「不思議の国ウェールズ」が秘めるアートのパワーに感嘆!!|Wales Now Vol.39

発行日:2018. 5. 1

ウェールズのリアルタイムな情報を隔週でお届けします。


“アーティストへの道を開いてくれたカーディフのギャラリー”


julia at the entrance

自宅兼アトリエのエントランスに立つジュリアさん

カーディフにアトリエを持つ、コンテンポラリー・アーティストのジュリア・ブルッカー(Julia Brooker)さん。数多くの世界的な有名企業をクライアントとして持ち、アルミニウム板に描かれた作品は、エクゼクティブ達を魅了して止みません。日本での展開も目指すジュリアさんに、創作活動への熱い思いを語っていただきました。

ー 自己紹介をお願いできますか。
出身はイングランド、サリー(Surrey)のレッドヒル(Redhill)です。母は絵画が大好きで、画家になるのが夢でした。父はフォトグラファーで、航空写真を専門に撮っていました。私が子どもの時、空を飛ぶ航空機を見上げては、父が乗っているものと思ったものです。スタッフォードシャー(Staffordshire)にあるキール(Keele)大学で、社会学(Social Study)を専攻し、在学中はソーシャルワーカーとしてトレーニングを積みました。でも、母と同様にアートの世界への憧れもあったので、イギリスの公立大学に入学するための統一試験であるAレベルに備えて、アートも履修していたのです。実は、美術大学を目指したかったのですが、父の反対もあってその夢は諦めました。

ー 大学でアートは専攻されなかったのですね。
大学卒業後は、ソーシャルワーカーとして働き始め、1980年頃にカーディフへ移住、カーディフ・コミュニティ・ハウジング(Cardiff Community Housing)に就職しました。政府からの補助金で、低所得者向け住宅の建設・マネージメント業務に従事、200戸ほどのプロジェクトを担当したこともありました。新築案件だけでなく、古い建物の改修工事などを通じて、建築業界の方々とも仕事をする機会に恵まれ、とても良い経験だったと思います。

Julia_1

アトリエで作品を制作中のジュリアさん

ー アートの世界に入るきっかけは、どういったことだったのでしょうか。
ある事がきっかけで、突然、アートの世界への道が開けたのです。18歳になった息子の大学入学に感化されて、私ももう一度大学に入ってアートを勉強したいと思うようになりました。1995年から1997年までカーディフのアートスクール(現在のカーディフ・メトロポリタン大学)に通ってアートの基礎コースを修了し、1997年から2000年までチェルトナム(Cheltenham)にあるグロスター大学のアートカレッジで3年間、美術と絵画を専攻しています。成績も全ての科目で「優」の評価をもらい、卒業できました。

ー アートカレッジを卒業してからは、どうされたのですか。
まだ、アーティストとして食べていけるようなレベルでは到底なかったので、カーディフに戻って、以前も働いていたコミュニティ・ハウジングに再就職しました。無理を言って、週3日のパートタイムで働かせてもらい、残りの4日は自らのアーティスト活動に費やしました。2001年にカーディフ市内のビュート・ストリート(Bute Street)にあったカーディフベイ・アートトラスト(Cardiff Bay Art Trust)が所有するギャラリーで、人生初の個展を開かせていただきました。ギャラリーが閉まっていたある夜、ロンドンの「カーウェン・ギャラリー(Curwen Gallery)」のオーナーだったジル・ハッチング(Jill Hutchings)さんが、カーディフ近郊に住んでいるご自身の姉妹を訪ねたついでにギャラリーに立ち寄って私の作品に目が留まり、ご連絡を頂いたのです。これを契機に、ロンドン市内にある彼女のギャラリーで個展を3回開きました。あいにく、カーウェン・ギャラリーは半世紀の歴史に幕を閉じ、昨年閉鎖されましたけども、ジルさんとの出会いは、私にとっては大変にラッキーでした。カーウェン・ギャラリーでは、多くの法人クライアントに私の作品を購入していただきました。グラクソ・スミス・クライン、ジョンソン&ジョンソンのロンドンオフィスには、私の作品を飾ってもらっています。

