ)をつけるとウェールズ語レッスンが登場したりという中で、いつしかウェールズ語と英語が共存している状態にも慣れていったようです。

ー ウェールズへの旅行でお子さんが最も感動された場面を教えてください。

日本とは全く趣の異なる、雄大な景色も気に入ったようですが、スポットとして一番印象に残ったのは、“Big Pit”と呼ばれるナショナル・コール・ミュージアムだそうです。テーマパークのように、乗り物が急降下したりといった仕掛けは何もないのですが、昔の炭鉱を元炭鉱夫の方が案内してくれる見学ツアーがあるんですね。坑道に入るときには、引火爆発を防ぐために、スマホや腕時計、カメラなど電池系のものはすべて預けさせられるのですが、“本物”の迫力と、ガイドの方の実体験に基づいた話が、子供心にも響いたようです。

「本物」の迫力に子どもも圧倒される“Big Pit”

「本物」の迫力に子どもも圧倒される“Big Pit”

ー 家族旅行ならではのお楽しみもあったのでしょうか。

コンウィ城では、子供が訪れると、カードと色鉛筆一本が渡され、スタンプラリーのような感じで、城のあちこちに掲示されているボードを見ながら、設問を説いていくクイズラリーのような仕掛けがあるんです。何年にどんな出来事があったかを物語形式で解明してゆくもので、答えるためには、場内をくまなく歩かなければなりません。小さい子供だけだとボードの説明を読むのに時間がかかるので、自然と親も巻き込まれていくのですが、一家で場内をあちこち探検するのは、とても楽しいものでした。低予算で実現できるので、日本の観光名所にも導入されてもいいのでは?と思うほどです。子連れだからこそ楽しめる仕掛けは素晴らしいと感じましたね。

クイズラリー板を見ながら、正解を求めてコンウィ城内を歩き回ります

クイズラリー板を見ながら、正解を求めてコンウィ城内を歩き回ります

ー ウェールズは家族旅行に向いていると感じましたか?
はい。ウェールズはどこもスケールが大きく、カーディフのような都会でも、人口密度が少ないんですね。通りを歩いていても、昼間であれば日本のようなのんびりとした空気に包まれていて、子連れ旅行には適していると感じました。乳製品や伝統菓子にも美味しいものがあり、道々、目についたものを買っては宿でいただいたりもしていましたね。

ー お子さんにとって、ウェールズへの家族旅行はどんな意味があったとお考えになりますか?
日本に生まれ育つと、なかなか多様性ということが体感しづらいのですが、英国では、様々な“固有の文化”があり、それが誇りをもって受け継がれているということを、ウェールズへの旅を通して体感できたのではないかと思います。今はまだ頭では理解できなくても、その体験が記憶のどこかに残っていて、今後、ものを考えるうえでの参考になっていけば。行動範囲も広がってきましたので、今後も夏には一家であちこちに旅をするかと思いますが、様々な経験の中で、“あの時、みんなで行ったウェールズは楽しかった”という記憶が子供の中に残ってくれるといいなと思っています。

ー どうも、ありがとうございました。

|NEWS|
カタール航空が「旅のプロ」による視察ツアー実施
カーディフ線開設でウェールズへの旅行商品造成に期待

カタール航空は7月4日から7日までの4日間にわたり、「主要旅行会社『旅作りのプロ』によるウェールズ視察ツアー」を実施しました。
今回の視察ツアーは、同航空が今年5月からドーハ経由の東京(羽田・成田)/カーディフ間での運航を開始したことを受けたもので、旅行会社8社の担当者が参加。6月初旬に実施された日本旅行業協会(JATA)の視察ツアーに続いて、旅行業界によるウェールズ視察が行われる形となりました。
現地での滞在は3日半という短い期間でしたが、カーディフ国立博物館、カーディフ城、コンウィ城、ボドナントガーデン、ビクトリア時代に開かれた森と渓流のパワースポット「ベトウィス・ア・コイド(Betws-Y-Coed)、ウェールズハイランド鉄道のレトロな蒸気機関車、カナーヴォン城、ビッグ・ピット(世界遺産の炭鉱跡)など、南から北までの人気スポットを盛り込んだ特別プログラムで実施されています。
参加した旅行会社の担当者からは、「風景が変化に富んでいるので、南から北へのバスでの移動も飽きることなく楽しめた」「まったく予想していなかったが、とにかくどこで食べても食事が美味しく、新鮮で濃厚な味が多いのに驚いた」「事前知識がなかったものの、思いがけず見どころが豊富にあることを知り、もっと訪れてみたくなった」といった感想が寄せられています。
ツアー造成のプロによって示された感動や驚きがどのようなツアーとして商品化され、より多くの日本人旅行者をウェールズに誘うことになるのか、大いに期待されるところです。


ウェールズの知られざる人気スポット
英国初の昆虫レストランでの食事はいかが?

  2015年に西ウェールズのペンブロークシャーにあるセント・デイヴィズにオープンした「昆虫農場(Bug Farm)」は、ファミリーやグループの旅行者に人気の高い観光スポットです。
ペンブロークシャーの素晴らしいカントリーサイドで100エーカーという広大な敷地を持つ「昆虫農場」には、熱帯昆虫園や昆虫博物館といった施設もあり、昆虫に関する様々な知識と情報を得ることもできます。また、夏季シーズンには、敷地内でガイド付き昆虫採集ツアーも実施されており、昆虫好きにはたまらないスポットと言えそうです。
そして、何よりも、この「昆虫農場」を特徴づけているのが昆虫レストランの“Grub Kitchen”で、こおろぎのクッキーをはじめ、こおろぎのコロッケや昆虫バーガー、かりかり昆虫のグラノーラ、こおろぎのクレープなどのメニューが揃っているほか、初心者向けには「昆虫の試食プレート」なども工夫されています。
  もちろん「昆虫は苦手」という人には、普通の食事もメニューとして用意されていますから、一般のレストランと同じように空腹を満たすこともできます。
タンパク質をはじめ栄養素も豊富と言われる昆虫食は、世界的にも広がりをみせていると言われており、ウェールズの“英国初”と言われる昆虫レストランで、昆虫食にトライしてみてはいかがでしょうか。

編集後記

社員数は50人にも満たない規模ながら、従来の鉄鋼製ではなくアルミ製のポータブル・リフティング器械を考案し、顧客ニーズに応じて柔軟かつ斬新な製品を提供することで高い評価を得ているウェールズの中小企業。そのイノベーションパワーが日本市場を席捲する日も遠くないかもしれません。

次号は8月11日に発行予定です。お楽しみに!

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