アトリエに並べられたジュリアさんの作品

ー アーティストとして成功されたわけですね。
アーティストとして食べて行くには、もっと事業を拡大する必要があると感じ、ウェールズ政府に輸出促進のサポートをいただいて、2004年当時、建設ラッシュの真っ只中にあったドバイとアブダビへのウェールズ政府による経済ミッションに参加し、その1年後に1万5000ポンドという大型の受注をもらいました。その後、香港や中国にも行き、昨年は上海も訪れています。ドバイとアブダビでの受注は、私にとって大きな転機となりました。自信も生まれましたし、アーティスト活動だけで生計を立てられると感じることができたからです。一度はアーティストになる事に反対した父も今年で92歳になり、今では、私のことをとても誇りに思い、100%の応援をしてくれています。父は写真家でありながら、ビジネスマンでもあったので、様々なアドバイスを与えてくれる大切な存在です。

julia and john

ジュリアさん(左)とパートナーのジョンさん

ー 作品はどのようなところに納められたのでしょうか。
さきほどもお伝えした、グラクソ・スミス・クライン、ジョンソン&ジョンソンのロンドンオフィスをはじめ、ロンドンの高級デパートであるハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)のカクテルバー、香港のバークレー銀行、大型クルーズ客船の船内などのほか、日本では、ストリングスホテル東京インターコンチネンタルやホテルブライトンシティ大阪北浜などにも作品を納めています。

ー ジュリアさんにとって、ウェールズとはどういうところですか。
カーディフに住んでもう随分と長くなりますが、ウェールズの人たちはフレンドリーでおしゃべり好き、そして、とても温厚ですね。町を歩いていれば、「どこから来たの」とか、「ウェールズに知り合いはいないの」とか、とても気さくに話しかけてくれます。カーディフでの生活の質は、とても高いと思います。オペラハウス、映画館、ショッピングセンター、レストランなど全てが揃っていますし、金曜日に仕事が終わった後は、30分程ドライブすれば、ビーチに行くこともできます。

ー 趣味は、どんなことを楽しまれていますか。
縫物と物作りですね。絵を描いていない時は、一週間ほどアートコースに入って、作品作りに取り組みます。ガラス工芸にはとても興味があって、ステンドグラスは大好きです。

ー これからの目標をお聞かせください。
日本でのビジネスを展開していきたいと思っています。新しい試みとして、ガラスパネルの作品にもトライしているところです。最終的にかなり大きな作品にして、壁にかけたり、スタンド式にしたり、多くの作品を配置した間を人が歩けるような仕掛けも考えていて、空港などで採用してもらえないかと模索しています。

ー 日本での展開も楽しみにしています。ありがとうございました。


“懐かしく思い出される「ウェールズ人のユーモア」”


IT専門の就職コンサルタントとして、日本の企業で働くフィリップ・プシュニク(Filip Pusnik)さん。ウェールズ人の母とスロベニア人の父の間に生まれ、幼少時代をウェールズで過ごしています。海外在住歴が長いものの、ウェールズ語を完璧に話し、自らを「ウェールズ人」と断言するフィリップさんに、ウェールズの思い出や人々についてうかがいました。

ー 日本に住むことになったきっかけは。
韓国で仕事をしていた時、ビザの更新で福岡に行ったのが2011年。ビザの発給を受けるためには、一度国外に出なくてはなりません。福岡は1日で往復でき、韓国から最も近い場所でした。その時が初めての来日です。その後、日本で仕事を見つけたのが2013年で、それ以来ずっと日本で暮らしています。

ー 外国生活が長いとうかがいましたが、故郷を恋しいと思うことはありますか。
特に、ないですね。僕はふだんから土地のものを食べることにしていて、どこへ行ってもそうしているので、あまり食べ物も恋しいと思わないし…。強いて言えば、夏かな。僕の故郷はマネソ(Mynytho)というとても小さな海辺の町で、きれいなビーチがいくつもあります。山の方はミストや雨も降りますが、とても天気が良い時には、自然に囲まれてビーチでのんびり過ごすことができます。いつまでも外で静かに過ごしたり…。そんな風に夏を過ごしたいと思いますね。

フィリップさんの故郷、マネソ(Mynytho)近くの海岸

ー 夏になると、懐かしい気持ちが湧いてくるんですね。
そうそう、懐かしく思うものといえば、ウェールズ人のユーモア。ジョークって、国によってまったく違うものだと思うのですが、ウェールズ人にもやはり独特のジョークがあるんですよ。ほとんどの場合、内容はネガティブです。お互いをおもしろおかしくからかい合うというか…、それがウェールズ流ではないかと思います。日本の友人にははっきりとは通じていないかもしれませんが、大切なのは笑顔で楽しくしていることですからね。なんとなくジョークだって分かってもらえているのではないでしょうか。

St David’s Society(ウェールズ人会)で
Social Directorを務めるフィリップさん。
イベントのコーディネートをしています

ー ウェールズに帰りたいと思うことは。
実家は10年ほど前に、父の故郷であるスロベニアに移ってしまったので、「帰る」という感じではないんです。でも、また直ぐにでも戻りたいと思うのは、もちろん、ウェールズです。強く望郷の念を感じたのは、2016年のサッカー欧州選手権(ユーロ)で、ウェールズが準決勝に進出した時ですね。ウェールズはすごく小さな国で、それぞれのコミュニティでは地域の人たち同士がすごく近しい存在です。たとえば、僕は海外旅行も沢山しましたが、外国でウェールズ人に会ったら、誰もが僕をまるで長く会っていなかった旧友のように扱ってくれます。そのくらい互いの結びつきが強く、ユーロの時はウェールズ人の愛国心がぐっと高まって結束しました。「自分はウェールズ人なんだ」と、強く感じた時でしたね。

ー ウェールズ人の特徴は、どういったことでしょうか。
基本的には謙虚でオープンマインドな人が多いとは思いますが、とにかく、町によって全然タイプが違うんですよ。以前、北部の町のあるフェスティバルに日本人の若い旅行者が来ているのを見たのですが、彼らはものすごく歓待されていましたね。ヨーロッパ人は見慣れているけれど、日本人は珍しかったのでしょう。興味深く日本のことを聞いたり、一緒にお酒を飲んだりして、大歓迎していました。地域性もあると思いますけれど、僕の出身地のような小さな町などでは、外国人をいぶかしがる人もいるかもしれません。でも、ちょっとでも英語で会話ができたら、「おお!外国人が英語をしゃべった!!」みたいな感じで、驚きとともに受け入れてくれますよ(笑)。

ー 今後はずっと日本でお住まいになるのですか。
分かりません。僕の父は船でシェフの仕事をしていたので、世界中を周った経験がありました。小さい頃から父の話を聞いてきましたし、僕も妹も海外旅行が大好きで、大学も海外で卒業しています。引っ越しの多い家庭でしたから、転々とするのは普通だったし、色々な文化に興味もありますし…。ずっと先のことは、分からないんです。でも、日本は大好きですよ。日本の会社で働いていますから、日本語も日々頑張っています。

ー ありがとうございました。

|NEWS|

◎ウェールズ女性ガラス作家2名来日
東京・猿楽町ヒルサイドテラスで5月12日から20日まで 女流ガラス作家展出展へ

‘Primary’ - Chris Bird-Jones

5月12日(土)ら20日(日)までの9日間にわたり、東京・猿楽町でガラス作品の展覧会“Light Matters / Women's 13th International Glass Workshop”が開催されます。
今年で13回目を迎えるワークショップは、30年ほど前にヨーロッパ各地を巡回した「12カ国36人のステンドグラス女流作家展」を契機に発足した女性ガラス作家のグループであるWomen's International Glass Workshopが主催するものです。展覧会と併行して、メンバーが集まって作業を行い、互いに語り合って刺激しあうことも目的としており、トークイベントなども行われます。作品展示を通じガラス表現の可能性を感じてみてはいかがでしょうか。
今回の展覧会には、英国・米国・アイスランド・カナダ・フランス・オーストリア・オーストラリア・ドイツ・ニュージーランド・日本の10カ国から13人が参加する予定です。ウェールズからは、クリス・バード・ジョーンズ(Chris Bird-Jones)、アンバー・ヒスコット(Amber Hiscott)が来日しますので、皆様のご来場お待ちしております。

〈開催概要〉
Light Matters

日時:5月12日(土)~20日(日) 11:00~19:00(最終日は18:00まで)入場無料
会場:ヒルサイドテラス エキシビジョンルーム
東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟1階 03-3477-7030 ※会期中のみ

主催:Women’s International Glass Workshop
協力:ヒルサイドテラス・駒沢女子大学 人間総合学群 住空間デザイン学類 橘田 洋子研究室・
日本化工機材株式会社・wales arts international・Arts Council of Wales・Welsh Government
問い合わせ先:アトリエ苫人/中野照子 TEL:03-3469-0845 tomato@mercury.plala.or.jp


◎「不思議の国ウェールズ」の魅力をアピール
羽田空港国際線ターミナルで海外旅行イベント

ウェールズ政府は、羽田空港国際線ターミナルで3月30日から4月1日までの3日間にわたって開催された「もっと!海外へ 2018 ~羽田から世界へ~」に出展しました。
同ターミナルで初めて開催されたアウトバウンドのイベントは、同空港を利用して海外へ出かける人たちをもっと増やすために、来場者に世界の文化と魅力を体感してもらおうと開かれたものです。
イベントには23カ国・地域から39の航空会社や政府機関が出展し、セミナーやステージイベントなども行われました。
ウェールズ政府は3月30日の午前と午後の2回、同ターミナルの江戸舞台とTIAT SKY HALLで「不思議の国ウェールズ」をテーマにプレゼンテーションを行い、ウェールズの魅力をアピールしました。

編集後記

カーディフのギャラリーから世界への道が開けたウェールズのコンテンポラリー・アート。日本での展開も期待されるところです。

次号は5月15日に発行予定です。お楽しみに!

バックナンバー一覧

ページ上部へ戻る